コメディ・ライト小説(新)

1−前章 6話 『忘れないもの』 ( No.7 )
日時: 2020/12/17 20:39
名前: ノモケマナ (ID: hDVRZYXV)

 ロスはペガの様子の急な変化に、不思議そうに驚く。だが、

「どうしてだ」

 気持ちは変わらない。何よりも平和を愛しているのだろうか。こちらもなにか決意のようなものを持っていた。

 ペガは手を下げる。だが、そこに憂いはないようだ。

「忘れちゃったのかな。夢を」

 なにかを確かめるかのような質問をする。

「……はっ!」

 ロスはなにかを思い出したようだ。

「忘れてはいないんだね。良かった」

 ペガは穏やかな表情でなにかを安堵したようだ。
 するとゆっくり話し始めた。

「確かにこの村は、すごい良いところだよね。僕だって、そう思う。でも……ずっと、ここに居続けちゃだめだ。きっとそれは、甘えだから。ここに留まっていたらもう、成長できないから。村のみんなも、望んでいることだから」

 ペガは一生懸命に、そしておちついて話し続ける。

「僕もそう思ってた。村から出るのは、ひどいことなんじゃないかなって。だめなんじゃないかなって。でも違うんだよ? 村のみんなはそんなことで怒ったりしない。むしろ出ていかないほうが怒るよ」

 少し笑う。

「村のみんなはとても優しい。本当に優しい。僕たちにも、僕たちじゃなくても、温かい心で接してくれる。そして見返りを求めない。ただ困っているから助けてくれる。感謝を伝えれば笑って受け取ってくれる。そんな人柄に僕も憧れた。そうなりたいと思った。それが夢へと変わった。僕に希望を与えてくれた」

 真剣な顔にさらに力を込める。

「……だから」

 息を吸う。肩に力を込める。腕に、手に、足に、腹に。
 目を大きく見開く。正気が宿る。

 静かに息を吐く

 

 そして

 

 心の



 心からの思いを



 たった一つの思いを



 今……



「だから僕は……」



「僕は!──」