コメディ・ライト小説(新)
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.34 )
- 日時: 2021/04/05 20:40
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)
〈月菜side〉
ヴィンテージ。それは、札狩をよしとしない者たちのグループのことである。
AからQ班までに分かれており、それぞれ3~4人の組織で秘密裏に活動している。
昔は『あっちの世界の人』たちだけだけでコンビを組んでいたようだけれど、最近は人間の協力者を見つけて、共に仕事をすることが多い。
ウチとキョーちゃんにも専属のバディがいて、指示は大体その子からもらっている。最も、こちらは人間なので、できるのはターゲットとの接触とか情報収集がメインなんだけど。
ウチがなんでそんな仕事をしているのかはまだ伝えることが出来ない。
ただ、今の生活に飽き飽きして、という理由が一つある。
中学1年生になったと同時に始めた、メイクテクニックを紹介する動画投稿。バズるために何かしたとか、そう言うことでは全くないのだけど、不思議と登録者数が日々右上がりしている現実。キョーちゃん曰く『漫画でよくある天才タイプ』らしい。
何か予習をするとか、そういうことは何一つしていないのに要領の良い奴。
それからはもう芸能界入りと言うか、毎日がとにかく忙しく、はっきり言って前の生活に戻りたいとも思う。
……でも、ウチがこんなことをしている理由はもっと別で。
「あーっ! きょーるなちゃんたち、待ってましたぁ♪」
駅の構内の、使用中止のトラテープの目立つ階段の陰に、キョーちゃんと一緒に滑り込む。
先に来て待っていたウチの雇用者が、八重歯をのぞかせて妖艶に笑った。
「……あんたさぁ、一カ月も連絡ないとかマジで怒るよ」
「あー……あのね、色々あったんですよ。ジュジュとの顔合わせとか、あっちの執務室にいるユンファンとか、フリルとの連絡とかぁ」
人名みたいなものが聞こえてきて、ウチらは首を傾げた。
ま、それはいいとして、と彼女はポンと手を打って、
「では、第2回、Q班連絡調整会議を始めまーす! 司会のプリシラ・ローズベリです!」
「………QRCってまだ2回目なんだ……一回目ってなんだっけ」
「……さあ。いつもフツーにスタバでお茶して解散だったし」
Q班連絡調整会議‐略称QRCは、今後の活動の方針を決めたりする会議のことで、月一回この場所で行っているのだけど、まともな活動は実は今日が初めてだ。
「ということでまずはルナルナの仕事なんですが……ある方とお友達になってもらいますね」
シアは小脇に抱えたバインダーから資料を抜き取ると、折り目を丁寧に開いてウチの前に突き出す。そこにはターゲットの似顔絵と現住所、出身中学校名と年齢が書かれていた。
『東京都S区北11番地 に居候
百木周 男 15歳 天海学園付属中学校出身』
「へぇ、天海付中……。成績いいんだぁ。キョーちゃんどこ中だっけ」
確か天海学園付属中学校は私立で、偏差値が70くらいあって、入試での合否の境目がかなり厳しいと噂だ。
この百木って子、つまりすごいできるんだ。
勉強はかなりヤバめのウチからしたら、毎日拝んでも足りない。
「………桜ヶ丘学院」
「え、桜ヶ丘って、天海の姉妹校の? 偏差値同じ位だよね?」
「そうだけど何?」
………う――――わっっっ。
そうだけど何ときたよこいつ。
ウチは心の中で盛大に舌打ちをしてやった。これだから困るんだよな。
「つ、つまりウチはこの子と会えばいいわけね」
「そうなりますねぇ」
「……僕は?」
仕事が割り振られていないキョーちゃんが、試すような目でシアを睨んだ。
その視線の鋭さに少し気負わされながらも、シアはテキパキと仕事を教えていく。
「キョーちゃんは、引き続き潜入調査ですねぇ。と言っても普通にご自分の学校へ行き、黒札をこっそり人間に貼るだけの作業ですが、アナタは上手ですので」
「……まあね。シール貼るのすっごい好き」
以外に子供っぽい一面に、ウチは目を丸くした。
と言うのも、この前彼に「シールってなんか子供心くすぐるよね」と言ったら「へぇ」と返されただけだったのだ。
「へぇ」だったのに! なにが「シール貼るのすっごい好き」だ!
