コメディ・ライト小説(新)

Re: 青春という“愛”を知らない人形少女 【コメント募集】 ( No.11 )
日時: 2020/06/05 16:32
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

07. 会話

私は保冷剤と包んだハンカチを持って学校に行った。
(……ハンカチはちゃんと、洗濯もしたし保冷剤もビニール袋に一緒に入れてるし大丈夫)
「香純、今日なんか良いことあるの?」
突然、聞かれ私は目を丸くする。
「え?ど、どうしてそう思うの?」
逆に聞いてきた私に対し、晴陽は首を傾げ苦笑する。

「――――なんか嬉しそうに見えたから、何かが楽しみなんだなぁって思って」

(そうだったのか……唐沢さんに返すのが自分ではわかってないだけであって楽しみにしてたんだ)
まだ、自分の事を理解しきれていないことが知れて嬉しく思う。
(…………嬉しい………か…)
ふわり、と頬に当たった風はとても暖かく感じた。



教室に入るとあの印象深い天使のような髪色の人を探す。
(私の事を知っているから同じクラスだよね……)
すると、声を掛けられる。
「――――もしかしてあたしの事、探してる?」
その聞き覚えのあるハスキーな声に振り向く。
天使のような綺麗な白に近い薄い金色。
れもん色。
いつ見ても見惚れてしまう。
骨格はしっかりして背も高くて、光が当たらなくても茶色に見える色素の薄い瞳。
「……で、なんか用?」
見惚れていた私に呆れたように口を開く。
私は急いで鞄からビニール袋に入れた保冷剤とハンカチを取り出す。
「あ、ありがとうございました」
「別に。貸したのは保健委員だったからだし」
ツンとした言葉を掛けられてもそれが彼女なりの“優しさ”なのではないか、と思ってしまう。
(……優しさって温かいな)
ほわっ、と温かくなった気がする胸辺りを軽く掴んだ。



「………で?何で唐沢さんがいるの?」
晴陽は苦い物を食べたかのように顔をしかめる。
一方の唐沢さんは「あ”?」と低い声を出し、晴陽を鋭い光の宿った瞳で睨み付ける。
「関係ねぇだろ、藤岡が他んとこで弁当を食えばいい話だろ」
「何で俺が動かなければならないんだよ!!」
言い合いを始める二人に私が割って入る。
何故か馬が合わないみたいで、二人はいがみ合ってしまう。
(仲良くしてほしいな……)
「喧嘩はやめて、二人共優しいし好きだから喧嘩されると苦しい……」
私はそう言うと二人の制服を掴む。
晴陽は仕方のなさそうに溜め息を吐き、お弁当を黙々と食べながら私達を静かに見つめていた。
「っ…分かったから………そんな顔すんな……それに、あたしの事をさ、優利って呼んで」
私はその言葉の意味が解らずに首を傾げていると、唐沢さんはそっぽを向いて口を開く。

「あんたがそんなに他人行儀だと仲良くなれないじゃん……!」

私は手を握り、慣れない呼び方をする。
誰かを呼び捨てにするなんて晴陽意外にしたことがない。
「これからよろしくね、優利……ちゃん」
何だか、くすぐったく感じる。
「ちゃん。いらないんだけど……香純」
そう言いながらもあどけない微笑みを浮かべる。
登校二日目、人生初の女の子の友達と呼べる人が出来た。