コメディ・ライト小説(新)
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.42 )
- 日時: 2021/10/04 21:58
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: evOUbtyP)
こんばんは、むうです。毎日投稿目指して頑張ってます。
ついでにお勉強も頑張ってる今日この頃です。
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〈チカside〉
しばらく20万だの30万だのと浮かれていたけれど、数分も経てば舞い上がっていた気持ちもすっかり落ち着いてきた。いや、落ち着いた……というよりは、実感がわかないと言った方が正しいのかな。
それこそ、ユルミスの減俸の話の方が胸に残っていた。クコと紗明が口をそろえて『天才』と称する悪魔の少女。
聞いてみると、アカシックレコードの管理業に就職するには筆記試験に合格する必要があるらしい。その難しさは、最難関レベル。綿密な水晶を扱うが故、己の機動力や判断力も重要になってくる。
ユルミスは毎回学年首席だった、と紗明が言っていた。
運動も勉強も、全てが周りの人より良くできていた。いわば文武両道ってやつだ。クラスメートの中には、彼女に嫉妬して嫌がらせに走ったものもいたらしい。ユルミスが陰口を言われたりするたび、紗明が犯人を特定して抹殺したらしい。
「てことは今失業ってこと、だよね。……大丈夫なの? いつから?」
「………一カ月前から」
当人がなんてことない調子で、ソファに寝そべり呟くものだから、反応に迷う。
彼女にとっては、大したことないことなのかな。それか、無理に笑っているのかもしれない。僕や、先輩であるクコに迷惑をかけまいと。
「なんで黙ってたんや。言うてくれたら、うちだって管理局へ戻れたのに……」
「大丈夫ですよ! そのうちいいとこ見つけます。なんならパイセンと一緒に札狩したりとか」
「………まあ、別にえぇけど………」
天界にも学校や役所など、人々の居場所がある。人間と同じように働いて、お金をもらって、ためたお金で小さな贅沢をする。
天使だろうが悪魔だろうが、それぞれに色んな悩みがあって、それぞれに苦しみながら頑張って生きていることを知った。
無神経でマイペースで、S気質のクコ。毎日明るく振舞っているけど、多分彼女にも悩みは尽きないよね。
天界へ僕を連れて行くという大事な任務に失敗した。上司からは解雇するぞと口酸っぱく言われている。「姉ちゃんはうちのことを馬鹿とかアホとか言う」と前に聞いたことがある。
紗明だってそうだ。二重人格なんだから、自分が一番苦労しているだろう。どこまで自我を保てるのか分かんないけれど、周りに迷惑をかけているとはうすうす気づいているんじゃないか。
でも、そうしようもないんだ。そういう風にしか生きられないから。
それでもあの天使は、あの死神は僕たちに笑いかけてくれる。尽くしてくれる。休みの日は一緒の場所に集まって、他愛のない話をして、ときに口論をして、また仲直りして。
………僕は彼らの足手まといじゃないだろうか。
幽霊になって、札狩をするようになって。そりゃあ自分が死んだという事実は悲しかったけど、友達もできたし双子の弟とはまだちゃんと話ができる。
あのままクコと一緒に天国へ行っていたら。多分今の僕はここにはいない。八雲にだって会えてない。朔も暗い表情のままだったかもしれない。
(あれ………。僕、すごい得してるじゃん………)
こんなんでいいのか? これで本当に許されるのか?
なんでお金に目をくらませてるんだ。なんであんな偉そうな口をきいたんだ。自分が恵まれていることも知らずに。虚勢張って。余裕ぶって。
『きみ、百木くんか。百木くんは目に見えない。声もかけてもらえない。永遠にボッチや。ざまあ』
身体が透けているから、そのままコンビニでおにぎりを買ったりということはできない。
ちゃんとご飯が食べれているのは、八雲のお兄さんが毎食作って食べさせてくれるから。人目に付かず眠れているのは、八雲が僕を家に呼んでくれたから。
ボッチになる可能性だってあったんだ。それなのに。
それなのに自分は。思わず膝に顔をうずめる。胸の中に苦い何かが混じった。
「………………自分が嫌になる………」
『チカは優しいんだよ。俺は馬鹿だからさ。チカがいないとなんも出来ないじゃん。でもチカは一人でも大丈夫じゃん。だから凄いって思うよ』
ちがうよ朔。一人になるのは怖いよ。しかも死んだらその孤独は一生ついて回るんだ。
僕は優しくなんかない。偽善者ぶってる馬鹿野郎だよ。
虚ろな目で床を眺めていたものだから、急に鳴った携帯に思わず肩を震わせる。軽く三十センチは飛んだ。バクバクと高鳴る心臓。大きな地震でも経験したのかというくらいのオーバーリアクションだった。
プルルルルルルルルルッッ
「チカ、電話鳴ってる」
「う、うん」
慌てて着信画面を開くと、『百木朔』とある。
今は午後四時過ぎ。朔は午前からずっと学校に行っていたので、もうそろそろ帰る時刻だ。どうしたんだろう。コンビニで何か買ってほしいものはないかとかかな。
「もしもし朔? どう……」
『ブッ ザーザーザーザーザー』
砂嵐。滅多に聞かない不快な音が、耳の裏を撫でる。
携帯が壊れているのか……? 念のため、もう一度画面の向こうにいるだろう弟に呼びかける。
「も、もしもし? 大丈夫? どうしたの!?」
『チッ………チカ…………!』
良かった、応答してくれた……と普通ならここで胸をなでおろすところだろう。でも、その行動に出れる状況ではなかった。
悲痛な叫び。何かを必死で耐えているようだ。それに、ところどころ騒音が聴きとれる。その正体を知りたいのに、車のエンジン音のせいでかき消されてしまっている。
「今どこ!? ねえ、どうしたの!? どういう状況なの?』
『小指が折れた………ッ』
「………は??」
小指!? そんな……、一体何をしたら骨なんて折るんだ!? 交通事故? なんなんだ?