あの冷めた目はどこへやった!
まぁキョーちゃんはこういう人間なのはこれまでの付き合いで分かっている。
「じゃあシアは? なにするの?」
ウチらに指図をするのが仕事ではないと前に聞いたが、彼女が他に何をやっているのか、上司はいるのか、肝心なことは何一つ知らない。
これまで明らかになったのは、『ヴィンテージ幹部』という肩書と名前のみ。
つまりコイツが、このヴィンテージを牛耳ってる、いわばラスボスなのだ。
まぁ幹部と言う話だから、その上はいるんだろうけど。
「私ですかぁ。そうですねぇ。カラオケですかね」
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
柄にもなく、キョーちゃんが大声を張り上げる。
「何ですか? 悪魔の世界にもカラオケの概念はありますよぉ」
「へぇ、なに歌うの?」
「中島み〇きの『糸』ですね!」
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
今後はウチが答えを張り上げる羽目になった。
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.35 )
- 日時: 2021/04/12 18:59
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)
〈朔side〉
それからさらに一週間後。
札狩に参加すると言っても毎日悪霊と戦うわけではないので、最近はほぼ自分の時間を有意義に使うようにしている。その中で得られた情報などをチカたちと共有し、計画を立てるつもりだ。
と言うのも俺はまだ生者だし、今年は受験生なので、おちおち学校を休んでなんていられない。学力がもともとそんなに高くないうえ、下手したら私立に『転ぶ』かもしれないが、やってみなきゃまだ分からない。
俺の通う中学は公立のK中学。全校生徒は600人程度で、公立だから偏差値なんてないのが当たり前。でもその分高校へ進学する際にかなり背伸びをしなければいけなかったりして、かなり心身共に疲れてしまう。
今日も、俺は三年生対象の進学模試終了の疲れで背中を丸めて帰っている。
国語とかマジで意味が分からない。せめて問題文をラノベなんかにしてくれれば、いくらでも感想は書けそうな気がする。時間配分だってきちんと決めることができるだろうし、第一問題の書き取りなんかはアニメのキャラ名だけでも十分な勉強になると思う。最近は難しい漢字のキャラが多いから。
バカな考えを頭に浮かび上がらせながらガラケーをいじっていたものだから、ある人から不意に声をかけられた時は、思わず喉の奥から変な声が漏れた。
「……ちょっと聞きたいんだけど」
「ひゃっふぅぅぅぅぅぅ!???」
突然肩に手を置かれ、俺は目を白黒させる。ドクドクと暴れ回る心臓を服の上から抑えて振り返ると、声の主は気まずそうに笑った。
「……驚かせるつもりじゃなかったんだけど……勝手に驚いたからこっちも驚いたし」
「…………はぁ」
あ、この人嫌いなタイプだ、と真っ先に思った。
歳は同じ位。白いカッターシャツの胸元には、地元で有名な難関私立中学「桜ヶ丘学院」の刺繍がほどこされていた。
「……何か用ですか?」
「……あ、まあね。あのさ、僕桜ヶ丘学院の生徒なんだけど、天界府中に仲良しの友達がいて、百木周って言うんだけど、そいつ事故で亡くなったらしいから、家に挨拶に行こうと思って……」
………チカの友達?
