コメディ・ライト小説(新)
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.26 )
- 日時: 2020/10/07 16:37
- 名前: むう (ID: 9Yth0wr6)
〈朔side〉
あの後、俺は悪魔のロリ=ユルミスと一緒に、右頬に貼られてある黒札目掛けて集まってくる悪霊たちから逃げるべく、家を飛び出した。
割れた窓ガラスの件は、まだどうするか考えてないけれど、あの大きい音でママが気づかなかったとは考えにくい。
そもそもの話、俺は何も悪くない。
悪いのは、黒札を使って悪さをしようとしているシアと、樹液が好物のカブトムシのように俺めがけて突進してくる悪霊どもなんだから。
こっちはただ兄に会いに行きたいだけなのに、何でこんな目に……。
「ももたん! ボーっとすんな!」
「ぎゃああああああああああああ、ナニコレナニコレちょっと説明してぇぇ!!!」
現在俺は、ロリに担がれて飛行機と同じ高さを浮遊している。
眼下には、アパートや高層ビルに囲まれた市街の風景がずらりと並んでいる。有名な東京タワーも、今ではミニチュアみたいに小さい。
でも、今はそんな悠長なこと言っているバアイじゃない!
だって、観覧車より高い位置を飛んだことなんて、ないんだもん(泣)!!
仕方なかったんだ。
もう家の周り、庭や部屋、天井にまで数多の怪異が押し寄せて、逃げ場がなかった。
ロリが「スターバスト」だっけ? 必殺技で一掃しても、すぐにまた湧いてくる。
でも、でもさ。
いい年した中学生男子が、女の子(悪魔)に抱えられて無様に空を飛ぶ状況ってどうなの!?
しかも横から逆風が吹きつけるせいで、ロリの羽にバンバン風が当たって体勢がぐらりと揺れる。
「アルジ様ァァァァァァァァァァァァァァ。コッチヘオイデクダサイマセェェェェェ」
「イマ帰ッタヨ、エミリーィィィィィィィィ」
「ギャ―ーーー! 誰だよエミリーって!! エミリーって誰だよ!!」
お化けは空を飛ぶ。まぁ、幼稚園児でもわかることなんだけど、俺はそれを改めて自覚した。
自分の肩越しに乗った、おかっぱ髪の人形が耳まで裂けた口をグワっと開いて、襲い掛かってきた。
「うわっ!!」
「ももたん、ちょっと失礼!!」
突然、ロリが鋭く叫ぶ。
なんだよ、と叫び返そうとしたその時、何かが高速で口の中に放り込まれた。
ドロッとしたジュースのような液体。今まで呑んだことの内容な味だ。
口当たりが良くて、少し酸味がきいてて、微かに甘い香りが………。
「ウガァァァァァァァァァァァ!!」
「うわっっ!」
「ももたん、ユルに続いて言って!『汝、卿(けい)の魂胆を欲す』、さんはい!!」
なんだよその、古典でよくある意味がよくわからないけどカッコ良さそうな文章は!
「ウガァァァァァァァァァァァ!!」
でも、とにかくやるしかない。飲まされた液体の正体も、呪文のような文章の意味も理解できないけれど、もう首の当たりにまで人形がしがみついている。
「な、汝、卿の魂胆を欲す!!」
俺は両目をぎゅっとつぶって、両肩に力を入れて叫んだ。
それと同時に身体から閃光が放たれる。視界が白く染まる中、先ほど自分の部屋で聞いたような悲鳴が響き渡り、それは次第に小さくなっていった。
思わず目を開ける。首にしがみついていた人形や、今にも俺に飛び掛からんとしていた悪霊たちの姿は、もうどこにもなかった。
代わりに、赤、青、黄色などの様々な色の宝石のようなものが、宙に無数に浮いていた。
「こ、これは?」
「これは、悪霊どもの魂の一部。俗にいう人魂? みたいなもん。この魂を使って、ユルたち悪魔は人工霊を作って使役させたり、守護霊としてやとったりするんだー」
「お、俺が倒した………?」
「ユルと契約しただろ?」
「け、けーやく?」
「ユルの、【体液】を飲むことによって、ももたんは正式に悪魔と契約した。これからヨロシク♪」
……………………はい?
今なんて言った? ユルミスの………体液を飲ましただって!??