焦り、怯え、不安。色んな感情が頭の中でグルグルと渦を巻く。目の奥が心なしか熱い気がする。
『……ヴィンテージが来たんだ……俺の黒札を狙って……悪霊を沢山、おびきよせて攻撃してきた……! 万が一の場合に備えて八雲ちゃんと紗明を呼んでおいたんだけどッ……俺、弱いからさ………なにも、出来なくて……』
「謝らなくていいよ! 今行くから!! すぐに行くから!!!」
ヴィンテージ。札狩の敵。悪霊。小指骨折。
詳しいことは分からないが、一大事だということは確かなようだった。
クコとユルミスに電話の内容を説明するのも忘れて、僕は一目散に部屋から飛び出した。
もどかしさをこらえながら玄関の扉を開けて歩道に出る。
息を切らしながらただただ足と手を動かした。助けなきゃ、助けに行かなきゃ。
『………ごめんねチカ……。俺、ほんとーに弱虫でさ……う゛ッ』
「………違う。弱虫は僕だ」
いつも守られてばっかりだった。生前も。死んでからも、ずっと誰かの力に頼って生きていた。
どこかで勝手に相手を見下して、変なマウント取っている自分がいた。
許せない。誰だそいつ。いますぐ陰から引きずり出して、一発決めてやりたい。
自分がどうしようもなく愚か者だって気づいたら、とたんに泣きたくなった。死にたくなった。もう死ねないのに。実態もないのに、誰かによしよししてもらいたかった。
百木周。自分の不注意で車にはねられた、どうしようもなくバカな人間。
今までの経歴。悪魔と天使と死神に頼って生き、さらに弟に甘えて努力をしない愚か者。
……もしウィキペディアにプロフィールが記載されたら、きっとこんな文面なんだろう。
さすがにそれじゃ、カッコ悪すぎるだろ。
「だから、今行くよ、朔ッッッッッ!!!」
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.43 )
- 日時: 2021/10/10 18:17
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: AzYdFFfX)
〈クコside〉
「百木くんっ! 待ちィや百木くんっっっ!!」
光の速さで部屋から飛び出した百木くんを追いかけて、うちは家の扉を乱暴に開けた。
周囲を見回すと、数メートル先の歩道に彼の姿を見つける。
感情に任せて動くとろくな目に合わんってネートル室長が言うてた。
君がもし怪我なんかしたら責任はうちに帰ってくんのや、ただでさえ安くなった給料がこのままゼロになる可能性もあるってことやぞ、ちょっとはうちの気持ちにもN……(以下略)。
何度か声をかけてみたが、走るのに夢中なのか振り向いてもくれない。
もともと何かに熱中すると他の声が聞こえくなる性格で、おまけに無駄に頑固な子や。ちょっとやそっとの言葉なんか聞いてもらえん。
「おいこらっ! 待てって言うてるやろっっっ」
「あだだだだだだだだだ!????」
八雲ちゃんのお兄さんからもらったお下がりのTシャツを、百木くんはこのんで着とる。
蛍光色のピンクや黄色もぎょうさんあったけど、目立つのが嫌いなのか白か黒のもんしか身に着けないので、うちは心の中で『パンダの君』と呼び始めている。
そんな彼の服の裾を引っ張ろうとしたけど、勢い余って代わりに彼の左手首を思いっきり掴むことに。切るのを怠って、魔女のごとく伸びたうちの爪が、彼のか弱い肌に突き刺さる。
「痛っった!! な、なんだよっっ……? あ、痕になってる……」
「……ご、ごめん………。悪気はなかったから……許したってや」
怪我させたらいけんと思ったのに、自分から怪我させてどうするんや。うちのバカ、馬鹿!