こういうのもなんだけど、チカが家に友達を連れてきたことはまだない。友達と呼べる人がいないと前に自分でそう言っていた。
もしくは、チカが恥ずかしがって言っていないだけで、仲良しの友達がいたのだろうか。
「……百木周は俺の兄ですが」
「やっぱりね。……顔似てるからそうだろうと思ったよ」
「つかぬことをお聞きしますが、あんたのお名前は?」
俺はロリ(ユルミス)と(不本意ではあるが)契約を結んでいる。そのため、短時間なら悪魔の術が使えるようになっている。実際悪霊に狙われた経験のある俺に、ユルミスは『近づいてくる人は誰でも敵だと思え』と口酸っぱく忠告していた。
「僕は佐倉亨介。ESSクラブに入ってて、たしか姉妹校同士の交流も盛んだよ」
「………百木朔です。どうも」
………佐倉亨介。表情はおっとりとしているが、その双眸からは僅かな敵意が感じられる。何者なのかは分からないが、取りあえずは警戒しておいた方が良さそうだ。
俺はチカの弟だ。よって、兄を守る義務がある。こうしょっちゅう何者かに狙われる生活もどうかとは思うけれど、黒札の資格者になってしまった以上それはしょうがない。
「チカに友達がいたなんて知りませんでしたよ。ぜひ、家に来てください。きっとチカも喜びますよ」
さて、……この怪しいお尋ね者は俺が代わりに担当しよう。バディの初めての仕事だ。またピンチになったらユルミスにでも声をかければいいや。
俺は心の中で何度も頷き、亨介ににっこりとほほ笑む。
これはあくまでも表面的な態度で、本当は睨んでやりたかったがあまり刺激はしたくない。
「……ところでさ、そのホッペについてるやつ、何? 最近のアニメグッズ?」
「!」
恭介は両目を細めて言う。俺の肩が跳ねたこと、彼には分かっただろうか。
「流行りの最先端だよ。もしかして佐倉くん、知らないの?」
と鎌をかけているふりをするが、自分は何を言ってるんだろう? とセリフの選択を間違えたことに内心冷や汗タラタラ。
「? どういう意味」
「最近流行ってるんだよ。デーモンコロシアムってゲーム知らない?」
………俺も知らないです、ハイ。
チカが大好きで、普段全然ゲームとかしないのに、そのアプリだけインストールしてたからタイトルだけ知ってるだけで。いやむしろ、タイトルしか知らないや。
よって、自分の偏見と直感と想像だけで語る流れになってしまう。きちんと筋道をたてて話すことができない俺は、背中から腰に向かって流れる冷や汗の冷たさに体を震わせた。
「そのゲームでは、登場人物はみんな痛いシールつけてるの?」
「そ、そうなんだよねっ!」
ごめんなさい! ゲームの製作者さんごめんなさい!
恭介の悪意のない質問が、俺の繊細な心に穴を開けていく。知ったかぶりという必死の攻撃を、純真という攻撃で防御している。
「つまり君、もしかして『シール貼ったら俺もこのキャラになれる』的な思考回路なんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・ち、チガウヨッ!?」
彼の、毒舌—と言うのだろうか。
人の観察するような、試すような視線や言葉選びが、俺は少し、いやかなり苦手だ。
これからこの人を自分の家に連れて行くのか。持つかなぁ俺のメンタル。
どうか壊れないでくれよ。そして頼むから何も起きないでくれよ。
初対面の人を、いきなり敵扱いはしたくない。
でも、この世界はどうやら俺(かチカ)中心にめぐるましく変化しているようで、そういう願いは大抵、人を困らせて喜ぶ神様によって、あっさりと裏切られるのだった。
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.36 )
- 日時: 2021/06/17 13:55
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Wb6EMeB7)
お久しぶりです。
………「札狩ライフ始めました」っていう章題なのに
まだ一度もガチで戦っていないカオ僕メンバー……。
こっから本気出します(むうが)
********
〈八雲side〉
キーンコーンカーンコーン
私こと、栗坂八雲は六時間目終了のチャイムと共に校門へと駆け足で向かう。
私が通っている中学校は、駅前にある公立中学。
部活にも入っていない私は、今日の夕方にやるアニメ『モンスター・モンスター』略して【モンモン】をリアタイするために、只今階段を三段跳びで降りている。
モンスター・モンスターは、『少年ジャンク』っていう少年漫画誌で絶賛連載中の漫画が原作。
学園もの×妖怪幽霊もので、オカルトマニアな自分は連載当初からずっと推している。
それがなんと、アニメ化するなんて!
