コメディ・ライト小説(新)

Re: カオスヘッドな僕ら ( No.3 )
日時: 2020/07/18 08:15
名前: 夢兎 (ID: 9Yth0wr6)

「そういや、君の名前は何なん? 教えてくれへんと困るわ」

 クコは、肩にかけていた通学カバン(のようなもの)の中からタブレットのようなものを取り出して何やら操作する。

 そして彼女が突きつけて来たのは、氏名や死因などを書く欄が並んだ画面だ。
 一番上の『管理局からのお知らせ』欄には、ここに記入した個人情報は固く守られますとある。何か地味に人情味がある。

「ここに書けばいいの?」
「せや。あ、ちなみに地上におれるのはたった十分しかないから」

 たった十分!?
 その時間を過ぎるとどうなるんだ?
 ま、まさか自分の存在が消滅するとか?
 そ、それとも空から隕石が落ちてくるとか?

 どんなところかも分からない、ましてや存在を認識されていない天界の住人の言葉だ。
 きっと予想をはるかに超えるような、超自然的な何かが……。

「いや、どうもならへん」
「(ガクッ)あ、そ、そう……」

 自分が思ったより平和な内容に、氏名をタッチペンで書いていた僕は大きくずっこける。

 タブレットを受け取って、記入欄をチェックしながら彼女は
「でも、生活は不便になるわな」
と付け足した。

「どういうこと?」
「君、百木くんか。百木くんは誰にも見えんし触ってもらえん声もかけてもらえん、永遠にボッチや。ざまあ」

 ん? 今、一瞬イラッとする単語が聞こえたような気がしたが。
 怪訝な顔に敵意を籠めて天使を見ると、彼女は視線をそらし口笛を吹き始める。

「それに今は天界で『白札』『黒札』っちゅーもんが売れとる。万が一、悪霊に絡まれてみぃ。その分、天界は安心っちゅう訳や」
「白札って言うのは? ってか、何で天界なのに悪霊がいるの?」
「は? あんた、そんなことも知らんの」

 知るわけないだろ。お前と会ったの、つい十分前だぞ。
 ん? ちょ、ちょっと待って。
 この天使と会ったのが、十分前?
 と言うことはつまり……。

 僕が内心冷や汗ダラダラな状態に気付いたのか、クコは怖すぎるほどニコォ―――――っと笑みを浮かべ、

「さ、さ。うちはもうお役御免何で帰ろっと」
「アホォオォオォオォオォオォオオオ!!!!!」

 パトカーがサイレン音をけたたましく鳴り響かせながら、僕のすぐ横を通り過ぎて行った。