暗くなった心を入れ替えようと、両頬を手でぺチンと叩く。
「用がないなら僕は行くよ。朔たちを助けに行かな……」
「待てって言うてるやろ―――――ッッ!!」
べチィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッッッ
あっと気づいたときには、右手が目の前の相手の右頬へと軌道を描いていた。そのまま大きな音を立てて手のひらが直撃。
攻撃を食らった衝撃でよろよろと倒れる百木くん。片やフーフーと息を切らしながら彼を睨んでいるうち。上がった息を必死に整えるも、膨れ上がった気持ちは静まるそぶりを見せない。
「なにすんだよ!??」
「知ってるはずやろ百木くん! あんたは幽霊や! うちや紗明やユルミスとかの天界の住人や、八雲ちゃんみたいな霊感の強い子にしか見えんし触れんのや! その状態のまま戦線へ飛び込んだら……攻撃はすり抜けるかもしれんけど、怪我は保証できん!!」
うちの言葉を受けて、鋭かった彼の目つきがふっと弱まる。何か言おうと口を開きかけた百木くん。でもその口からはなにも出て来んかった。反論できなかったからやろか。うちの言うことが全部正しくて悔しかったからやろか。
うちはな、ずっと君に謝りたかったんや。天界管理局っていうところで働いておきながら、君を天国に連れていけんかったやろ。
百木くんが今こうしてここに居らんといけんのも、札狩をやっているのも、全てはうちが犯した失敗のせいなんや。『地上にいられるんは五分まで』ってルールを無視して長々と喋ってた馬鹿な天使のせいや。
あと……もう一つ。
謝らなきゃいけんことがあるんや。本当はもうちょっと後にでも言えばいいと思っとったけど……それはやめた。
いつも頑張ってるパートナーに、これ以上隠しごとをすんのはなんか違う気がしたんや。
さっきだってあんた、うちが止めなきゃそのまま走り続けとったやろ。感情で動くのが苦手っておこと、よう知っとる。だけどみんなを守りたいという意志のままに君は動いた。凄いと思うで。
「………百木くん。うち、百木くんにずっと伝えたかったことがあるんや。出会ってすぐ、『天界に居れるのは五分まで』って言うとったやろ、うち」
「……う、うん?」
「あのときうち、わざと百木くんを天国に行かせんかってん」
「…………………え?」
「……案内人は、死んだ人を天国に送り届ける職業。でも、連れていける人っていうのはある条件がいるんや。百木くんはその条件に当てはまらんかったから、わざと……連れて行かんかった」
話が呑み込めないでいるのか、百木くんが「え、え!?」と何度も叫ぶ。
彼の表情を見るのが怖くて、視線を地面に降ろす。ありんこが歩道の端を歩いていた。
「本当なの? その話。じゃあ僕に札狩を教えたのも、天国に行けないってわかってたからなの?」
「……未練がある人は連れていけん」
○○市○○庁で、人間の男子中学生一名が車にはねられ死亡した。すぐに向かってくれ。
室長にそう命令されて地上に降りたうちは、百木くんに会った。そして彼と話すうちに、あることに気づいてしまった。
彼には未練がある。もっと生きたい。まだ死にたくなかった。そういう気持ちがある人を送り届けてはいけない決まりになっている。なんの欲もない状態が一番望ましいのだ。
百木くんが天国へ行けないのを知っていたから札狩をすすめた。幽霊で札狩をやっているのは、だいたいが未練を晴らすために地上に残っている子だった。
うちはそのまま帰れたけれど、百木くんが心配だったから彼と一緒に残ることにした。この仕事を始めてから今まで、沢山の人間を担当してきたけれど、彼が一番話が合った。これまで担当してきた人間は年配の老人ばかりやったから、こんな若い子が死んだというのが納得いかんかった。
「……だから自分の未練がなにか分かるまで、未練が晴れるまで、札狩をしてのんびり過ごしたらええと思ったん。幸い八雲ちゃんっていう優しい知り合いも出来たんやし。……でもみんなが仲良うしてるときにこんなこと言うのは、雰囲気壊しそうで………」
ごめんな百木くん。馬鹿なパートナーでごめんな。
九人姉妹の末っ子に生まれて、姉ちゃんみんな頭いい企業に就職して。自分もそのレールに乗せられて案内人になったけど、正直忙しくてあんま楽しめなくて。
でも君の担当になってからめっちゃ楽しかってん。うちのせいで悲しませてんのに……めちゃくちゃ毎日面白くて充実してて……だから、だから………。
両目から生温いものが溢れて顎を伝っていく。お気に入りの赤縁眼鏡を取って、手の甲で乱暴に目元をぬぐう。あかん……しっかりせないけんのに………。
と。
「大丈夫だよ、クコ。もういいよ。ちゃんと、分かってるから」