「急がないとっ。うちのテレビちょっと電波悪いから録画とかも最近してないし……」
トントントントントン
………ジ様!
「あぁぁぁぁあ、急げ急げええぇぇぇぇぇ!」
………ルジ様!
トントントントントン
もうなんなの~!? さっきから後ろで聞こえる甲高い声。
いい加減ムッと来て振り向くと、宙にふわふわ浮いている彼と視線が合った。
「アルジ様! 話しかけてなのに無視って俺マジサッドで今絶賛cry(くらい)気持ちです」
「あーもうあんた今話しかけないで!」
宙に浮かんで、右左に揺れているのは、私の相棒(?)の死神・紗明だ。
朝は酷く大人しいが、夕方の夕暮れ放送が鳴った瞬間に今のようにウザくなる、めんどくさい二重人格持ち。
悪霊を退治する札狩という職業をしていて、 強いことは強いらしいのだが、言動が言動だけに「コイツ絶対雑魚じゃん」とみんなが思っとる。
「ホワイ!? てゆーか待ってくださいアルジ様! 俺はマジで真剣な話を……」
「あーあー、帰ってからにしてくれる? 今日私急いでるけん」
「だってゴキブリの弟からメールもらッとんねん! これ、見ないとかマジでありえへんわ。マジでわっち泣きよるわ。マジでわっち……アルジ様………」
マジマジうるっさい。あとなんで急に方言っぽくなんの。
私は広島出身だからときどき広島弁が出るけど、あんたのその関西弁はなに!?
てかあんた、大阪出身でも日本出身でもないじゃん!!
紗明のすすり泣く声が、階段を降りるBGMと化すのがつらい。
早く帰りたいのに、いつもこうして邪魔してくるので、帰りはよく遅くなる。
うちで、百木周ことおモチくんとあんちゃんが待っとるのに……。
はーっ。やっと一階についた。あとはこのまま、渡り廊下を抜けて校門を出るだけだ。
たったこれだけの過程が、とても大きい迷路を脱出した時のように疲れを与えるのはなぜ。
「それで? 用事ってなに? 聞いてやるけぇ言うてみ」
「アルジ様の方言ってめちゃくちゃ萌えますね! もうワンテイク行ってみます?」
「………………さっさと要件をいえ、このダボっっっっ!!!」
ふーふーっ
顔を真っ赤にして怒り狂う私に、流石にやりすぎたと感じたのか紗明の表情がしゅんと萎れる。
口をとがらせて、指先をもじもじさせて。
時々ちらちら顔色を窺ったりなんかもしてると、黙らなければ可愛いのにと思う。
「す、スミマセン………もうしません。もう……しませええぇぇぇん………」
「………なに? 要件」
目いっぱいに涙をためる紗明にうんざりと返すと、紗明は手の甲で涙を拭って、
「ゴキブリのっ……ぐすん……弟からメールが来てっぐすん……なんか、アヤシ—奴がゴキブリの友達で、居場所を知りらしいから、万一の為に後付けてくれって……」
「おモチくんの居場所ぉ? なんでそんなこと気になるんじゃ」
「俺に聞かれてもアイドンノウですよ! 俺言っとくけどIQマジ低いんで! 舐めんといてください」
低いのは分かるし舐める要素もないわ。
うーんでも、確かに怪しいことは怪しいし……。うーん……。
おモチくんの居場所が知りたいなら、そのままスマホとかで調べるほうが効率がいいと思う。
なんでわざわざ、朔くんに近づいたんだろう……。
朔くんは黒札の資格者。彼の周りにいる、無害な霊なんかも黒札の力で寄ってくる。
そして、有害な悪霊なんかも黒札につられて集まってくるから……。
相手は、もしかするとおモチくんじゃのうて、朔くんが狙いじゃないかいな?
