コメディ・ライト小説(新)
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.9 )
- 日時: 2020/09/15 16:48
- 名前: むう (ID: 9Yth0wr6)
「ふうん。それは……おモチくんも、災難だったね……」
どういう経歴で僕が幽霊となってしまったのか、そして何で変な天使と一緒にいるのか説明。
栗坂さんは、同情するように何度も僕の目を見つめ返してきた。
ふとした機会に知り合った、駅前の牡丹ヶ丘中学に通う中1女子の栗坂さん。
彼女は、札狩と呼ばれる悪用退治を仕事とする死神・紗明と知り合ったことで、彼と一緒の札狩に協力し、収入を得ているらしい。
「ちなみに、栗坂さん」
「八雲でいいよ。だっておモチくん、生前中3だったんだよね? 敬語つけんくてもよかよ」
ちなみにこの栗坂……じゃなくて…八雲…ちゃん……八雲さん……。
「八雲って呼んで!」
「ハッハイスミマセンッ!!」
コホン。八雲は何で札狩をやっているのか聞いてもいいかな。
一応僕も、クコからその、札狩って奴を勧められてるから、参考にしたいんだけど…。
やばい年下の、実際超キュートの子を呼び捨てにするとか……い、命が持たない……ッ!
さっきからずっと、顔に熱を感じて彼女の顔すら見えず、すっと下を見ている。
栗坂さんじゃかった、八雲の靴下は、ワンポイントがアディ〇スの黒いハイソックスだった。
「八雲はなんで札狩をやってるの? 紗明に協力してるって話だったけど、実際こいつと協力…」
「おいゴキブリ! なんで俺をそんな目で見る!」
「ハン、うざったらしいからに決まってるやろ。そんなことも分からんアンタは馬鹿や」
クコが腕組をし、勝ち誇ったように言う。やっぱり紗明との仲は余りよろしくないらしい。
そして紗明……今僕のことなんて言った?
ま、まさかとは思うけど君、僕という輝かしい存在をこの世の悪魔と同じにしたりしてないよね?
「ハンッ!? 俺ァさっきからずっとテメーのことは、こう言ってんぜ。ゴキちゃんってなァ」
「わざわざ『ちゃん』付けする必要があったらゴキブリ扱いするのやめようよ!?」
「だってテメー、さっきッからずぅぅーっと地味ィなオーラまとってんじゃねェかよ」
「うぐッ」
「それに、いつもは会話につるんでこねェ癖に、いざって言うときにだけウルセーッしよォ。
なんか急に邪魔してくるあたり、地上で有名のGと同類ッつーか」
………ずっと地味ィなオーラで悪かったな。
僕からするとキミたち死神や天使の個性が強すぎて、存在が薄くなってんだよ。
ほらほら、例えば顔面偏差値100のとこに40くらいの奴いてみ?
ぜったい場違いだと思うよね、多分それと同じなんだよ。
「なに言ってんの紗明。おモチくんは別にゴキブリでもなんでもない。そんなこと言ったらダメ」
「す、スイマセンッ!! はぁぁぁ……アルジ様怒った顔も超可愛っs」
「さぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁき………」
「ハイ、スミマセンッ。アルジ様は笑った方が絶対可愛っスよってあだだだだだだだだ!??」
八雲は広島出身らしく、ときどき方言が入る口調が特徴的だ。
あ、札狩を始めた理由は、「ぬいぐるみを妹にプレゼントするため」らしい。
なんていい子!
眉間にしわを寄せてムッと叫ぶ彼女に、ロリコン&ドMパリピの紗明っつー死神。
もう犬かと思うほど『なでてー! なでてー!』オーラを放っている。
「うひッ……紗明あんた、地上で変な性癖つけるとか、うちもうついていけへんのやけど」
「何言ってんだクコ。俺のこれは性癖っつー馬鹿なやつじゃなくて、単なる愛情love表現」
「…………さ、さ。百木くん危ないからこっち行こな」
身の危険を感じたのか、クコがそろりそろりと紗明から距離を取り、僕の腕をグイッとつかんだ。
急に横から離れた僕らに、八雲が慌てて紗明の頭にゲンコツ一発ぶち込む。
KОされた死神を引きずり、クコの前に連れて行くと、八雲はぺこりと頭を下げた。
「ほんとーに申し訳ありませんクコさん! この子、朝はものすっごく大人しいんだけど……」
「八雲ちゃん、知ってるで。こいつ二重人格やから、疲れるやろ。おおきにな」
ん……何て言った今。二重人格持ち?
は、はぁぁぁぁぁ!? これ以上彼に余計な設定つけんのやめようよ。。。
話、ついていけないよ……。
「大丈夫だよおモチくん。札狩経験者として、いっぱい教えてあげるけんね」
「いや、僕が言ってるのはそれじゃなくて………」
「私、この前お墓で貞子みたよ~。めっちゃくちゃ怖かったー! キャー―――ッ」
アイドルの握手会に行った時みたいに、「めっちゃ可愛い」風に「めっちゃ怖い」と叫ぶ彼女。
今まで気づかなかった。
どうやらこの世界は僕中心に、ヤバい奴しか集まらないように出来てるらしい。
そもそも、ごくごく普通の中3生だった僕が事故死して、クコという変な天使と知り合った時から、何かが変わり始めてるのかもしれない。
もうこの先、こいつらみたいな変人が出てこないことを祈るよ。
七夕の短冊にも書くし、初もうでの時もそう願うことにしよう。
ただ僕は、ただ地味ぃに札狩ライフを楽しんで、得た収入でキャッキャウフフしたいだけなんだ。
そんな僕の予想を、いとも簡単に裏切るのが、この世界だ。
だけど紗明がいうところの地味ィなオーラでゴキちゃんの僕は、そんなこともまだ分からない。
つまりは、まだまだ陰キャってわけ。……当分、ゴキブリの認識は続くだろう。アーメン。