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コメディ・ライト小説(新)
- Re: ___今、染まってしまえば、本当に成れそうで。 ( No.3 )
- 日時: 2020/05/05 16:36
- 名前: 真朱 (ID: 6..SoyUU)
#2 「穢れなき昔」
高校入学まで、1週間。
言い換えれば、春休みも終わりに近付く頃。場所は私の部屋の中。私は紅新の事と共に、家族の事を重苦しく抱えていた。
私の本当の両親にあった記憶は、全く無い。
ただ、両親が亡くなった事しか分からない。もちろん、アルバムなどなくどんな顔をしているのかも分からない。ただそれだけ、の事である。
「紅雨。」
振り向いた。
いや、驚いた。紅新がいた。
何故か彼女はビニール袋を手に提げており、その中心にはよくある青いコンビニマークが描かれていた。中には何か入っているらしく、小さい風でガサガサと音を立てていた。
「アイス買ってきたんだけど。食べる?」
「あ。うん。」
彼女はこの前の事を忘れたように明るい顔で袋の中をいじくっていていた。ヒンヤリとした空気が、頬を撫でて逃げていく。春の陽気によって火照った顔が、一気に冷やされていきそうだった。
「高校の制服どうやった?」
「ん…まぁ、いい感じだったな。リボンじゃなくてネクタイだった。」
「そっかぁ。でも、高校別れちゃうね…。」
残念ながら、私は稔川高校。紅新は向島高校というものに進学する。
兄弟や姉妹で志望校が異なるというのはよくある事だが、少しばかり寂しく思う。
…話が脱線しすぎた。
とりあえず私達はベットの上に腰掛けると、私達は2人並んでアイスの蓋を開けた。
抹茶味。
渋い味が、口の中に。香ばしい香りが、顔に渦巻く。そして美味しい。
「昔もこうやって、並んで食べたもんねぇ。」
紅新が安心でもしたような顔で、口を開いた。
その表情は少し悲しそうなものであり…また3人で集いたいという心が見える。
…確かに懐かしい。幼い頃、紅姉さんと紅新、私が並びながら食べた思い出が、ここにはあった。
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