札狩のなかには、黒札が狩られるのをよしとしない輩もいるようじゃけえ。
うーん。
モンスターモンスターのリアタイは、悔しいけど諦めよ。
後でまた見れるんだし、あんちゃんに頼んで録画してもらうことにしよう。
「よし紗明、行くよ」
「え、ど、どこですか!? ウェア!? ウェア・イズ・ドコ!?」
アンタいっぺん英語の文法から勉強した方がいいよ。
ウェア・イズ・ドコって……日本語訳したら「どこですどこ」になるし……。
Q:Where is doko?
A:知らんわ。
「その怪しいやつをつける。ほら、いつだったか見せてくれた透明化! それか飛行!出番!」
「………えー、でもあれ、クソ操作めんどいんすよ。マジだるいですって。やりたくね……」
「………さぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁきぃぃぃぃいい」
「ハイやります!! いますぐ!! すみませぇぇぇん!!」
いつもこう。主様(と勝手に決めつけられた)の私が彼の尻を叩いてやるのだ。
いやほんと、コイツ本当に強いのかなってなんども疑ったし、みんなそう思ってるでしょ。
……こいつ、本当の実力はかなりのもんよ。
まぁ見といて。絶対驚くけん。
「……コードは!? A? B?」
「B! 出力50%、目的地は朔くんの背後!」
「りょーかいです!! ……久しぶりっすねこれ。行きますっっ。ウィーキャンフラァァイ!」
紗明が私の体を姫だきする。姫だきってなんのことが分かんない人へ、お姫様だっこのこと。
その状態で、バサッッと言う羽ばたき音。
首の角度を変えて、音のした方を見やると、いつもは閉じている紗明の背中の羽が大きく開いていた。
……念のため言っとくけど、彼の羽っていうのは皆さまが想像したようなもんではなくて。
天使の羽……クコさんみたいな立派なもんではなく、言うならば……。
鴉の羽程度のちっちゃな奴が、たくさん集まってできた、飛ぶにはなんとも心配になるような、黒い羽だった。
「………マジで言ってる?」
「大丈夫っス、死神のパワー舐めんといてください。俺の術をいったん発動します、それをバァァンってバクハツさせて、その風力でグゥゥゥンと上に上がるわけっす。イーズィーっしょ?」
「完全能筋プレイやん」
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.37 )
- 日時: 2021/09/04 17:39
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Iawl57mY)
お久しぶりですっっっっっ。
もはや失踪しすぎて誰か分かんなくなっている今日この頃ですねっ。
二次創作(紙ほか)にてろくきせシリーズ書いてました、どうもむうですっっ。
歌うたうのとお絵かきが好きですっ。歌い手志望ですっ(聞いてないわ)
(そして更新全然してなくてスミマセン! あれから筆が進まなくてですね……)
今日ふと思ってここに来てみたらあらびっくり←
こんなw こんなカオス満載&ちゃんとした戦闘シーン今だに一ミリもない&キャラ濃すぎの
小説(と言えるのか?)が大会銅賞ってマジですか……!?
いやほんと、びっくりだわぁ………。
更新は亀並みに遅いですが、これからも応援よろしくまっ(何語)
※むうは元々テンションこんな感じです。
あ、あと一つお知らせなんですが、紙ほか版の「ろくきせ恋愛手帖」の件でお知らせを一つ。
ほんとーに申し訳ないんですけど、コラボ短編を削除して完結処理をして、ろくきせシリーズはこ
れにて締めようと思います。
会話文短編集閲覧数3000突破、続編閲覧数11000突破、すごい感謝してます。
最近は学校とか、持病のメンタルヘルスの件でなかなか更新はできないですが、時々ふわりと戻ってきたりイラストぶん投げに行くので(ゑ?)見かけたらまたよろしくお願いします!
