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コメディ・ライト小説(新)
- Re: 強きおなごになるのじゃ! ( No.10 )
- 日時: 2020/11/21 11:24
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: MgJEupO.)
4
不夜国の皇帝、丹 梓宸。彼は賢才で、学問に秀でている。幼い頃よりその将来を期待され、見事それに応えた。
後ろで縛られた髪は床につき、美しい紫の瞳はふるふると震えている。
梓宸は翠蘭の体に手をおいた。
「ああ、翠蘭。許してくれ。そなたを救うことが出来なかった。愛するそなたを、あ、あ……」
そしてそのまま、泣き崩れた。
タッ
桜綾は駆け出した。父と共にいることが、何故か絶えづらかったのだ。
梓宸は、翠蘭との子だからと言って、桜綾を大事にしたりはしない。梓宸にとって、桜綾は桜綾であり、翠蘭は翠蘭なのだ。それ以上でも以下でもなく、ただ、それだけ。自分の愛する者は心底愛おしく思い、そうでないものは、視線すら向けやしない。彼はそういう人なのだ。
それがわかっているから、桜綾は父の胸を借りたりなどはしなかった。そんなことをすれば、父に怒鳴られ、罵倒され、この状況では、心がボロボロになる。小さいながらもそれを察し、逃げるように出てきたのだ。
『強く、生きなさい』
母の声が聞こえる。
逃げては駄目だと、そういう意味なのだろうか。
「わかっています。母様。私、強く生きます」
桜綾はぐいっと涙を拭った。
「もう、涙は流しません」
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