コメディ・ライト小説(新)
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.12 )
- 日時: 2021/10/06 11:36
- 名前: むう (ID: evOUbtyP)
プルルルルッ プルルルルッとけたたましい音が鳴り響いて、少女は「ふわぁ」と欠伸を一つ。
眠たい眼をこすりながら、「もしもし?」と電話を耳に当てた。
フリルを多用したドレスが良く似合う少女だった。ミニ丈のスカートはフリルが三段もある。
こんな格好でジャンプでもすれば、絶叫が部屋中に響き渡るだろう。
白銀の髪は左右でツインテールにしていて、恰好と合わせて彼女は「ロリ」と呼ばれている。
『遅いぞユルミス! 何かい電話したと思ってんだ!』
電話の向こうから大音量の怒声が流れ、ユルミスと呼ばれた少女は思わず電話を耳から話した。
そして、欠伸を噛み殺しながら、めんどくさそうに返事をする。
「ネートル室長ぉ……何の用……?」
『上司と話すときは敬語!!』
「ネートル室長ぉ……何の用でございますか……?」
『はいOK!!』
眠気のせいで、ろれつが回らないユルミス。
眠気覚ましに、中央のテーブルに腰かけて紅茶をゴクっと飲み干す。
この甘すぎない甘さがちょうどいい。ついでに、籠の中に入っているクッキーをぱくり。
「おいひいでふ、ネートル室長。あほでまた作って持ってきまふねぇ」
『ありがとう、でも俺の話を聞いてくれ!!』
「ふわぁぁあーい。了解でふ……」
『上司と話すときは欠伸をしない!!』
ユルミスの態度に、ネートル室長はもう堪忍袋の緒が破裂寸前。
ただでさえおシワの多い室長が、彼女のせいでさらに血管が……(以下略)。
『仕事だ、大急ぎで黒札の現在位置と、クコたちの現在地を頼む!』
「ふわぁ……パイセンたちなら今は地上ですよ……ふわぁぁぁあ~」
『そんなことは分かっとんじゃボケ!! 地上のどこにいるかって聞いてんだよ!!』
「そんなに怒らないでくださいよ……血管、死にますからぁ……」
彼女の悪意のない一言で、電話越しのネートル室長はふるふると震えている。
これが異世界系物語の美女だったら、「大丈夫?」と声をかけたくなるのだが……。
何しろ室長は齢8000のよぼよぼお爺ちゃんだ。
そんなお爺ちゃんのお顔プルプルを見ても、「ああ、血管……」くらいしか思わない。
ユルミスは億劫そうに起き上がると、部屋の中央に浮いている巨大なクリスタルに近づく。
これは「アカシックレコード」という記録媒体であり、過去や未来、現在、全ての物事を記録している。
その表面をスマートフォンを操作するようにスクロールし、ユルミスは再び電話を耳に当てる。
彼女の仕事はアカシックレコードの保管・管理。
ただでさえ綿密なクリスタルなので、任されるのは相当信頼のおける人物しかいない。
ユルミスはとりわけ優秀な人材……なのだが……。
ただいま、寝起きでちょっとやる気が3パーセントしか出てないみたいだ。
「パイセンたちならぁ、東京都のK市の3丁目を只今歩いてるみたいですね。黒札は、はい、……えっと、回収したのがおよそ2489個、未回収130個、そして……。人間に付着しているものが3つほどあります」
『なるほど……。ユルミス、お前も来週から札狩に参加してくれ』
「え……っ。ぱ、ぱぱ、パイセンと一緒にやれるんですかっ?」
『クコが長い事帰ってこない。ちょっと様子を見てやってくれ」
「はいッ! 愛してますネートルお爺!!」
『室長じゃ!!』
うきうきルンルンとその場を舞い、室長の「おいユルミッ」という声をサラッとスルーして受話器を片付けるユルミス。
ネートル室長がなぜ彼女を地上に送ろうとしたのか、なぜ彼女に電話したのか、その理由を答えるにはまだ早い。