コメディ・ライト小説(新)
- 第七話 王女の夢 ( No.8 )
- 日時: 2020/08/24 01:05
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
ごねるクロ(名前覚えんの面倒だから、適当につけた。由来は竜になったとき鱗が黒かったから。)をぶん殴り、王女のとこまで案内させる。
「……テンプレかよ……。」
……王女は牢屋に閉じ込められていた。金髪に碧眼の美少女は、その古びた牢屋に鎖で繋がれていて、完全にテンプレ。誰だよこれやったヤツ。
なんて、不謹慎な事を考えていると、王女はゆっくりと目を開け、そしてその目を見開いた。
「誰⁉」
「あぁ、いや──」
……待てよ? 俺、魔王だよな。解放しに来たって言われても信じるか?
……どうしよ。信じてもらえなくても、事実をを全部話すっていう手もあるが「頭のおかしいヤツ」って思われるのがオチな気がする。それだけならまだしも変に勘繰られて、人間との関係が悪化するのは避けたい。どうすっか──
「喜べ、人間! 貴様は虫けらの分際でありながら、我らが魔王様に拝謁できたの──、ギャ!」
俺は目の前のバカを全力でぶん殴る。
「何お前、余計な事言ってんの⁉」
「だ、だって……。」
「だってじゃねぇ‼ お前バカ! 本ッ当、バカー‼」
「ま、魔王⁉ 一体何故……? はっ、まさか私を傀儡として送り込み、国を内部から崩壊させようと⁉」
「ほら、見ろぉ! テメェのせいで変な勘繰りされてんじゃねーか!」
「べ、別に人間からどう思われようと構わないのでは?」
「構うわ! テメェ本ッ当、人の話聞かねぇな⁉ 『人間と仲良く』って言ってんだろうがーー‼」
「に、人間と仲良く……?あなたは魔王なのよね……? ──というか、その姿は……人間⁉」
「うっ! どうすんのこれ……?」
~十分後~
俺と王女は竜化したクロの背中に乗って飛んでいる。さながら気分は飛行機だ。
……え?王女への説明はどうしたのかって?
…………沈黙である。つまり、俺は一切王女と会話してない。王女からすれば意味不明でしかないだろう。急に牢屋から出されたと思えば、無言で竜の背中に乗せられ、空を飛ばされているのだから。
だが、沈黙は金、雄弁は銀である。誰だって皆、話したくないことの一つや二つあるのである! 決して、三次元の美少女と話すのはゲームオタクの俺にはハードル高すぎる、という理由は無いのである!
「ねぇ! 説明ぐらいしたらどうなの⁉」
「言語が理解できない。」
「嘘! 絶対理解してる! そんな冷や汗ダラダラ流して言っても、説得力無いから!」
「……現在この番号は使用されておりません。」
「適当な事言って、誤魔化そうとしたって無駄だから!」
「……魔王様。この人間、この辺りで振り落としても良いのでは?」
「……お前の頭に『学習』って機能ついてんのか?」
「……分かりました。」
「やっぱ言葉通じるじゃない! ねぇ!」
「だぁー、もう! 俺は何も話す気は無い! お前は家に帰す! それで良いだろ!」
「むぅ……。でも、私はあなたと話がしたいの!」
「話? 何を話すっつーんだ?」
「……あなたはさっき、『人間と仲良くしたい』って言ってたよね?」
「まぁ、そうだな。」
「私も! ……私も同じ夢を持ってるの!」
「夢?」
俺は僅かに目を見開く。
「そう! 魔族も含めて、全ての種族が手を取り合っていければ……、世界はもっと幸せになれると思うの!」
見開れた目は興味深げに細められる。
「手を取り合うねぇ……。」
……本当にテンプレ王女様だ。高潔で素晴らしい理想を掲げている。そして、その理想のために動く行動力まで持っているとは……、
「だから、魔王のあなたがその気なら、王女の私が、国王様に進言して──」
──だが、その理想は遠い、遠すぎる。
「無理だな、間違いなく。お前の理想が叶う日が来る事は無い。」
「…………え?」