コメディ・ライト小説(新)
- 第三十九話 さみしいでしょ? ( No.40 )
- 日時: 2020/09/20 20:32
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
「何なんだよ、お前! 急に出しゃばってきやがって」
「その状況を見かねただけよ。多対一で弱者を虐げる。これほど見苦しいものはないわね」
少女の目は鋭い光を宿し、少年を威圧していた。
「……クソッ、行くぞお前ら!」
ジッと見つめてくる少女の目に耐えかねたのか、少年と取り巻きはケイを突き飛ばし、回れ右をして去っていった。
それを見届けた少女はこちらに振り向き、ケイに向かって手を差し伸べた。
「大丈夫?」
差し伸べられた手を取り、少女の顔を見上げたケイは改めてその美貌に見惚れた。
髪は夜空に浮かぶ満月のような薄い金色。
瞳は大粒のアメジストをはめ込んだかのような紫。
それらの整ったパーツを緻密に組み立て上げた顔立ちは、まさに一種の芸術と言っても過言ではなかった。
「私の顔に何かついているのかしら?」
どうやら、まじまじと見すぎてしまったらしい。ケイは少女に心配そうな顔をさせてしまった。
「ううん、そんなことないよ。」
ケイは慌てて否定する。
「とりあえず……助けてくれてありがと!」
「見苦しかったから、口出ししただけよ」
当たり前のことをしただけ、という調子で少女は答えた。その顔には誇らしさや照れもなく、ただつまらなさそうな表情を浮かべており、ケイを困惑させた。
「君は……怒ってるの?」
「そういうわけではないけど……」
「じゃあ、なんでそんなつまらなさそうな顔をしているの?」
「……同族嫌悪ってやつかしら。力で弱者を虐げることが端から見ているとどれほど醜いものだと実感したのよ」
「ふーん。何かすごいねー」
ケイの見当違いな答えに少女は呆れた顔をする。
「わからないなら、わからないと言えばいいのに……」
「そしたら、さみしいでしょ」
「寂しい?」
「うん。自分を理解してくれる人がいないのは、とってもさみしいことなんだよ」
ケイの言葉に少女は目を見開く。
「ってメタルマンが言ってた」
続く言葉に見開かれた目は呆れたように細められた。
「一応聞くけど……メタルマンって誰?」
「日曜の十時に悪い怪人をやっつける正義のヒーローだよ!」
「あ、うん。大体わかったわ」
「そして、ぼくはメタルマンさえ超える正義のヒーロー、佐藤 ケイだ!」
「そ、そう……」
「それで、君の名前は?」
「……ベル」
「よろしくね、ベル!」
名前を呼ばれた少女──ベルはくすぐったそうに笑った。