コメディ・ライト小説(新)

Re: 強きおなごになるのじゃ! ( No.8 )
日時: 2020/12/19 18:23
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: zFbX1fPI)

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 桜綾は焼き菓子を食べながら言った。
「母様、お身体は大丈夫?」
「ええ、最近は調子がいいの。心配してくれてありがとう」
 翠蘭は昔から床に伏せることが多く、時には生死の境をさ迷うこともあったほどだ。皇帝の寵愛を他の正妻よりも受けていた翠蘭は、特別に用意されたこの場所で3年ほど療養を続けている。そのお陰か、倒れることはあれ、大事に至るほどの病を抱えることはなくなった。
「これからも元気でいてくださいね」
 子豪が言うと、翠蘭は微笑んだ。
「ええ。皇帝のためにも、そして何より、桜綾のために、ね」
 桜綾は言った。
「約束して、母様。私が大人になるまでは、元気でいるって」
 翠蘭はちょっと困った顔をしたものの、すぐに笑顔に戻り、桜綾と指を絡めた。
 桜綾は安心した。母が幾度も死にかける姿を見るのは、もう嫌だった。
 桜綾はそのとき、考えもしていなかった。夢にも見ていなかったような、幼い体を貫くほどの運命が牙を見せ、自分を襲おうとしていることに。