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コメディ・ライト小説(新)
- Re: 月華のリンウ ( No.20 )
- 日時: 2020/10/28 17:00
- 名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)
18.気持ち
「………はああぁああ………どうすれば、いいか………」
盛大なる溜息を吐いた暘谷は長い廊下を歩き、空を見上げる。
「すれ違い……、だよな………」
暘谷が気になるのは鈴舞があの日からよそよそしいかったことだった。
あの時は殆ど意識が無い状態だった為、自分が何をしたか、実を言うとあまり覚えていない。虫食い状態なのだ。
「……なんか……アイツに不味いこと言っちゃったか……?」
頭を抱えても思い出せない。
鈴舞と居て気付いた事と言えば鈴舞を見る月狼の眼が変わった事。そして、月狼に明らかに鈴舞は見惚れていた。
「………従者に嫉妬してどうすんだか………ったく醜いかよ」
鈴舞に出会ってから知らない感情、表情が生まれたと同時に自分の醜さ、執着心と意地汚い独占心に気が付いた。
(………どんどん自分が嫌になる……)
やっと、鈴舞に会えたと思ったら今度は月狼。
一難去ってまた一難、二度あることは三度あるって言うしな。
そう解釈すると自分に言い聞かせるように暘谷は頷いた。
「………残った山のような書類、片づけるかぁ……」
背伸びをして深呼吸をする。
こうやって、暘谷は無意識のうちに自分の気持ちを誤魔化し続けていた。
解っていても、口にしないように、心がけていた。
「……きっと……時が、解決してくれるよな…………?」
さっき触れて時間が経っているのにもまだ、鈴舞の温もりの残った手を握り締め口元に当てた。
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