コメディ・ライト小説(新)

第三十二話 ラノベの主人公にはなれないな ( No.33 )
日時: 2020/09/11 20:50
名前: あお (ID: ikU4u6US)

 今俺は森の中を歩いている。スキルで空を飛んでも良いのだが、人間に見つかったら面倒くさそうなので、歩いていくことにした。

 「前にクロの背中に乗ったときは、こっちの方角に人族の領地があったと思うんだけどなー。」

 はぁ、と溜息をつきながら歩いていると、話し声が聞こえてきた。

 「お! 人がいるのか?」

 俺は話し声が聞こえてくる方へ走っていった。

 「さすがにいつまでも森で迷子ってシャレになら──」

 人の気配があったので声をかけようとするが、その光景を見て思いとどまる。別に話しかけるのが怖いからとかそういう理由じゃないんだよ?

 確かに人はいたんだよ?本当に人がいるんだけど、盗賊っぽいヤツもセットなんだよ!

 「完全にテンプレじゃねぇか!」

 俺の目の前には、何かの紋章がついていつ馬車とそれを囲む盗賊っぽいの。あとは馬車を守ろうとしている騎士達がいるわけで……。

 「どうしよ、コレ……。」

 あいにく俺はどこぞのラノベの主人公のように、こういう場面を見てすぐに助けに入れる程肝が据わってるわけでも、正義感に満ち溢れているわけでも無いのだ。

 と、俺が傍観していると、じょじょに騎士達が優勢になっていった。

 「よし、ほっとこう!」

 俺が手を出さなくても、騎士達が勝手に倒すだろ!

 街がどっちかは知りたいところだが、背に腹は代えられない。こういう人間同士の争いに関わると、ロクなことにならないと相場が決まっているのだ!

 「さて、別のところに行くか。」

 と俺が回れ右をすると、ちょうど目の前に盗賊(の援軍)がいた。

 いやー、バッチリ目が合っちゃったね☆ そんなに見つめられると照れるなー。(現実逃避)

 「あ、どうもー。」

 頑張れ、俺! 爽やかスマイルで乗り切るんだ!

 「こっちにもいやがった!」

 「殺せ! 皆殺しだー!」

 ダメだったー。あれ、こいつら魔族なのかな?いつものやり取りと変わらないぞ?

 目の前の盗賊の声に騎士達や戦っていた盗賊までこっちを向く。

 それは時間にしてコンマ数秒の硬直。だが、何かもう色々限界に達した俺はその僅かな隙を逃さなかった。

 「『稲妻暴雨ボルッテク・ストーム』」

 上空に魔法陣が展開され、その魔法陣から文字通り『雷の雨』が降り注ぐ。

 スキルの性質上、俺が敵と認識した盗賊達にしか当たっていないし、当たっても気絶する程度ですむ。さすがにこの年で殺人犯は勘弁だぜ。

 そして、雷の雨が降り止み、そこに残されていたのは騎士と俺と馬車に倒れた盗賊達だった……。

 「あー、とりあず、こんにちは?」

 「あ、あぁ、こんにちは……。」

 あの、その化け物みるような目で俺を見るのは、やめてくれませんかね?結構心にダメージ入るから。