コメディ・ライト小説(新)

第四十三話 最悪の選択肢 ( No.44 )
日時: 2020/09/28 22:41
名前: あお (ID: ikU4u6US)


 別れ(それ)はデパートでの出来事だった。

 ケイの希望で、ベルとケイはデパートにいた。別段、深い理由があったわけではない。莉奈がデパートで買ったというお菓子が美味しかった、というだけであった。

 「ケイ、あまりキョロキョロしないの」

 「えー、だってここすごく広いんだもん」

 「デパートに来たことぐらい、何回もあるでしょ?」

 「むー、ベルといるとまたちがうんだもん」

 「…………」

 「どうしたのベル? 顔が赤いような……」

 「いいから、早く行くわよ!」

 「わ、待ってよー!」

 そのとき、聞き慣れない甲高い音が鳴り響いた。その直後、デパートの数か所から火の手が上がった。

 「か、火事だー‼」

 だれかが叫んだと思うと、人々は我先にと逃げ始める。鳴り響く警戒音アラートは人々の混乱をさらに加速させていた。

 「ケイ、私達も逃げないと!」

 「う、うん!」

 ベルはケイの手を引き、出口へと向かっていく。だが、火はどんどんと燃え広がっており、退路が断たれるのも時間の問題だった。

 「どうしよう、ベル。火が……」

 「……大丈夫」

 ベルはそう言って手を前にかざす。

 「え?」

 一瞬、ベルの手が光った。そのままベルが前に進むと、道を開けるかのように炎が退いていった。

 「これって……」

 「話はあと! 早く進むわよ!」

 「う、うん……」


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 「あそこを出れば、外に出られる筈よ!」

 「…………待って」

 「え?」

 「声が聞こえた気がする……」

 「向こうからかな」と言ってケイは来た道を指す。

 「何言ってるの! 戻ったら火に囲まれてケイも死ぬわよ! 私の力だって万能じゃないんだから!」

 ベルの言ってることは正論だった。

 ケイの聞いた声とてあくまで、『気がする』なのだ。いない可能性もあるし、もう手遅れの可能性だってある。

 「……ぼくは正義の味方になるって決めたんだ」

 だが、ケイは告げた。愚かで、偽善で、無知な、最悪の選択肢を取った。……取ってしまった。