追記:いやはやびっくりだよ))もうええわ
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.38 )
- 日時: 2021/09/16 22:08
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: DkL3srzs)
皆さんこんばんは。カオ僕の可憐なヒロイン(?)栗坂八雲です。
広島生まれ東京育ちのごくフツーな生活を送っていた私は、ある日道端に倒れている謎の男を見つけ。
このまま死なれたら困るわと家に呼び(!?)おにぎりを食べさせてあげたのが全ての始まりでした。
まさかその男が死神で、札狩っていうカッコいい仕事をしてる割に馬鹿で、どうしようもなくめんどい奴なんて考えてもなかった。
そしてそのまま時が過ぎ、現在私はなぜか。
空を飛んでいます。
それも、スマ〇ラみたいにバビュンッと光の速さで……というわけでもなく。
いうならばタンポポの綿毛が子孫を残すべく風に身を任せるような感じで、フワ~~ッと浮いている。
「………バァァンッってバクハツさせる言うてたやん……あれ嘘だったん?」
背中に生えたちっちゃな羽根を必死に動かして飛んでいる相棒の死神・紗明の表情を盗み見ると、彼は何とも言えないような苦い表情で目をそらした。
「なんか、いざやってみたら『あれ? できねえな? およ?』と思いまして……」
「……………………………馬鹿なの?」
「いや、そんな訳ないと思うっスけどねぇ」
十分バカなんだよ。だいたい、術の風力で自分の身体&主人の身体を持ち上げるなんて不可能だ。
まぁ、非常に亀スピードではあるが着実に目的地へ向かっている点だけ、ある意味助かったかもしれないけど。
眼下に広がる街を眺めながら、どこかにターゲットである朔くんの姿がないか確認。
だがしかし、ミニチュアのような細々とした風景で人を探すのはかなり難しい。
『人がゴミのようだ』で有名な某映画の悪役の気持ちが分かった気がする。
人間の三十倍目がいいという死神にサーチを任せ、私は決して乗り心地がいいとは言えない彼の背中の上で小さく伸びをする。
「天界の学校では、次席を取るくらい頭ベリー良かったんすけどね」
「嘘つけぇ!」
「嘘じゃないですもん! ホント―ですもんッッッ!!」
心の底からそれはないと思った。その気持ちの強さが叫びに変わり、否定された紗明はムッとして言い返す。
「クコの方がはるかに俺より劣ってましたね! だいたい俺とクコとユルミスだったら、クコ<俺<ユルミスの順で頭いいんすよ」
「あんた次席ってさっき言ったじゃん!!!」
一番じゃないやん!
そもそも年下のユルミスちゃんに負けてるじゃん。絶対嘘。認めない。絶対嘘だ。
と、ガヤガヤと言い争っていると、紗明がなにかを発見したようだ。
話を止め、ある一点をじっと凝視する。目を凝らしてみると、ファミマの駐車場にゴM……(ゴホンゴホン)男子二人の姿があった。朔くんと、噂の男の子のようだ。
「……どうします? 右ストレート決めて逃げます?」
「せんでいいから、とりあえず着地して」
「アイムワカッタ」
「あんたの英語どうなってんの?」
フワ~~。
着地の際も、スーパーヒーローみたいに高いとこから土ぼこりを立てて……というのではなく、あくまでフワリと、後遺症も着地の衝撃も全く気にしなくていい、超超安全な降り方でした。保険料もかかりません。
ストッッ。
背中から地面に降りた私は、急いで辺りを見回す。
入り口付近で、朔くんと例のおモチくんの友達(自称)・享介くんがコーラを飲んでいる。ときどきお互い談笑したりと、仲睦まじい様子である。
………勘違いだったのだろうか。
今の今まで亨介くんが、黒札を狙う敵だと思い込んでいたけど、本当におモチくんの友達なのかもしれない。ただ普通に家に行きたいから声をかけた、ただそれだけのことかもしれない。
ちょっぴり肩透かしを食らったような、何とも言えない虚無感を抱いた。
突き出した右手は何も掴むことなく空を切る。
「あ」
と、こちらに気づいた朔くんが視線を向ける。来てくれたのかと、連絡してよかったというような、ほっとした顔で。
そして、隣の亨介くんを窺う。さっきまで穏やかだった彼の口元は、きつく結ばれていた。目つきは鋭くなり、目の奥の光が消える。
明らかに数秒前とは異なるオーラに、私も、そして紗明も無意識に肩に力を込めた。
彼を直視できない。全身から放たれる圧に、心臓がおびえているんだ。
「あぁ……朔くんのお友達ですか? お世話になります」
礼儀正しく腰を折った亨介くんの言葉は、どこかざらついていた。言葉にできない恐怖があった。
大きく深呼吸をして、必死に私は冷静を装う。
今まで紗明につき合って退治してきた霊たちとは明らかに違う。現時点でのラスボスは、この子だと確信する。
「なんでそんな、幽霊でも見たような顔をしているのかな? ………ひょっとして」
僕が怖いのかな?
