コメディ・ライト小説(新)

Re: 星と少女と御呪い ( No.2 )
日時: 2021/05/23 17:36
名前: 紅蓮 (ID: fqLv/Uya)

1章

#1 星の民

「…あちら側の動きが活発的に?」

腕を組み、口を丸く開ける彼女。瑠璃色の瞳も重なってか、驚く姿も笑顔と同じぐらい違和感がない。…そして彼女は我を取り戻し、上品に紅茶を口に運んでいた。

クララ・メティリエ。
我ら“SME”の隊員であり、リーダーとも肩を並ばせる実力者である。生まれはかなり高貴なもので、魔術師一族の末裔なんだとか…。また、先程のように教養もかなりあるようだ。姿は本校1番の美しさであり、その容姿を一目見ようと他の学校から生徒が訪れるほど。金髪の髪は、腰辺りまで長く長く伸びており、真っ直ぐ…ほつれさえないストレートだ。そして目。瑠璃色の瞳は光を受けて瞬いており、その近くにある長い睫毛によって際立たされている。親譲りであるこの目を見れば、誰もがメティリエ家の人間だと分かるんだとか…。

「今になって…?一体、何があったのかしら。」

______…言っておくが、そもそもSMEとは。

Psychics Magic Enchantments(別名魔術師機構)の略であり、反政府組織(反乱軍)の取り締まりの為に結成された組織である。例えば、法律に背いたり、反乱を起こしたりする者を捕らえたりする。

また、この組織の中心はセント・ルレーヌの学生である。その為、この世界のどの部隊よりも平均年齢が低い。また、15年前に起きた戦争でも、学生達が争いを鎮めたそうだ。

「反乱軍がついに動き出したなんて、ね…。ルミエールは具体的には知っている?」

「いえ。どのように動いてるのかは今のところ…。」

あちらの組織はセキュリティが万全だ。情報漏えいなど殆どない。事の全てを知るのは、反乱軍のものだけだろう…。

「あ、そうそう。私なんか噂で聞いたけど、反乱の為に準備を進めているんだとか…。今はよく分からないけど、今までのよりは規模が大きそう。」

彼女は険しい表情で物を語った。

もう1人の方は、アスカ。
アスカ・トオノ。あちらの言語では、『遠野 明日香』と書くらしい。彼女はどうやらアジア出身らしく、顔立ちも髪色も、私達とは異なっている。何と言うか、和風のような…。話はそれたが、私とは同期であり、基本的には敬語は使わない。…こんなので大丈夫なのだろうか。

「ええ。15年前の戦争もかなり手こずったそうなのに…。今回は一体どうなるのでしょうか。」

本で読んだ15年前の出来事が思い出される。
赤い戦火、朽ち果てた建物、人々の悲鳴…。実際、世界中の国で報道された出来事であり、世にも恐ろしい戦争だ…。もしあの事がまた起きてしまえばどうなるだろう?少なくとも、国家の壊滅は予想出来る。

「確かに。ルミエールの勘が当たらなければいいけどさ、もし当たったら当たったでどうすんのさ。」

アスカは口を曲げた。
今後の未来を見据えると、確かにそうしたくなるであろう。…しかしまずは、この状況をどうにか………。

「そうだ。…1つだけ打開案があるの。」

「…打開案?」

私は目を見開いた。

「まあ、本当に事を収められるかは分からないのだけど…。」

そう言うと、彼女は立ち上がり、本棚から何かを取り出した。よく見てみると____由緒正しき古本であった。

Re: 星と少女と御呪い ( No.3 )
日時: 2021/04/10 18:38
名前: 紅蓮 (ID: fqLv/Uya)

#2 旅立ちの町

早朝。
辺りはまだ薄暗く、電灯の明るさが際立つ頃。
この時間の光は珍しいのか、電灯には虫が集っている。

「今の気温は…10℃か。」

私は空を目を凝らして見つめた。見れば太陽はまだ昇っていない。そりゃあ寒いわけだ。
風景の下に視点を変えると、人は何処にもおらず、孤独さと寂しさがよく感じられる景色がよく見えた。さらに車も走っておらず、聞こえるのは鳥のさえずりぐらいだ。

