コメディ・ライト小説(新)
- 第四十二話 少女の質問、決まる覚悟 ( No.43 )
- 日時: 2020/09/26 00:26
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
「それで話したいことっていうのは?」
「うん、それはね……ケイのこと、どう思ってるのか聞きたいんだ」
「ケイのことを、どう思ってるか……?」
「そうだよ。ベルちゃんがどう考えてるのかは知らないけど、ケイにとってあなたは大切な存在なの。……そう、私よりも……」
「大切な、存在。私が?」
「ケイにとってあなたは憧れの存在であり、愛慕の対象であり、かけがえの無い親友でもある」
莉奈は胸の内にため込んだものを吐き出すように、言葉を発する。
「何を言って──」
ベルの困惑した顔を余所に莉奈は言葉を吐き出し続ける。
「きっと私がいなくなってもケイはケイとして存在し続ける。だけど、あなたを失ったら、ケイは何かを失くす。ケイのとってあなたは自らを構成する部品の一つなのだから」
「…………」
莉奈の吐き出した言葉を受け、ベルは茫然となる。
「私が……彼の……大切な……人」
「だから、ベルちゃんがケイのことをどう思ってるか知りたいの」
「私は……私にとってケイは……大切な子、かしら……」
「大切な子?」
言葉を探すかのように視線を宙に彷徨わせ、頷くベル。
「あの子の笑顔を見ていると、悩んでいたこともどうでも良くなるの。何も考えずに笑ってられるあの子が羨ましい……違うわね、守りたい、かしら」
「守りたい……」
「あの子にはこのままでいて欲しい。あの無邪気に笑ってる、あの笑顔を守りたい。私のように、暗い面に染まることなく歩んでほしい……」
「そっか……。ベルちゃんって良い人なんだね」
「良い人? ……そんなことを言われたのは初めてね」
「え? ……まぁ、いいや。私はこれで帰るね。変な質問だったけど、答えてくれてありがとう!」
そう言って莉奈はベルの前から走り去る。
「本当に、ありがとう。覚悟が決まったよ」
……少女の呟きは、ザワリと吹いた一筋の風に流されていった。