コメディ・ライト小説(新)

Re: 青春という“愛”を知らない人形少女 【コメント募集】 ( No.5 )
日時: 2020/05/30 16:00
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12710

02. 小田切 香純

感情を持たない一人の少女がいた。
少女は母親を幼い頃に亡くし、父とは離れて暮らしていた。
その為、愛されることを、いや、愛することを知らないまま生きていた。

“心からお前の事を愛してる、例え本当の娘じゃなくても僕はお前の事を娘だと思ってる。僕に沢山の愛を教えてくれてありがとう、香純。”

(恭吾さん……愛してる―――……とは何なのですか?)
遺品を整理し、私は身に着けていた眼鏡を触る。
私に残されたものは、恭吾さんの形見である眼鏡と亡くなる直前の記憶。
それと、、、最期に告げられた言葉だけだった。
「……理解が出来ません、恭吾さん。愛してるとは何なのですか」
独りきりの部屋の中で呟いた言葉がただ、無情に響き渡る。


「――すみ、香純」
ドアの前で私を呼ぶ声が聞こえた。
私は顔を上げ、恐る恐る近寄った。

「俺の事、覚えているか?」

そうドア越しに問い掛けられる。
(……覚えてる藤岡晴陽―――……私の幼馴染)
小さく頷くと、私はドアを開ける。
 ガチャ…。
重々しく開くと彼の戸惑った顔が見えた。
走ってきたのだろう。
彼の小麦色の首には汗が一筋伝っていた。
「、、久しぶり、香純」
と言うと、封筒を渡してくる。
「―――……久しぶり、晴陽。この封筒は?」
すると、晴陽は簡単に説明をしてくれる。
「今まで学校に来てなかったから溜まってたプリントとかそういうの纏めて持ってきたから」
「そう」
私は用事が済んだと思いドアを閉めようとすると、
 ガシ……っ。
力強くドアを掴む。
「まだ、話は終わってないから」
と睨まれ大人しく私は動きを止めた。
「……あのさ、本当にお前、、学校に来ないのかよ?」
そう問いかけられて私はそっぽを向いた彼を見据える。

「じゃあ、行く必要のない学校にどうして晴陽は通っているの?」

その質問に晴陽は目を見開き、息を呑む。
「質問に答えられないとしたら行く必要のないのね」
すると、悔しそうにギュッと大きな拳を握りしめ下を向いた。
「…香純」
名前を呼ばれ、私は振り返った。
「その質問に答えられない。だけど、お前にない感情を、考えを学ぶ為の場所だと俺は思う…」
真っ直ぐにそう言い切られる。

ないものを知る場所?学ぶ場所……学校が??

沸々と疑問が湧いてくる。
知らない感情が生まれてくる。
(こんな気持ちこんな苦しみ……これは何?)
「……じゃあ、、、学校に行けばっ!?」


―――“愛してる”も知れるの?―――



「愛してる……愛を知れるのっ!?」
私は微かに震えた唇を噛み締め、叫ぶ。
頬から生暖かい物が伝ってくる……これは涙?
(初めての涙、笑顔…笑っているはずなのに悲しい、心の中がすっぽり穴が開いたよう)
口元が上がる。
(ねぇ―――……恭吾さん。これは寂しいという感情ですか?)