コメディ・ライト小説(新)

第二十六話 俺の拳 ( No.27 )
日時: 2020/09/04 00:49
名前: あお (ID: ikU4u6US)

「グゥゥァアアアア!」

 「まだまだ!」

 竜化したクロとゴールドドラゴンがぶつかりあっている。他の四天王達も補助に回り、俺がスキルを撃つための時間稼ぎをしている。ゴールドドラゴンの攻撃では死にはしないだろうが、長引けば大きな怪我ぐらいは負うかもしれない。

 「急がないとな……。」

 今回使うスキルは『奈落タルタロス』ではない。あのスキルは強力だが効果範囲が広すぎる。

 だから今回はコレを使う。

 「『強化ブースト』──」

 『強化ブースト』はただの強化魔法。それだけでは、致命的な攻撃は与えられない。だかそれを『重ね掛け』するとなれば話は違う。十回、百回、千回、十万回、一億回──

 何億回、何兆回も強化された俺の拳は太陽の如く白く光っている。

 「お前ら、どいてろ!」

 四天王達は俺の言葉を聞くと一瞬で場を離れる。よほど俺の大技が怖いらしい。

 「行くぜ~!」

 ゴールドドラゴンは突然飛び出してきた俺に一瞬戸惑うが、すぐに俺を迎撃しようと攻撃の構えをとる。しかし、俺が拳を降り抜くほうが一瞬早かった。

 「『オエントリフ・トレノ』!」

 ──音は無かった。降り抜かれた拳からは衝撃と呼ぶのも生温い、『嵐』が放たれる。その余波に目も開けられなくなり、慌てて腕で顔を防御する。

 ──その直後、置いてきぼりにされた破壊音が響き渡る。地上で雷が炸裂したかのような轟音が鼓膜を打つ。

 ──辺りに吹き荒れる『嵐』の余波も収まり、目を開けられるようになると、そこには──

 体のほとんどが吹き飛んでいるドラゴンの死体と、水平線まで続く破壊の足跡が残されていた……。