コメディ・ライト小説(新)

1−前章 1話 『早朝の会話』 ( No.2 )
日時: 2020/12/07 23:34
名前: ノモケマナ (ID: hDVRZYXV)

《ペガ様、朝ですよーー》



 ──あぁ、ついにこの日がやってきた。


《ペガ様、起きてますかー?》


 ──やっと……僕の『ゆめ』が叶えられるんだ。


《あれ、ペガ様ー?》

「今日はなんていい日なんだろう。太陽は微笑ほほえみ、花は歌い、風は僕をやさしく包み込む。そして小鳥が耳元でささやき──」

《ヘ° カ" サ マ》「うわあぁあっ!」

 ペガは突然の声に仰天し、肩を跳ね上げた。

《ペガ様、おはようございます。外にいらしたんですね》

 声をかけたのは子柄な鳥ロボットだった。
 体はメタルに染まっていて、可愛いくちばし、小さな鶏冠とさかがちょこんとついている。ルビーのような瞳をくりくりさせていてとても愛らしい。

「あ、あぁあ、うん。お、おはようピーコ」

 ペガは顔を真っ赤にし、声を震わせた。心臓の波打つ速さが上がっていることも分かる。

《大丈夫ですか? 顔が赤くなっていますよ》

 ピーコは心配そうに顔を覗き込ませる。そんな健気な不安顔が視界いっぱいに映るとペガの動きはさらにぎこちなくなる。

「い、いやあ気にしないで気にしないで、うっ……」

 じっと見つめてくるピーコの瞳に耐えきれず、思わず視線をそむける。するとピーコは悲哀な顔を向けた。
 ペガは逆に罪悪感に耐えられなくなり、視線をもとに戻した。そして代わりに話題を変える。

「そんなことよりほら、ついにアレが完成するんだ」

《ええ、そうですね》

 焦ったのか、話が要領を得ていないが、ピーコはしっかり理解したようだ。

「そうだよ! 相談所が完成するんだよ!」

 急な大声にピーコは驚き、大きな瞳をさらに大きく開き、羽をばたつかせる。
 一方ペガは何かを思い出したようで、鼻息を急に荒くし、ピーコに早口攻撃をお見舞いする。

「ついに僕たちの相談所が完成するんだよ、この日を、どれだけ待ち望んでいたか、今までがんばってきた甲斐があったなあ、ああ、早く二人を起こさないと、ていうか恥ずかしさでこれ忘れちゃうとか何してるんだ僕、あ、ピーコ今の気にしないでね、とにかく二人を起こそう」

 ピーコはあまりの早口にくちばしを半開きにして唖然あぜんとしている。ペガはそれに気づくとまた赤面して、すぐに口を指で抑える。

「ああ、ごめんねピーコ。でも本当に嬉しいんだ。まさか僕がここまでこれるなんてね。これもピーコのおかげだよ。僕のことを一生懸命応援したり励ましたりしてくれて……本当にありがとうね」

《光栄です。ですがやはり一番すごいのはペガ様です。あなたは三年前に仰っていたことを見事に実現された。あなたの努力はとても輝かしいものでした。ピーコはあなたの隣にいれたことを心から嬉しく思います》

 少し大袈裟おおげさな褒め言葉にペガの顔はさらに熱くなり、頭の上についている耳の先端まで血をたくさん巡らせている。

「ありがとう」

 ペガは照れくさそうにはにかみ、五文字で感謝を伝えた。ピーコはそれを聞いて柔らかな笑顔になる。

《ペガ様、本当に今日はうれしそうですね。あ、そろそろ支度をしなくてはいけませんね。それではまだ眠っている二人を起こしに行ってきます》

「ありがとう。パッシュ村のみんなにも挨拶しないとだしね。あ、でも僕も一緒に戻るよ」

《分かりました》

 そうして二人は丸太小屋へと戻っていった。