頭の上に温かい感触が乗っかった。百木くんの手のひらだった。そのままうちの頭を数回撫でる。優しく、ゆっくりと彼の手がうちの髪を撫でる。
「………も、ももきくぅん………!」
「僕、クコがパートナーで良かったよ。……紗明やユルミスがパートナーだったら、絶対うまくいってないよ」
「紗明を手なずけれんのは八雲ちゃんしかおらんやろ。百木くんには無理や」
「だよね」
こらえきれずに吹き出した百木くんにつられて、しばらく笑い転げる。笑っているうちに、胸の中の汚い感情はすっかりなくなっていた。
決めたで。うちの目標。百木くんの未練を晴らすこと。そして百木くんの未練が晴れるまで、彼を守ることや。
姉ちゃんには馬鹿にされるわ、室長には呆れられるわ。後輩のユルミスには気を利かせるわ。どうしようもない天使やけど。大切な人を一人守るくらいはできるやろうし。
「さて、ほな行こうか。朔くん小指折れたんやって? 怪我した奴にきゃくのちぎゃいってやつを見せつけてやrrrrrrrrrんや!」
「………滑舌大丈夫か??」
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.44 )
- 日時: 2021/10/16 15:10
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Xkfg0An/)
閲覧数1200突破ありがとうございます♪
これからもカオ僕をよろしくお願いします!
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〈亨介side〉
黒札で悪霊をよびよせ、攻撃を仕掛けた僕は、戦闘は霊に任せその場を立ち去った。
チームのリーダーであるプリシラことシアには接触だけするようにと命令されていたし、その任務を行うのは自分ではなく御影月菜だったんだけど……やっちゃったなぁ。
コンビニの方を振り返って、小さな溜め息を一つ。
百木周の弟は、どうやら悪霊にパンチを食らわそうとして小指の骨を折ったみたいだ。しばらくは痛みで動けないだろう。ただのスライムだと侮ってはいけない。シアから渡された黒札でよびよせた霊の強度は、鋼より硬いんだ。
死神やそのパートナーの子も、だいぶ苦戦しているみたい。
自分の力で戦わないのは卑怯だって、もしかして思ってるかな。痛いのが嫌なだけだよ。まともにやりあったら、運動オンチの僕はあっという間に倒れてしまうだろうからね。
「……とはいえ、やりすぎちゃったかもな」
誰に言うともなく呟く。
とりあえず、今の状況をパートナーである御影に報告しなくては。彼女は今どこにいるんだろう……? まだ学校か?
電話帳を開き、『御影月菜』の携帯へ発信する。
プルルルル……プルルルル……という呼び出し音が三回なった後、すぐに相手につながることが出来た。
「もしもし? 僕だけど」
『キョーちゃん? 珍しいじゃん、そっちからかけてくるの。何の用?』
カチャカチャと、なにかを操作している音が電話越しに流れてくる。どうやらパソコンでもいじっているようだ。と言うことはもう帰宅しているのか。
「実は………」
これまでのいきさつをかいつまんで説明すると、明るかった御影の声のトーンが次第に暗くなっていく。勝手な行動をした僕に苛立ち始めているのが分かる。顔は見えないけれど、画面の奥で眉をひそめた気がした。
『なんかいつものキョーちゃんらしくないね。感情的にならないタイプなのに。ま、シアには怒られるだろうけど』
「………はぁ……」
「御影は今何してるの? もう家なんでしょ?」
『ウチは動画編集してる。Youtubeにあげるやつ。今日の夕方にあげるから見てね』
御影月菜は、Youtubeとティックトックで美容動画をあげている。その登録者数は両方50万人を突破しているほどの人気。事務所にも入っているほどの、実力派中学生Youtuberだ。
ダイエット、メイク商品紹介などほとんどが女性向けの動画なので、視聴者は女性が多い。そんな動画を男の僕が視聴するのはおかしいし、そもそも興味がない。
「……見るわけないじゃない。男なんだから」
『ケチ。すこしはパートナーに貢献して、視聴回数伸ばしてよ』
理不尽なわがままを突きつけられるのも毎回のこと。イライラしながら電話を切り、もう一度後ろを振り返る。
………このままほっといて、死人でも出たらたまったもんじゃない。
そろそろ黒札を処理して立ち去ろうか。……でも札狩の連中にあっさり負けるのもなんだか釈然としない。
『なんでこんなことしてるの?』
百木朔がそう自分に問いかけて来たとき、内心ヒヤッとしたことを思い出す。
なぜだろう。心の中を読まれたような気がして、一瞬言葉に詰まったんだ。
