コメディ・ライト小説(新)

Re: 蟲のさざめき ( No.5 )
日時: 2020/07/12 10:59
名前: 魁 天癒 (ID: XLYzVf2W)

episode4 恋は嫌い

…え?
「フフッ」
なんで?
「とりあえず、あと数日かはここで過ごすことになるから。お母さん、毎日来るから安心してね。…あ、もう1時?陽璃、ご飯食べに行こ!」
ご飯??
「餌って言ったほうがはやいかなっ。人間界ではご飯っていうんだよ。」

「陽璃は何が好きなのかなぁ…」
お母さんは僕を食堂っていうところに連れ込み、お昼にしようと言う。
「とりあえず、葉っぱ系がいいのかな?」
お母さんはお皿にサラダを盛り付けた。飲み物はりんごジュース。

「貝野さん、お久しぶりです!」
「え⁉お子さんですか!?まぁ!」
お母さんはママ友?の貝野さんって人と同じテーブルの席についた。
貝野さんの隣には、ベビーカーで寝ている赤ちゃんと、椅子に座る暗めの男の子がいた。
年齢は…僕より少し小さいくらい?
男の子はメロンソーダの入ったグラスを手で覆いながら、こちらをジッと見ていた。
視線は気になるけど、とりあえず僕はご飯を食べることにした。
サラダに顔を近づけたとき、
「あっ、陽璃!ご飯は、お箸やフォークで食べるの。こ、れ。」
『口で食べちゃだめなの?』
「うん。行儀が悪いって言われちゃうよ。とりあえず、陽璃は手で食べよっか。とりあえずね。」
『さっきから言ってる[とりあえず]って何?』
「え?そんなにとりあえずって言ってた?んまぁ…口癖ってとこかなー」
初めて会話の掛け合いができた。これも大きな進歩かもしれない。

「…ねぇ。」
あ、男の子だ。男の子は僕の入った隣の席に座った。
「名前は?俺、貝野かいの恋愛れあ。」。
れ、あ。あ、僕も言わなky…喋れないんだった。
「…早く言ってくんない?」
え、えぇ…っと
『お母さん!名前聞かれてるけど喋れないよ!』
「へ?あっ。恋愛君、この子ね、ちょっと喋れないんだ。」
「…へぇ。そうなんだ。」
「ごめんね。この子はね、陽璃っていうの。」
「よう、り、ねぇ。覚えた。」
「なぁ陽璃。俺の名前さぁ、どう思う?」
………
「あ、喋れねぇのか、ごめん。恋にさ、愛なんだよ。れんあいって書いてれあって読むんだけどさぁ、」
《ちょっとダサいんだよね》
恋愛くんは小声で僕にいった。
「俺恋とか興味ねぇしさ、れあって名前ちょっと嫌。」
嫌なら変えたらいいのに。
「陽璃!名前は、自分じゃなくて、親がつけるの。で、変えられないの。」
そうなの?お母さん、本当?
へー、かわいそうだなー嫌な名前つけられて。
「陽璃ってさぁ、何歳?」
「陽璃は、13歳。中学2年生。」
お母さんが答えてくれた。
「ふぅん。俺、今年から中学生なんだよ。でも俺と陽璃さぁ、あんま背変わらなくね?何cm?俺158。」
せって何?
「陽璃は…ね、まだちょっと分からないの、ごめんね。」
「あ、そう」
「ちょっと恋愛!弓削さんが大変でしょ。これくらいにしときなさい。すみませんねぇ、本当に…」
「あ、や、いえいえ、私は全然…」
こうしてよくわからないまま、昼過ぎの昼食は終わった。
りんごジュース美味しかったなぁ。

そこからは病室に戻って、テレビってものをずっと見てた。
歌ってる人、人を笑わせる人、文章を読む人…
いろんな人がいるんだなぁ…
人間って面白いなぁ。