と、ぞっとするような低い声で囁く。
ヒュッと口から変な息がもれた。
いつもは殊勝な紗明でさえ。いつも明るい朔くんでさえ、その声を聞いた途端血の気がスッと引いた。
固まる一同を一瞥して、ポケットに手を突っ込み亨介くんが目の前にあるものをかざす。
良く知っているそれは、朔くんの頬にもついている、悪霊をおびき寄せる札、黒札だ。
「………………ごめんけど、君たちには邪魔されちゃ困るな」
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.39 )
- 日時: 2021/10/11 12:09
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: AzYdFFfX)
〈朔side〉
「ごめんけど、君たちには邪魔されちゃ困るな」
突如、気配が変わった亨介に、俺は警戒心を崩すことなく数歩下がって距離を取る。
彼が顔の前に掲げた物、それは、俺の頬にも貼られてある黒札だ。
悪霊を簡単におびき寄せてしまう、天界で流通しているグッズ。
非常に粘着力が強く、一度人の身体や物に貼りついたら、札狩という悪霊退治を行うものでなければとることは出来ない。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
俺は両手を広げて、亨介に叫ぶ。
いくら自分を狙いに来た刺客だったとしても、俺はこいつと戦いたくはない。
だって、目の前に居るのは人間だ。下手に手を出して、怪我をさせたくなかった。
「なんか理由があるんでしょ!? 理由があるから俺を狙ってる、そうだろ? どんな理由かは知らないけど……。悩みなら聞くし、こう見えてもけっこう相談とか受けるの得意なんだ、だから……」
しかし、そんな言葉に対して亨介は態度を変えることはなかった。
厳しい目つきのまま、俺を斜めから見やる。その視線の鋭さに、ゾッと背筋が凍った。
「理由……? 言うわけないじゃん。馬鹿なの? もしかして、一緒に仲良くできるとか思った?
安上がりもいいところだね」
「ッちょっと、それは言いすぎ……ッ!」
俺の横で話に耳を傾けていた八雲ちゃんが、眉間んにしわを寄せて怒鳴る。
なにも自分に言われたわけじゃないのに、自分のかわり怒ってくれる優しい性格の八雲ちゃん。
でも、そんな少女にも目の前の敵は容赦ない。
「言ったところで君らに何ができる? 君らは札狩で僕はヴィンテージだ。お互いに対立する立場なんだよ。いくら手を差し出されたって、仲間になんてなるものか」
ヴィンテージ……。前にクコちゃんに聞いたことがある。
札狩をよしとしないものの総称だ。
ヴィンテージの中には、彼みたいな人間もいるのか……? 自分の意志で、こんなことをしてるのか……!?
「あなたはそれでいいの? そんなことをして、それで幸せ?」
「うるさいな。幸せを連呼する暇があるなら、…………攻撃でも避けてみろッッッッ!!」
享介が腕を振りかぶる。黒札はヒュウッと風に舞い、黒い靄へと変化する。
その靄から、大きな黒い何かが………。
な、なんだあれは……。
大量の悪霊。映画とかでよく見る、貞子みたいなものよりもっと醜い。
まるで、ドラ〇エのスライムのような。どこが手足でどこが眼なのか、それすらも分からないような悪霊たちが、どうっとコンビニの駐車場を埋め尽くしていく。
「ウガァァァァァァァァァァッッ」
という奇声をあげて。
「馬鹿じゃないのかっ! 結界もなにも貼ってないとこでこんなことしたら、人間どもらみんな死んでしまうぞっっ」
「別にいい。人間なんて所詮、限られた歳月の中でしか生きられない無力な生き物だから」
だからって、こんなこと、許されるわけないだろ!
