コメディ・ライト小説(新)
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.29 )
- 日時: 2021/02/09 17:23
- 名前: むう (ID: mkn9uRs/)
〈朔side〉
チカがクコちゃんの手によって一時期再起不能になり、俺は慌てて兄の背中をトントン叩く。
ゴホゴホと咳き込んでいたチカは、渡された水を飲むとようやく落ち着いた。
「だ、大丈夫? チカ」
「う、うん………」
「あはははははは、あはははははは」
明らかに自分の行いを悔いていない様子のクコちゃんが、腹を抱えて笑っている。
その横でロリも必死で笑いをこらえているのが、チカの怒りに拍車をかけた。
「おーい百木くん本当に大丈夫? お水のお替り持ってこようか?」
「あ、いえ……お構いなく……」
「大丈夫ですかチカさん! ほら、ハンカチです。これで口を拭いてください!」
めぐるましく変わる状況に、ただ目を白黒させていた八雲ちゃんのお兄さんがようやくフリーズか
ら溶けて、机に置いてあるコップを手に取る。
そして朝モードの紗明も、歯を光らせながら綺麗なハンカチを渡した。
そのハンカチを受け取り口を拭いたチカは、ギロリと天使を睨む。
その視線の鋭さに、クコちゃんはヒッと息を飲み込み、じりじりと後ずさりする。
「ご、ごめんなさい! ほんま悪かった! 許して!! もうしないから!!」
「お前は僕の天国行きを奪った挙句!! こんないたずらまでするのかよ!」
「だから悪かったって言っとるやん。だ、だって百木くん恋愛に疎そうやしと思て……ヒッ」
だらだらと冷や汗をかき、必死に弁明するクコちゃん。
しかし怒りに燃えているチカには、彼女の言葉は全く届いていない。
俺が仲介に入ろうと立ち上がった僅か0.1秒前。チカはクコの脳天に一発鉄拳をぶち込んでいた。
ゴツッッッ
凄い音がして、クコちゃんの体がぐらりと傾く。
避ける暇もないまま攻撃を食らい、彼女は青白い顔で床に倒れた。
ガチャ。
「はーい、オレンジジュースとコーヒーでーす! ……ってあれ」
「や、やくもちゃーん…………」
一階で飲み物を用意していた八雲ちゃんが、ドアの下に倒れているクコちゃんを見て首をかしげ
る。
彼女がいそいそと支度をしている間、二階では大変なことになっていた。
八雲ちゃんがなんだが気の毒に思えてくる。
「あんちゃん、どうしたん……クコさん倒れてるんだけど……」
「あー、えーーーっと気にしないで。取りあえず飲み物飲んで、これからどうするか話そうか」
「そ、そうなんだ……クコさん、ジュース飲みます………?」
対応に困っている八雲ちゃん。
もう一回言っておく。八雲ちゃんがとても気の毒に思えてくる。
「……………八雲」
「ん? なに、おモチくん」
ふと、部屋に入ってきた八雲ちゃんを見て、チカの動きが止まった。どうしたのかと俺は顔を覗き
込む。チカは頬を紅潮させて、慌てて八雲ちゃんから視線をそらした。何故かはわからない。
「………チカ? どうしたの? まだしんどい?」
「ううん………なんでもない」
そう言いつつも、ちらちらと八雲ちゃんを見るチカの様子に、今度は俺が首を傾げた。おかしい。
さっきまではこんなことなかったのに。一体どうしたんだろう。
もやもやとする中、何故か倒れっぱなしのクコちゃんがニコニコと笑っていた。