本当のことを言えば、こういう理由でこんな考えで……というのを打ち明けて楽になりたかった。ヴィンテージに入るまでの経緯を説明して、同情してもらいたかった。
自分の中に変なプライドがあって、そいつが言葉を放つのを拒んでいる。話したところで、どうせ理解ってはくれないだろうという、そんな変なプライドが。
それゆえに、シアにも御影にも、自分の話は今までしてこなかったし、御影がなぜシアに協力しているのか僕は知らない。そういうもんだと思い込み、同じチームのメンバーとして表面上接している。それだけの関係。
数分間考え事をしていた僕は、ある大きな音に反射的に顔を上げた。
ウガァァァァァァァァァァァァッッ
遠くから悪霊の叫び声が聞こえ、声のした方に目をやる。
場所はあのコンビニの駐車場。死神が結界を張り、一般人が襲われるのを防いでいる。結界の中では死神とその主人の少女が、悪霊の集団と対峙していたのだが……。
死神が率先して敵を相手にしているのをいいことに、女の子を狙った一体の悪霊。鋭い爪を持つ、髪の長い女性の霊だった。
そいつは死神の隙をついて、女の子に飛び掛かったのだろう。霊の長い髪に体を縛られて、女の子が悲鳴をあげている。
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁっっ 助けてぇぇぇぇ!!』
『アルジ様!!!』
「…………流石にこれはまずい。早く対処しに行かないと!」
やりすぎたやりすぎたやりすぎたやりすぎた。失敗した失敗した失敗した失敗した!!
人を死なせてはいけないのにっ。僕の管理不行き届きだ。僕のせいであの子が死んだら………とりあえず早く片付けないと!!
慌ててコンビニへと走り出す。百木朔は怪我のせいで、女の子の元へ駆けつけれないようだ。死神も、他の悪霊に攻撃を防ぐのに精いっぱいだ。
敵だから見殺しにしていいわけではない。シアはすぐ、『邪魔な奴らはやっちゃいましょう』とかいうけど。そういうわけにもいかないんだ。
必死に足を動かす。身体が重い。すぐ近くに目的地があるのに、スピードがひどくゆっくりだ。今日は学校の六限に持久走があって、一時間散々走らされたから。あぁダメだ、間に合わない……!
悪霊の髪が女の子の腕や足にどんどん巻き付く。ギュウギュウに締め付けられて、ぐってりとしている。気絶してしまったのだろうか。どちらにせよやばい。やばいのに………!
『う゛……! 助けて、誰か……………!!』
絶体絶命のピンチ。見方全員、助けてくれそうな様子はなく、このまま力尽きてしまうのか。女の子がいくら叫んでも助けてくれる人はいない。
あぁ、私はこのまま死ぬんだ。とうとう諦めたのか、女の子が叫ぶのを止めた。
その時。
「八雲をぉぉぉぉぉぉぉぉぉお、離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっ!!」
ヒーローは、遅れて現れる。いつもヒロインがピンチになった時に、颯爽と現れて拳を振るう。
漫画でみんなが好きなシチュエーション。だから主人公はかっこいい。人々に勇気を与える存在に、誰もが目を輝かせる。
しかし、声の主は特殊能力が使えるわけでも、ガタイがいいわけでもないただの幽霊だった。
ただの、幽霊だと思っていた。
ズバァァァァァァァァァァァァン!!!!!
透けているはずのその腕が、長髪の悪霊その他もろもろを一瞬にして吹き飛ばすほどの右ストレートを放つまでは。
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.45 )
- 日時: 2021/10/21 21:10
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Xkfg0An/)
〈チカside〉
ズバァァァァァァァァァァァァン!!!!!
右手を力いっぱい振り下ろすのと同時に発生した爆風が、八雲を攻撃していた悪霊だけではなく周囲の敵までをも数メートル先へ追いやったのは、自分でもうまく理解しがたい出来事だった。
十数年間ろくに運動もしてこなった人間だ。いきなりスーパーヒーローみたいなパンチを出せるわけがない。
火事場の馬鹿力というべきか、仲間がやられているのを放ってはおけなくて、自然と手が出てしまった。人を殴ったことも喧嘩をしたこともないのに。
悪霊がシュウッと、炎が燃えるような音を立てて消滅していくのをぼうっと眺める。やけにあっけない最期だ。
僕が倒したなんて夢のようだ。
もしかして今、実際に映画のスクリーンの中にいるんじゃないのかな、なんて馬鹿げたことを考えてみる。でも握った右手は今も痛くて、少し汗ばんでいる。夢ではないんだ。
あれは何だったんだ……?
