コメディ・ライト小説(新)

Re: 青春という“愛”を知らない人形少女 【コメント募集】 ( No.16 )
日時: 2020/06/08 17:23
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

12. 小田切家

 小田切家と七々扇家は私が産まれる前から親交があった。
だから。
七々扇家の長男とは面識がある。
一度だけ、会ったことがある。
私は白々しく輝く月を目の前に、深い溜め息を吐く。
冷たい夜風が頬に当たり、唇が震える。
「………今頃、どうしてるかな」
ベランダに出て瞼を閉じる。
瞼の裏にはいつだって、微笑んで手を差し伸べてくれる晴陽と優利ちゃんがいた。
帰りたい。
皆のいる場所へ。
帰りたい、恭吾さんと過ごしたあの家に――――――。
持ってきていたスマホを開く。
そこには心配のメッセージが何件も入っていた。
心が強く掴まれる気がする。
「――――っ帰りたいよ、晴陽」

“香純。今、どこにいる?”

“言ってくれれば迎えに行く、どこまでも”

私は静かに涙を流し、晴陽の送ってきてくれた温かいメッセージを小刻みに震える指先でなぞった。
七々扇家と小田切家の縁は切っても切れない鋼の糸で繋がっている。
先々代、つまりひいお爺様の代から親交があるのだ。
「普通の女の子なら、、な」