コメディ・ライト小説(新)

Re: 治療薬は天使 ( No.2 )
日時: 2020/09/28 21:43
名前: ほずみ (ID: XLYzVf2W)

1.好きです

あれからニヶ月。髪の色は全然治らず、小学校の卒業式の写真、相変わらず俺の毛先は桃色だった。
『桜とおんなじ色じゃん』
…ってなんのフォローにもなってないし。

結局中学校もこの色なんだな。
俺の中学校は受験先の殊叶中等学校だ。
この症状が出始めた日にはもう殊叶中に行くことになっていた。あんなに楽しみだったのに、もはや鬱な中学校生活。さっさと治ればいいのに。

入学初日から明らかに視線は俺に向けられている。
おまけにこの学校寮生活なんだよな。
同級生と関わる時間が長い。これじゃ『危ない』。
だって女子とも一緒にいる時間が長いってことでしょ?
―好きになっちゃうじゃんか。

そうやって考え込んでいるうちにも時間はすぎてく。
クラス、寮の部屋番号、おおまかな生活の紹介、施設の説明。
ぼーっとしてたら全部終わってた。
「それでは、組ごとにそれぞれの担任に従ってついてってください。解散!」
…あっ。わからない。終わった。
みんな動き始める。おどおどしてるのは俺だけ…。
じゃない?あいつも聞いてなかったのか?

そしてみんないなくなった。
さっきと同じ場所とは思えないくらい静けさが広がる講義室に後片付けをする先生達と、俺、そして聞いてなかった同士の男子がただただ突っ立っている。
困った。

とりあえず講義室を出よう。
俺は…何組だ?なにしろ四組もある、勘で当てられるわけない。
きょろきょろしていると、一人の女子がこっちに走ってくる。
「駒木さんで…あってますか?」
「へっ?あ、うん」
「駒木さんは三組です、いきましょっ」
とりあえずその女子についていく。
駆け足についていけるように早足で。
するとぞろぞろと歩く集団に追いついた。
「これが三組の人たちです。ついていったら大丈夫ですよっ。私も三組ですから。」
そう囁いてニコッと微笑む。思わずうつむいてしまった。
「あのっ…あり、がとう?」
久しぶりに女子と話したから緊張してしまう。

だって天恋病は両思いになったら

―命が絶えるから。

そうして殊叶中で初めて話したのが片野かたの
女子とは関わりを持たないようにしていたのだが…。
なんというか…惚れてしまった。
けど、両思いになったら死んでしまうから少し気になる、という関係にある。

―昔話はこれくらいに。
今俺は三年になった。これから三年生としての生活が始まる。
楽しみじゃない、怖い。もうあれ以来女子と話した覚えがほとんどない。
でも、これでいいんだ。女子を好きになって死ぬくらいなら生きたほうが絶対にいい。
そう自分に言い聞かせ、今日も一日が始まる。