幽霊の身体であんなことができるなんて教えてもらってない。それに、横にいるクコですらあんぐりと口を開けて固まってるんだもん……。
色んなことがいっぺんに起こったせいか、頭がくらくらしている。身体が興奮してなのか、じんわりと熱を持っているのが分かる。
「……おモチくん!」
と、解放されて楽になった八雲が後方から駆けて来た。腕や足に多少の擦り傷はついているけれど、命に別条はなさそうだ。
彼女もまた興奮状態にあるのか、いつもより上ずった声で八雲は言う。
「ありがとう、助けてくれて。終わったと思ってたの。死んじゃうんじゃないかって怖かった。でも、おモチくんが走ってくるところが見えて……かっこよかったよ。とっても」
真っ直ぐな言葉が、胸を突く。
そんな、ただ僕は八雲を怪我させたくなくて、それで。
誤解されるような言い方になってしまい、恥ずかしくなって、ゆるゆると下を向く僕を、八雲は笑って受け止めてくれた。
「おいクコ! あいつンことただのゴキブリと思ってたけど、意外とやるじゃんか。テメエなんかあいつに伝授したんだろ、どうせ。ったくそういう世話焼きなとこ、お前らしいぜ」
「いや、うちは何も……」
珍しく紗明がクコの肩に腕を回す。
いつもなら『やめい!』と叫び距離を取るクコは、腑に落ちない顔で首を傾げる。その様子に紗明は眉をひそめて、人差し指をクコの鼻先に突き付けた。
「はぁ!? じゃ、さっきのは何だってんだ? 俺が相手してた奴ら全員殺すほどの威力! あんな攻撃が出せた幽霊は前代未聞だぜ!?」
「知らんもんは知らん! だってうちはあの子のパートナーや。案内人をやってかれこれ三十年以上経っとる。うちがなんか知っとったら、すぐアンタやユルミスに言うはずやで」
ちらちらと僕を見やるクコの視線が、だんだんと険しくなっていることに気づき、僕はそうっと視線を逸らす。
そんな目で見ないでほしい。僕ですら現状が分かってないんだから。
「チカ……! 来てくれたんだね!」
外にいた朔がこっちへ歩いてくる。ただしその身体は左右にふらふらと揺れていた。
弟が小指を骨折したことを思い出した僕は、八雲と一緒に彼の元へ走る。
「朔! 怪我は!? っ指、めっちゃ腫れてるじゃんっ」
朔の小指には添え木として小枝がハンカチで縛られてあった。ハンカチの隙間から見える朔の細い指は、赤くぱんぱんに膨らんでいてとても痛々しい。
「へーきへーき。ほら、なんともな……い゛っ」
「無理しないで……。ごめんね、もっと早く気づいていれば……」
八雲がシュンと肩を落とす。
女の子が悲しい顔をすると、こっちまで悲しくなってしまう。朔も同じ気持ちだったのだろうか。顔の前で右手を振り、にっこりと笑って見せた。
「ううん。八雲ちゃんがいなかったらもっとひどかったよ。ねえチカ」
「うん、ありがとう八雲」
二人で頭を下げると、八雲もいくらか安心した顔になった。やっぱり彼女は笑った顔が似合う。
しばらく三人で雑談をしたりして、のほほんとした雰囲気が広がっていた。考えごとをしていたクコたちも悩むだけ時間の無駄と思ったのか、数分後にいつも通りの口喧嘩をし出す。
そんな空気の中、とある声が僕たちを我に帰らせた。
「………信じられない。あの数の悪霊を、いとも簡単に………。何かの間違いだ」
佐倉享介。ヴィンテージとして暗躍する、札狩たちの———敵。
享介は独り言のようにぶつぶつと呟いた後、ふっと顔を上げた。その双眸はもう険しくはなかった。ただただ、「なんで?」という疑問心で彼は僕に問う。
享介の中にはもう戦意はなかった。僕のあの攻撃で、くすぶっていた彼の戦意はあっという間に消えてしまったのだ。時の流れに乗って、ろうそくの煙が空気に霧散するように。
「なにをしたの?」
「………なにも、してない」
本当になにもしてない。狙ってやったとかそういうことでもない。
いや、『なにかを自分がやっていたとしても、自分でそれが何かわからない』と言った方が正しいのかな。
『あんたは幽霊や! うちや紗明やユルミスとかの天界の住人や、八雲ちゃんみたいな霊感の強い子にしか見えんし触れんのや! その状態のまま戦線へ飛び込んだら……攻撃はすり抜けるかもしれんけど、怪我は保証できん!!』
おかしい。
普通、僕のパンチは悪霊の身体をすり抜けるものだ。幽霊の身体が透明であるなら、攻撃だって当然。
自分の拳に視線を移す。手のひらには、道路が透けて移っている。
あのとき、攻撃が通ったってことはひょっとして、あの瞬間だけ僕の身体は実態を持ったってことなのだろうか。もっと簡単に説明すれば、漫画とかでよくある『実体化』みたいな。
そんなことがあり得るのだろうか。幽霊は、自分の意志で実体化出来たりするものなのか? それがたまたまクコは知らなくて、僕に伝えることができなかったってことなのか……?