「な、なんてもんを飲ませてんだよお前はッ!!」
「助けてほしくなかった?」
女の子のッ体液を飲んだ? やばいぞこれは懲役100年あっても足りないじゃないかッ。この場合悪魔だろうが人間だろうが関係ないよ。命を救ってもらったこともちょっと横に置いとくよ。
「なんてもんを飲ませてんだよお前はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!(二回目)」
次回に続く
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.27 )
- 日時: 2021/01/15 18:39
- 名前: むう (ID: mkn9uRs/)
☆5分で振り返るカオ僕☆
僕の名前は百木周。
ごくごく普通の中学生だった僕は、学校帰りに車に轢かれ死亡。
そんな中、僕を天国へ連れていこうとクコという天使が現れ
「10分しか地上におれん」
という大事なことを忘れるアホ天使のせいで天国行きがパア。
そしてあれよあれよという間に、
二重人格の死神やらオカルト少女やらが現れ。
成り行きで『札狩』と呼ばれる悪霊退治に参加する…
流れなんだけど…。
**************
〈周side〉
「チカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
しばらくの空中浮遊が終わり。
背中にコウモリの羽をはやした女の子に担がれて空を滑空していた弟は、そのまま一直線に八雲家の窓から中へ入ってきた。
そしてそのまま、僕の肩に腕を回す。
「朔ッ!? ちょ、ちょ、どういうことか説明して!」
いきなりバカ天使のiPadに変なメールが送られてきたと思ったら、
次の瞬間には弟が空を飛んでいるって、どういうことマジで。
「チカぁぁぁぁ、生きてるぅぅぅぅぅ!!」
いや生きてはないから。
身体透けてるし。
再会できてうれしい反面、僕はあることに引っかかり首をかしげる。
……ん? あれ、なんで朔は僕のこと見えてるんだろう。
ちゃんと、身体にも触れてるし。
双子パワー?……いや違うか。
「あー! パイセンたちお久しぶりです!」
そんな僕らの後ろで、例のコウモリ羽のツインテールの女の子は、八重歯をのぞかせてクコと紗明に笑いかけた。
パイセン……?
「………あんたも一旦どういうことか説明しィや。
うちかて暇やないし、いきなり来られても困るんやで」
「すみません。あのネートルお爺がゴチャゴチャうるさくてぇ」
なんだか言い方が反抗期中の中学生のようだ。
前にクラスメートが教師に対しての愚痴を言っていたのを思い出す。
「ネートル室長を悪く言ったらいけませんよ、ユルミス」
朝は酷く大人しく、夜になるとめちゃくちゃウザいという死神の紗明が、歯ブラシのⅭMに出ているモデルなみの爽やかフェイスで女の子に語り掛ける。
「「「オェッ」」」
この光景を見るのが初めての朔はもちろん。
何度もその理不尽な人格の変化に振り回されてきた僕と八雲も、少々ひきつった顔をしてしまう。
「な、なに、あの人……。
チカもしかしてホントはあーゆー人と付き合いたい系男子だった?」
「……随分とアバウトな言い方だけど断じて違うよ!!」
朔は言動が幼い所がある。
まあそこが可愛いんだけど。
ただ、これだけは言っておく。断じて違う。
僕があいつらといるのは、僕がしたくてしたわけじゃない。
まあ元をたどれば、信号が変わってることに気づかず車にはねられる自分が悪いんだけど。
だからと言って、「10分しか地上におれん」とか、「札狩ライフや!」とか、「おモチくん」とか、そんないざこざに巻き込まれたくて巻き込まれたわけじゃ、なぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!
ハァーハァーハァー。
「それで、どういうことなのか説明して」
「あ、ハイ。パイセンたちがなかなか帰ってこないんで、痺れを切らしたネートルお爺がユルを現場に派遣したんですよ。それで、センパイたちに合流しようと目的地に向かいながら、ちょっと旭山動物園とかでイルカショー見たりしてたんですけどぉ」
お前、絶対合流する気なかったよな?
しかも旭山て。
北海道から東京まで、ケッコーな距離あるけど……。
「青森でリンゴ食べて、秋田でなまはげに会って、静岡のピアノ工場見学して、ここへ着きました」
……お前、絶対合流する気なかったよな?
