コメディ・ライト小説(新)

Re: 星と少女と御呪い ( No.3 )
日時: 2021/04/10 18:38
名前: 紅蓮 (ID: fqLv/Uya)

#2 旅立ちの町

早朝。
辺りはまだ薄暗く、電灯の明るさが際立つ頃。
この時間の光は珍しいのか、電灯には虫が集っている。

「今の気温は…10℃か。」

私は空を目を凝らして見つめた。見れば太陽はまだ昇っていない。そりゃあ寒いわけだ。
風景の下に視点を変えると、人は何処にもおらず、孤独さと寂しさがよく感じられる景色がよく見えた。さらに車も走っておらず、聞こえるのは鳥のさえずりぐらいだ。

「フラン!集合時間5分過ぎてるぞ!」

…しまった。
聞き慣れた声が聞こえたと思ったら、アマナであった。急に寒気がして時計を見ると…4時35分。時計の調子が悪いのかと思ったが、そもそも電波時計なのだから狂う訳がない。それに1000年以上前から使われている電波時計なのだから、もし不備があってもこの長い時の中で改善されているはず…。と言うことは、明らかに…遅刻だ。

「起きてるなら起きてるで返事しろ!」

「おっ、起きてる、起きてるー!」

焦った声で返事をする。
こんな焦った時に怒号を飛ばされると、さらに焦りが増してしまう…。そんな訳で、私は勢いよく荷物をかばんに詰めた。

「…これで全部かな。」

荷物が多過ぎて入らないものがあったが、そんなことは気にせずにズドンと押し込んだ。…これから寮生活で、自宅から持参する物が多いのは当たり前のことだろう。

3214年。3月49日。スピカ星岸せいがん
春風が微かに吹き、近くに広がる草原が揺れる。暦の上では春真っ只中…だが、まだ冬に咲く花々が健やかに咲いていたりする。例えば______そこ。『セイガンツバキ』。星岸にだけ生息する椿であり、紫色の花弁が特徴的である。また、生命力が高く、春になっても花は落ちることがないそうだ。星岸辺りには桜が咲いており、その姿は星岸近くの海に影を映している…。

…言い忘れたが、そもそも星岸とは。
毎晩流れ星が流れる岸辺であり、古から星と共にある場所である。ここには観光客が多く訪れるので、ほとんどの星岸が栄えている。特にこの星岸は、『スピカ』が、よく見えると言う理由でこの名となったんだとか。

「これでよし、か。」

準備を終えた私は、ドアを開いた。