コメディ・ライト小説(新)

第壱話「出る杭は飛び出る」 ( No.2 )
日時: 2020/08/05 16:15
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

〈学校、オカルト部部室〉

 俺は何をやらされているんだろう。
 右手にロウソク、左手に手紙の入った封筒。
 こういうことをしろと命令した、内海うつみあかりは、仁王立ちをして腕を組んでいる。

「えっと、これって、罰ゲーム、だよね。何?」

 毎度恒例、オカルト部では部活の最後にトランプゲームをして、負けた人が罰ゲームをやって解散という誠におかしな決まりがある。
 今日は俺。最後の最後でジョーカーを引いてあっけなく負けたのだ。

「ああ、折角書いた手紙が自分の手によって燃える、というスリルを味わってもらいたいんの、分からん? 先輩とウチは同志やって思うたのにぃー」

 関西から引っ越してきた彼女の関西弁は、関東で聞くと独特だ。
 テレビの向こう側で聞いていた方言が、間近で聞けるという複雑さ。

 そしてなんだよ、さっき書かされた手紙を自分の手で燃やす罰ゲームって。
 スリルどころか、虚しすぎて泣けてきそうだよ。

「やるんだったらもうちょっと、キツイ方がいいと思います」

 一年生の福伊真琴ふくいまことが、部屋の壁にもたれながら小さく手を上げる。

 おい、キツイって何だよ。怖い!
 それに、皆には見えてないかもしれないが、俺の横には黒い犬がいて今ケラケラ笑っている最中だから! 
 使い魔に笑われる主が俺だよ。

「えぇ、真琴ちゃんも分からんの?もしかするとウチだけ? ああ、皆にはわからんのや、これがラブレターだったらと思うたら寂しくなってくるこの気持ちなんかぁ~!」

 あかりがずっとワアワア喚いている。
 それは少女マンガみたいな展開にあこがれているお前と、恋をしているリア充にしか分からないと思うぞ。

「わあ、あかりちゃん泣かないで。じゃあ僕と外行って話そう? ね☆」

 きた。異性に人気なモテ男で、ついでに俺の親友、細波蓮さざなみレンの必殺技、甘い笑顔と口説き口調。これでコロッといかれる女は多いと聞く。悪魔だ。

「あのー、手紙もうもう燃えたので、上がります」
「はい、お疲れ様」

 いつも余裕、右目の眼帯がなぞな部長、真野翼まのタスクがのんびりと言う。
 うーん……もうちょっとなんかリアクションあってもいいんだけどな。

 もう付き合っていられないので、さっさと帰らせてもらおう。
 俺こと高町筑波たかまちつくばは黒毛の犬の使い魔・利犬りけんを引き連れて、部室を飛び出した。