「フラン!集合時間5分過ぎてるぞ!」

…しまった。
聞き慣れた声が聞こえたと思ったら、アマナであった。急に寒気がして時計を見ると…4時35分。時計の調子が悪いのかと思ったが、そもそも電波時計なのだから狂う訳がない。それに1000年以上前から使われている電波時計なのだから、もし不備があってもこの長い時の中で改善されているはず…。と言うことは、明らかに…遅刻だ。

「起きてるなら起きてるで返事しろ!」

「おっ、起きてる、起きてるー!」

焦った声で返事をする。
こんな焦った時に怒号を飛ばされると、さらに焦りが増してしまう…。そんな訳で、私は勢いよく荷物をかばんに詰めた。

「…これで全部かな。」

荷物が多過ぎて入らないものがあったが、そんなことは気にせずにズドンと押し込んだ。…これから寮生活で、自宅から持参する物が多いのは当たり前のことだろう。

3214年。3月49日。スピカ星岸せいがん
春風が微かに吹き、近くに広がる草原が揺れる。暦の上では春真っ只中…だが、まだ冬に咲く花々が健やかに咲いていたりする。例えば______そこ。『セイガンツバキ』。星岸にだけ生息する椿であり、紫色の花弁が特徴的である。また、生命力が高く、春になっても花は落ちることがないそうだ。星岸辺りには桜が咲いており、その姿は星岸近くの海に影を映している…。

…言い忘れたが、そもそも星岸とは。
毎晩流れ星が流れる岸辺であり、古から星と共にある場所である。ここには観光客が多く訪れるので、ほとんどの星岸が栄えている。特にこの星岸は、『スピカ』が、よく見えると言う理由でこの名となったんだとか。

「これでよし、か。」

準備を終えた私は、ドアを開いた。

Re: 星と少女と御呪い ( No.4 )
日時: 2021/05/29 16:42
名前: 紅蓮 (ID: fqLv/Uya)

#3 継承者

「ほら、これよ。」

その本が机に置かれた瞬間、埃が飛び散った。

「うげぇ…こりゃあ埃っぽい本ってわけか。」

表紙は少し破れていて、埃っぽい匂いがする。
それに、どのページも色あせていて、文字がやや滲んでいる。

「…これは?」

「だいたい150年くらい前の戦争を記した書よ。色々載ってるわ。」

「ほへぇ〜、そんな昔の本がよくあったよね。」

「あら、こう見えてメティリエ家はかなり昔から栄えているのよ。うちの一族は本の収集が好きだから、大体の本は揃っているの。」

周りの景色を一望する。
はしごに登らないと届かない距離まである本棚が、辺りを囲んでおり、小説…図鑑…論説文…歴史書…様々なジャンルの本が目に入った。…もしかしてここ、図書館よりも品揃えがいいのではないだろうか。

「で、案って何さ?」

「…ああ、話がずれちゃったわね。そう、案っていうのはこのページのことなの。」

『継承者』。
そう大きく書かれていた。

「継承者って____。1人しか存在出来ないあれですよね。それの力で何とか出来るんですか?」

「そういうこと。これまでの戦争は、継承者がほぼ全て治めてきたのよ。だから今回も、ね。」

そう言えば聞いたことがある。
『継承者は特定の魔術を操り、膨大な力を持つ。歴代の継承者は炎…光…華…毒…氷…草…闇…
である。アルトアイゼン洞窟群の奥に佇む紅魔石が示した者は継承するべき者になる。』継承者が亡くなると、紅魔石が反応を示し次の継承者が選ばれる…。

が、今はちょっとした問題がある。
何年か前の洞窟群一帯で起きた大きな地震で紅魔石に小さなひびが入ってしまい、紅魔石を手動で人々に近付けて継承者を探すしかないのだ。今は継承者が亡くなっているというのに…。

「ま、大丈夫大丈夫!SMEの子達総動員すれば何とかなるって!」

「ええ…。そんな上手くいきますかねぇ。」

ルレーヌを守る為ではあるが、大変な任務になりそうだ。

Re: 星と少女と御呪い ( No.5 )
日時: 2021/05/23 17:33
名前: 紅蓮 (ID: fqLv/Uya)

#4 きっかけ

「さあ、私達だけのショーを始めましょう!」

魔術師。今、この世界の大英雄とされる存在であり、民間人に平和の星を振り撒く存在である。ホウキにまたがって…軽々と呪文を唱えて…その美しさは、私の憧れの的だった。

実はそれ、私だけではない。ここ、ルレーヌ大陸には魔術師に憧れる子供達は何人もいる。その人気さを例えるなら……どっかの会社が行う『なりたい職業ランキング』でも、500年連続1位ということが一番説得力があるだろう。

