コメディ・ライト小説(新)
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.51 )
- 日時: 2021/10/28 22:06
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Xkfg0An/)
第3章突入だぁぁぁヤッホー!!
新キャラルキアを含め、新たなキャラが沢山登場……するとかしないとか!
むうは通信制の高校に通っているのですが、学校がない日はこうやって更新しに来ます。
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〈紗明side〉※朝モード
「んにしても急ですね。できればチカさんも連れて行きたかったのですが……」
きょろきょろと広い構内を見回す。
床はガラス張りになっていて、綺麗に磨かれている。天井は高く、大きなシャンデリアが等間隔で吊るされてある。毎回、あれが落ちたら死ぬんじゃないかと馬鹿なことを思う。
日付は日曜日の午前十一時すぎ。
場所は変わって、ここは天界にある俺たちの仕事場・天界管理局のロビーだ。室長からとうとう呼び出しを食らったクコ・ユルミス・そして自分と、「自分も行きたい!」と駄々をこねた朔さんが、今日ここを訪れている。
チカさんは天国には行けないし、アルジ様は友達と映画を見に行く予定とダブルブッキングして今回は諦めることになった。
クコに言わせると、この面子はなにかと心配だとのこと。彼女の考えだと、メンバーに俺が入っていたらどんな場合でも不安になってくるらしい。
そんなに頼りなく見られてるのか……?
「はぁぁぁぁ嫌だぁぁぁ行きたくないぃぃぃ、とうとううちまで解雇になったらマジで人生つむわ……あぁ時間よ戻れ……」
さっきからブツブツブツブツ小言を並べているクコは、室長からの呼び出しに相当参っているようだ。仕事もきちんとこなせない、自分勝手なことばかりすると今まで散々喝を入れられたせいか。
眼鏡の奥の瞳もどんよりと暗い。
「だ、大丈夫だよ。その、粘土室長?」
「ネートル室長」
「その人は厳しいけど、いい人なんでしょ。例えるなら運動部の顧問の先生とか。練習はきついけどその分生徒を思いやってる、そんな感じ」
確かに運動部の顧問は、きつい練習カリキュラムを組み立てて生徒の体力の向上を図っている。
生徒からしてみればたまったもんじゃないが、先生なりに教え子たちを支えようとしているのだ。
朔さんが、落ち込むクコを励まそうと必死になっているのが可愛い。しかしクコは一向に明るくなる気配はなく、口を尖らしながら愚痴を漏らした。
「きついもんはきついやん。それに、うちだけじゃのうて紗明も呼び出されとんのやで。つまり」
「つまり?」
「説教が倍になるんやぁぁぁぁぁぁぁ! もう嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
動物園のゾウ並みに野太い声で叫んだので、通行人が一斉にこちらを振り返った。人々の視線が一気にクコに当てられ、横にいたユルミスが代わりにぺこぺこと頭を下げる。
「パイセン、気持ちは分かりますけど、ちょっと落ち着いて。誰もがそうユルみたいにはなりませんから」
「うぅぅぅ、それが一番こたえんのやユルミスぅぅぅ……変にプレッシャーかけらんといて……」
「うわ、めんどくさい……」
ユルミスが呆れるのもまた珍しい。
まあ無理はないだろう。クコのお給料は毎月下がって行ってるのは事実。俺よりも、もらう金額が少ないので相当お財布はピンチなんだろう。
がやがや叫んでいてもキリがないので、受付にて手続きを済ませ、ベルボーイの準備が完了するまで待つことにする。
ホテルと同じような仕組みをとっていて、名簿に署名したあとは、荷物を持っくれるベルボーイ(女性の場合はベルガールと呼ばれる)が部屋まで案内してくれるのだ。
数分後、係員用の扉から黒髪ロングのベルガールのお姉さんが姿を現した。パリッと糊のきいた制服を丁寧に着こなしている。
「ベルガールを務めるシャルロットです。お荷物、お預かりします」
「ああ、はい」
俺の荷物はポシェットだけなので自分で持てたけど、ユルミスのスーツケースや朔さんのリュックは流石に重いのでシャルロットさんに預ける。
シャルロットさんはカートに荷物を置くと、取っ手をおして先に廊下を進もうとし………。
「シャル姉、調子はどーですかーっ?」
水色のくせ毛の髪の男の子――ユルミスと同じ位の年齢ですかねーーが、いきなり廊下の曲がり角から飛び出してきた。
髪色と同じ色のマントを学ランのような服の上から羽織っている。目は吊り目気味。
謎の男の子は。か弱いベルガールの身体をぎゅうっと後ろから抱きしめる。
「!!」
積極的なスキンシップに、俺達は言葉を飲み込む。
こちらの態度など彼にとっては小さなことみたいで、男の子は心行くまでシャルロットさんにスリスリしたあとは自分から手を離し、きょとんと首を傾げる。
「この人たちが今んとこのシャル姉の担当?」
「セシル!! 仕事はどうしたのです! 隊長に言いつけますよ!!」
セシルと呼ばれた男の子は、にひひっと無邪気に笑った。
この、幼い言動……朔さんに似ているけど、朔さんよりかは精神年齢が低くみえる。より幼稚な、自由奔放って感じだ。
「いーじゃんいーじゃん。オレ、今休憩時間なんだよねーっ」
「休憩なら保安課の仮眠室でしなさいよ。ここはロビーですよ!? お客様の邪魔でしょう」
腕を組んで、至極もっともなことを言うシャルロットさん。
こういうことは日常茶飯事なのか、口調はゆったりとしている。
「保安課……!? こんな子が? 試験で不採用にならなかったっちゅーことは、頭だけはいいんや」
「試験? 知らね! なんか、解き終わって時計見たら十分しかたってなかった!」
驚異の天才やないかい、と心の中で突っ込む。
俺だって札狩の実技試験に合格するまで3年近くかかったのに、こんな小さな野郎が……しかもこんな中途半端な奴が10分で!
おっといけない、本音が漏れてしまった。
エレガントに行かなければ。そう、Elegantに。
「シャル姉疲れてんでしょ? ほうれい線が昨日よりくっきりしてるよ」
んまっ!! こんな奴が保安課なんて絶対おかしいだろォ! と心の中でもう一度……(以下略)。
ほうれい線がくっきりだなんて、失礼な言葉をよりによって若い女の人に使ったりなんかしたら……。
「……そうですね! 丁寧に教えて下さりありがとう!!」
「でしょっ。オレって偉いでしょー。撫でてよー。ねえ撫でて撫でてー」
ワンコ系男子という言葉があるが、セシルの場合は残念ワンコだ。
その証拠に、お姉さんがやけにニコーッとした笑みを浮かべているのだ。しかも困り眉で。
怒鳴らないのが、流石ベルガール。
おい少年。俺にまで引かれるお前もそうとうやばいぞ、わかってるのか……?
「……あ、そうだぁ。じゃあオレ休憩中暇だし、今回だけオレがこの人たちを案内するよ」