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.46 )
- 日時: 2021/10/21 21:20
- 名前: りゅ (ID: B7nGYbP1)
素敵な文章力ですね!( *´艸`)
応援しているので執筆頑張って下さい!
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.47 )
- 日時: 2021/10/23 18:32
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Xkfg0An/)
>>46 りゅ様
わー、ありがとうございます!
文章力は日々研究しているところです。これからも頑張ります!
りゅ様の小説も時間のある時にじっくり読みますね。これからもカオ僕をよろしくお願いします!
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.48 )
- 日時: 2021/10/26 21:25
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Xkfg0An/)
〈八雲side〉
その出来事は夢のようだった。
一瞬の出来事だったけれど、鮮明に目に焼き付いている。瞳を閉じればあの時の映像が流れだす。
悪霊に手足をギュウギュウに縛られ、口も塞がれ、完全に身動きが取れなかった。
どれだけ叫んでも攻撃を止めてくれなくて、唯一の頼みの綱の紗明ですら足止めを食らっている。朔くんも外に出て行ったきり戻って来ない。
絶体絶命の状況に、自然と冷静になった。私の十二年の人生はここで幕を閉じるんだと考えたら、声を上げる気力もわかなくなった。
そっと目を閉じる。今この瞬間に据える息を沢山吸っておこうと、くちびるを開く。
視界がぼやける中、誰かの足音が不意に聞こえた。
「八雲ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
大声で名前を呼ばれて、反射的に顔を上げた。
諦めたはずなのに、私は声の主の姿を探そうとなんとか首を伸ばした。
数メートル先の歩道に、彼の姿を見つけた。
そのとたん、私の両目から大粒の涙がこぼれる。
百木周くんがいた。おモチくんと呼んでいる、百木周くんがいた。相変わらず、あんちゃんのお下がりのTシャツに身を包んでいる。
いつも穏やかな顔が、霧ッと引き締まっていた。こっちへ精一杯腕を振って駆けてくれている。
嬉しかった。陳腐な言葉でしか言い表せないけど、とても嬉しかった。
心臓がぐうって鳴って、押し込めていた色んな感情が、あと少しでバクハツしそうだった。
ありがとうって言いたかったんだけど、彼が放った一撃が敵を一掃しちゃったから、その気持ちは胸の中に隠れてしまった。
思わず目を見開く。
こんなに細いのに。なんで………?
おモチくんの意外な力の出現は誰も予想してなくて、ヴィンテージの佐倉くんやクコさんも、狐に包まれたような表情で立ち尽くしていた。
「………つまり、僕は自力で実体化したってこと……?」
当人のおモチくんが、誰に言うともなしに呟く。
実体化……?つまり周くんは、人に見える状態と見えない状態を、自分で無意識にオンオフできるようになったってことなのかな?