そう反論したかったけど……。
ガシッと俺の右足が悪霊スライムの中に埋もれてしまって、そのままステンと尻餅をついてしまう。
ドスンッッ
「う゛ッ!」
お尻が痛い。大分派手に打ち付けてしまった。
いや、痛みに悶絶しているバアイじゃない。今はまだ通りやコンビニ店内に人がいないからいいけど、そのうち店員さんや客が来てしまったら。多分きっと、このスライムの餌食にされてしまう!
「……八雲ちゃん、紗明! 早くしないと……!」
「わかってるっ! とりあえず、こっちの駐車場は私と紗明で何とかするっ! 朔くんは人が来ないか見張るのと、おモチくんに連絡して!」
「わかったっっ!」
八雲ちゃんの適切な指示を聞き、俺は慌てて駆けだす。
しかしスライムのせいで、なかなか足が動かない。
もどかしい気持ちを抑えながら、必死に足を動かす。
いつもは使えない(と言ったら失礼だけど)紗明も、今回ばかりはグダグダしてはいられない。
今までなぜ本気を出していなかったのかと思うくらい、迅速なスピードでスライムに拳を入れて行く。
「アルジ様、早く結界を貼りましょうっっ! 呪文教えたの忘れてないっすよね!? おいゴキブリ弟! なにボケっとしてんだ、さっさと行けぇ!」
この、鬱陶しいスライムめっっ。お前らなんか、ゲームのなかでは強さなんてザコなのに!
なんでこんなに強いんだよっ。俺の足がそんなに好きなのかっ。
ベタベタ触ってくんな、出るとこ出たら有罪だぞ!?
「あ゛ぁぁぁぁぁもうっっ。うっっざいんだよ! スターバスト!!!!!」
バァァァァァァァァァン!!
呪文を唱えると同時に、凄まじい威力の爆風が身体から解き放たれ、目を開けた時にはさっきまで俺の足にまとわりついていたスライムは灰へと化していた。
………マジか。強すぎるだろ、「スターバスト」。
ユルミスの体液を飲まされて、言われるがままに契約をしちゃったけれど……。
ありがとうユルミス!!!
目の前が一気に明るくなる。
進路をふさいでいた敵も、呪文一つであっという間にピチュンとはじけ飛ぶ。
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れっ。
俺がみんなを助けるんだっ。俺がチカを守るんだっ。
こんな俺でも!黒札の資格者になった俺でも! やるときはやるんだっっっ!
「ズ・ポモ・ア・デレ・エネ・ワオ!!」
八雲ちゃんが呪文? 見たいなものを唱えると、白い光が発生し、幕のようにコンビニを包んだ。
恐らくこれが結界だろう。よかった、これで関係ない人たちが襲われるリスクは減る。
ズボンのポケットに手を突っ込んで、携帯を取り出す。
電話帳を急いで開き、「百木周」を開き……。
「ウガァァァァァァァァアァァ」
「だぁぁぁぁもう、電話くらいさせろよっっっ! おらっっ」
携帯を持っている右手の上に、スライムが乗っかってくる。
そんなに俺の手が好きなの? なんかいい匂いでもするのかな!? 可愛い奴め。
……なんて思うわけなく、遠慮なく俺は左ストレートをスライムにお見舞いする。
ボキッッッッッッ
凄い音がした。普通ポヨンとか、そういう可愛い音がするんじゃないっけ。
ボキッッって。なに、俺まさかスライムの大事な部分を破壊してしまったとか……?
おそるおそる自分の左手を見ると、小指があり得ない方向に曲がっていた。
じんじんと痛み出す。ちょっとでも力を加えると、激痛が走った。
「…………………マジかよぉおおおおぉ!?? 」