そんな私が魔術師という言葉を知ったのは、4歳の頃。ルレーヌの南西部に属し、大規模なショッピングモールが立ち並ぶヴェート街と言う場所で初めて魔術師を見た。その頃は丁度クリスマスシーズンであったので、ヴェートではたくさんのイベントが開かれていた。例えば、高級スイーツ店の出張販売や、ルレーヌ出身の歌手を集めたライブの開催だったり、とにかく人が集まるイベントが開催されていた。そんな中でも、一際人気が高いのが魔術ショーである。

その魔術ショーを私は見たのだ。
その時の魔術師はビアンカ・テーナー。しろがねの髪を赤い糸で結っており、自由奔放に空を飛んでいた。それに彼女、只者ではない。なんとあの継承者だ、継承者。彼女は闇術を操る継承者で、幼い頃からずば抜けた才能を持っていたらしい。

そんな彼女を見て以来、私は必死に魔術の練習をした。今となっては上位の魔術学校に入る程の実力を手に入れる事は出来たが、夢に見たビアンカのように上手くなることはなかった。

……だからこそ。ここで魔術をもっと学ぶんだ。
ビアンカの母校、セント・ルレーヌで。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あれ、あと何分で電車来るっけ。」

「どうせもうすぐ来るだろ。…お前よりは早くな。」

「うぅ…。さっきの事引きずってさぁ…!」

一瞬アマナを殴ってやりたかったが、入学前に事件を起こすわけにはいかないので、疼く拳を鎮める。すると、駅員のアナウンスが聞こえた。

『まもなく、4番線にセント・ルレーヌ魔術学校行きの電車が到着します。黄色い線の内側で______』

甲高い音が聞こえると同時に電車が止まると、風と共に電車のドアが開いた。

Re: 星と少女と御呪い ( No.6 )
日時: 2021/05/26 18:41
名前: 紅蓮 (ID: fqLv/Uya)

#5 キーパーソン

「ルミエール・アマーリエ、16歳。セント・ルレーヌ魔術学校1年選抜コース…ってわけ。いやー、困った困った。厄介な生徒が入っちゃったなー。」

幾つも蝋燭ろうそくが立ち並ぶ部屋の中で、ある者がボヤく。

「アイツらの事だからさーどうせくだらない人間でも迎え入れると思ったケド、継承の神殿とか何とか…昔の戦争の記録が記されてる所の番人の娘で魔術の才能もある子をメンバーにするなんて、出来損ないの割には見る目あるよねー。」

ジュンエ・マルシア。
17歳。セント・ルレーヌ魔術学校2年。
アジア人とヨーロッパ人のハーフで、髪は黒いが肌は白い。彼女も選抜コースの1人である。

「安心なさいジュンエ。あの娘が何をしでかすのかと臆することはあろうが、たいした事は起こらないでしょう。」

彼女は外を見つめる。

「さすが、やっぱりカフカさんは一味違うねー。」

ジュンエと言う少女の横に居るのはカフカ・アイリス。ジステリア魔術女学院3年で18歳である。
彼女の黄金こがね色の瞳は、見た者を圧倒させる程の美しさ。髪は濁りの無い白銀で、瞳と髪の色が見事に対照的である。また、魔術師3大名家の1つ、アイリス家の長女である。

「選抜コースの者であろうと、私さえいればどうにかなるのです。それに、たかが1年生の1人でしょう。まだ位が低いのだから、大胆な行動は起こせないのですよ。」

「まあ言われてみればそうかもー。しかも、こっち側の計画は完璧だし。」

「ええ、この世に“完璧”など存在しませんでしたが…この計画がこの世初めての“完璧”になりますのよ。」

ここは反政府軍のリーダー室。
部屋は暗く、人目を避けているようにも思える。そして、何かの革で出来た椅子に座るのは、リーダーであるカフカ。幼い頃から魔術の才能を持っており、ジステリアには推薦で入学をしたらしい。その為、反政府軍の一員となるのは容易であったという。

…そもそも彼女。由緒ある家柄の人間であるのに、何故反政府軍になんか入ったのだろう。今の政府に何か恨みでもあるのだろうか…?

_____もう1度言おう。反政府軍のリーダーは、 カフカ・アイリスである。