もしそうなら凄く便利な能力だと思うし、札狩にも応用が利く。攻撃も防御もできる幽霊はまさしくチートだ。雑魚級の霊なんて簡単に退治出来ちゃいそう。
でも……そんなすぐに強くなられると、対応に困っちゃうよ。
生まれつき霊感が強いから、紗明の姿も彼の姿も見えた。人に視えらんもんが自分に視えとる。特別な感じがして、勝手に浮かれていたときもあった。
実体化できるのだとしたら、霊感がある人しか見えないという現象もなくなるわけだよね。透明化を切れば、普通の人にだってまるで生きているかのように思わせられる。
じゃあ、私の立ち位置はどうなるのだろう。
幽霊だからって言う理由で家を貸してたけど、その必要もなくなるんだろうか。人の世話がいらなくなって、私との接点も消えてしまうのかな。
いやだな………。おモチくんの全てを知っとんのは、私だけのはずだもん……。
あれ、この考えまずいかもな。でも、実際そうだし……。ああもう………。
「アルジ様? どうしました? 腹でも痛いんすか? お腹ピーピーなんすか?」
しばらくグルグルと頭を働かせていた私の顔色はそうとう悪かったようだ。紗明が心配して肩に手を当ててくれたが、考えごとに夢中だった私はその声が全く届いていなかった。
「あっ……アルジ様? す、すんません俺、ふざけて言っただけで別にそんなつもりじゃ……」
怒ってスルーしているのだと勘違いした紗明が、顔の前でわたわたと両手を振る。
紗明は毎日毎日、私にとことん尽くしてくれる。たまにうざいけど気にかけてくれて、笑わせてくれて。
私も、おモチくんとそんな関係になりたいな………。
でもおモチくんは優しいから、誰にだって分け隔てなく接しているんだろうな。だから弟の朔くんにもあんなに慕われてる。普通だったら兄弟喧嘩したりするはずなのに、あの兄弟はそんなことが全然ないから。
「僕、もう帰る。なんかやられちゃったし、じゃあね」
急に佐倉くんがそう言って回れ右をする。
つい数分前まで戦意をみなぎらせていた佐倉くんだが、急展開に振り回されて戦意を失ったようだ。離れていく背中を見送りながら、取り残された私たちはお互いの顔を見つめあう。
おモチくんは思案気な表情で俯いていて。
クコさんは暗い気持ちを紛らわそうと鼻歌を歌っていて。
紗明はぼうっと夕焼け空を眺めていて。
朔くんは、そっと私の元へ近寄ってきて、耳打ちする。
お兄ちゃんとは反対に、感情に任せて動く朔くん。言いたいことははっきり言う性格の彼が、わざわざこんな行動をとったそのわけは。
「……………チカが離れていくみたいで寂しいの?」
「っ」
たったそれだけのセリフで、彼は私の心情を完璧で表現した。
何も言ってないのに。目の前に居る人間がエスパーなんじゃないかと、私はまじまじと朔くんを見つめる。
「……なんで、わかるの?」
「弟だから」
朔くんはにっこりとほほ笑んだ。
おひさまのように無邪気な笑顔をする子だということは、これまでの付き合いで把握している。
でも今の笑顔は純粋なものではなくて、どこかいびつな感じがした。
「離れていったら、多少は自由になれるかもしれないけど、やっぱり寂しいよね」
あぁ、芯が強いんだ。この子は心の芯が強いんだ。
兄の姿が見えているけれど、本当はもう死んでいて、黒札関連の出来事がなかったら二度と再会することはなかったと分かっているから。
朔くんは心のなかでは何回も何回も泣いているかもしれない。けど、神様がくれたこの奇跡の時間を精一杯身体で楽しんでいるんだ。「お兄ちゃんと話せること」ということが、朔くんにとって何よりの奇跡なんだ。
「みんな、なんか、……ごめんね。ヘンな空気作って」
「別に気にしてへんよ。実際百木くんがあそこで一発決めてくれんかったら、八雲ちゃんは死んどったで。そーゆー意味ではまさしくあんたは、八雲ちゃんのヒーローやん!」
おモチくんがそろそろと周りの面々の顔色を窺う。
なんと返そうかとみんなが迷うなか、一番最初に声をかけたのはやっぱりクコさんだった。
持ち前の明るさでみるみるうちに場の雰囲気を和ましていく。暗かった場がいっきに明るくなる。クコさんはやっぱりすごい。
「それにそれにぃ、あのシチュエーションだったら、八雲ちゃんも惚れていいと思うしぃ」
「へっ!?」「はっ!?」
おモチくんと私の声が重なる。
双方とも顔が真っ赤っかかだ。熟れた林檎みたいになった私たちを、なおもクコさんはからかいまくる。
「うちはお似合いやと思うで。なぁ紗明!」
「はぁ!? うちのアルジ様とこんなゴキブリがいちゃつくなんて見たくもねぇよ!」
はい、紗明は通常運転でした。
ちょっとでも弁解してくれると期待した私が馬鹿みたい。
「うわロリコンッッ。 そんなんだからあんたには人が寄って来ないんや。ざまあざまあ」
「お前みたいにピーチクピーチク鳥みたいにやかましい奴もだよ! チェケラッチョ」
いつものごとく、二人が口論を始める。なんでこの二人、こうも毎回そりが合わないのかなあ。
まあ、二人のおかげで沈みかけていた心が少しだけ上を向いたかもしれない。
この先何があるのか分からないけれど、私には沢山の仲間がいる。みんな癖が強くて大変だけど、その分裏で色々と抱え込んでいる人が多いことを最近知った。
だからきっと、この先も大丈夫だよね。
そういえば、ユルミスちゃんが解雇されたんだっけ。ユルミスちゃんも何かあるのだろうか。それと、ヴィンテージの佐倉くん。彼にもきっと、ヴィンテージに入ろうと思ったきっかけがあるはずだ。
いつか、知れたらいいな。誰だって色んなことがあるんだから。
だからどうか、今日の夜みんなが安心して眠れますように。