コメディ・ライト小説(新)

Re: 元勇者、居候になる ( No.1 )
日時: 2020/08/10 19:34
名前: 蒼星 ◆eYTteoaeHA (ID: 69bzu.rx)

【注意#元勇者達の過去はシリダク板くらい重いです。ここまで重いのはここだけなので許してください。転生後もちょくちょくシリアス出てきます】


#プロローグ

「すまない、すまない……魔王。
私は貴方に何もしてやれなかった……恩返しが出来なかった……」

とある世界の魔王城。大広間で手向けられた花々の前で涙を流し、永遠のように謝罪を述べる一人の人物が居た。
その人物は勇者である。

勇者。それは人類の希望?人間の道具?
______否。優しき心を持ち意思を持つ道具である。





数年前。

人間は自分達と違う者を恐れる。自分達より強く姿が違う魔族を恐れる。彼らは魔族を排除しようと勇者を“造り上げた”。

しかし。勇者は人間達の思考通りには動かなかった。何故なら、本来人工人間として無い筈の感情が生まれたから。

勇者に感情が生まれた切っ掛けが……魔族達である。魔族達は家族のように互いを大切にしていた。魔族の女王たる魔王は、勇者の『道具として造られた』という事実を悲観し、魔族を攻撃をしてきた勇者を許した。どう生きるか自分の意思で選んでほしい、それでも自分達と対立するならそれで構わないから、と。それまでは味方でいるから、と。
魔族も魔王も、とても優しかった。勇者はそんな彼女らの温もりに触れて、感情が芽生えたのである。彼女達を守りたい、恩返しがしたい、と。

しかし。魔王は人間の何者かによって卑劣な手段で命を落とした。





______そして現在に至る。
手向けられた花は魔王への供え物。勇者の涙の訳は魔王の死。

「次があるとすれば、その時は平和な世界で、貴方と笑い会いたいものだ」

勇者は1輪の赤い花を手向け、そう呟いたのだった。





____________
______


あれから幾つの年月が経ったのだろうか。
つい先月。勇者は身体の劣化______人間で言う寿命による老衰で命を落とした筈だ。
なのに……

「身体が動く、だと……!?意識もはっきりする、が。ここは一体どこだ……?」

勇者は見知らぬ場所で目覚めたのである。痛みや苦しさはなかったが、尋常じゃない身体への違和感があった。
混乱していたが、摩擦音で部屋の扉が開こうとしてるのに気づき音がした方向を見る。そして、開かれた扉から何者かが部屋に入ってくる。

その人物は……

「あ、勇者!目覚めたんだ!」

死んだ筈の魔王であった。