「んで、まあ、こういうわけです」
と女の子は、右手の親指で朔を指し示したのだが。
ごめん、全く分かんないんだ……。
というか君が5分30秒使って説明できたことは、ネートルお爺っていう人物がうるさかったってことだけなんだよ。
アーメン。
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.28 )
- 日時: 2022/10/02 23:36
- 名前: むう (ID: cClyX.aV)
あのあと、朔がどういう経緯があって八雲家に来たのか教えてくれた。
なんでも、黒札がホッペについちゃって、それを狙う悪魔を撃退し、別の悪魔の協力を得て今に至
るらしい。
文章化すれば何かのゲームかなと思う事もないが、そこに「悪魔の体液を飲んで命を救った」と付け加えた時点で一気に違うものになる恐怖。年齢制限なしがR-15くらいになるので注意しよう皆。
「んで、そっちが朔の言ってた協力者?」
「はーい、ユルミス・ローズベリでーす!」
喜色満面で右手を上げ、名乗り上げる悪魔ちゃん。
先輩であるクコに愚痴ったり、急に口調が偉そうになったり、かと思えば女の子らしい表情をしたり。演技力の豊富な悪魔だな。
「えっと、君が朔を守ってくれたんだね。ありがとう」
「いやぁユルにお礼言わなくてもいいし、ユルはパイセンと会えるならそれでよかったし……」
この子、本当にうちの天使の後輩なんだよな。
股を開いたり鼻をほじったり、いつも僕をからかっては笑い声をあげてるクコがなぜか、ユルミスの登場で一気に大人びて見えるから不思議だ。
「あ、あのう、話がぶっ飛んでてよくわからんけど、みんなジュース飲まん?」
「さっすがアルジ様!! あ、俺はコーヒーミルクたっぷり、砂糖5つでお願いします☆」
「注文多すぎるで図々しい」
と、機転を利かせた八雲がお盆を持って立ちあがる。
意外と甘党な紗明の言葉をサラッと受け流し、一階へと消えていく。
それにしても、この部屋にいる人外の数多すぎだよ。
死神に天使に悪魔にって……天国と地獄が共存してるじゃんよ。
えーっと、僕は何をしてるところだったんだっけ?
ああそうそう、札狩について、八雲のお兄さんであるバキュン先輩から講義を聞いてたところに朔とユルミスが割り込んできたのか。
「んーでも、色々あったけど会えて嬉しいよ、チカ!」
「そんなに喜んでもらえると、さっくんを護ったユル偉いって思う! ですよね紗明パイセン!」
「はい、いつも人の為に頑張っているユルミスは凄いと思いますよ」
「……………ふぁ、はい……///」
朝モード(超絶爽やかフェイス)の紗明の言葉に、ユルミスは途端に赤面して黙り込む。
あれ、もしかしてユルミスって、紗明のこと……。
好……。
「あ、俺分かった! ロリちゃんって紗明のこと好きなんだね!」
「っっ?????」
朔ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!??
素直すぎるのは逆にアクシデントを生むこともある。今がそう。
あっさりと秘密をばらされて、殊勝だったユルミスは更に黙り込んでしまった。
「……あの、いや……別にユルはそのようなことなど……」
「ええやん隠さんくても、『天使学科』と『悪魔学科』のみんなにはバレとるんやし」
「え、ええマジですか!?」
「うんうん」
天使学科と悪魔学科??
天国に学校があるのも変だけど学科まであるの!?
優しすぎない?
うーん世界は広いねぇ。
でも、札狩という悪霊退治に、ユルミスと朔という助っ人が来てくれたなら結構有利なんじゃ?
「ところでパイセン。これ、ユルからのお土産です!」
「うわ、『片思いクッキー』! これ食べると必ず片思いになれるやつや」
……結ばれないと意味ないのでは。
と僕が怪訝な顔をしていると、クッキーの箱の包装紙をビリビリビリビリと破ったクコがこっちを見て、ニヤリと笑った。
(ヒッ!?)
なにを考えてんだこの天使。
今明らかに「百木くんをああしてこうしてやろー」って思っただろ!
ぼぼぼ、僕なんも悪いことしてないんですけど。
「まー百木くんも恋愛には疎いみたいだし。この機に、ほいっ」
「グェッッ なんだ、いきなり口にクッキーが……」
超高速で『片思いクッキー』を詰め込まれ、僕はゴホゴホとせき込む。
この後僕がどうなるのかは、ジュースとお菓子を食べた後で伝えようと思う。
みんなもくれぐれも、黒札には気を付けて。ではまた次回。