コメディ・ライト小説(新)
- Re: 転生令嬢は平穏に過ごしたい ( No.4 )
- 日時: 2021/06/05 19:41
- 名前: 鹿蜜柑 (ID: g1CGXsHm)
いつもより少し豪華な服を着て、髪も編み込んでもらい準備は終わった。
「さーてお嬢様、後はダイニングルームに行くだけですよ。」
「うん。行こっか」
後はダイニングルームに行くだけと言うけど、
多分体育館ぐらいの大きさじゃないか?と思うほどの地味に大きい家と
ダイニングルームから一番離れているこの部屋、
極め付けには私のまだ小さい歩幅、疲れないけど結構面倒なのだ。
動くのはあんまり好きじゃない。
「そうですかぁ、もうお嬢様は3歳なんですね。時の流れは早いです。」
「そう?」
「はい。お嬢様、これからもっともっと楽しい事が増えますよ。」
楽しい事、か
私の前の人生、私が覚えていないだけで多分楽しい事は多くは無かったけど
少なからずあったはずだ。
でも、その楽しかった思い出さえ私は忘れてしまった。
人間、楽しかった事は苦しかったり悲しかったりする事よりも
いとも簡単に忘れて、嫌な事だけは忘れさせてくれない。
ずっと、ずっと、身体にこびりつくかのように
私だって覚えているのは、
苦しくて、悲しくて、妬み羨んで、
誰かに愛されたかった。
誰かに自分を見て欲しかった。
何処かに自分の居場所が欲しかった。
そんな感情ばかりだ。
「ベル、楽しい事これから一杯増えるかな?」
「はい、もちろん。このベルが保証しますから!」
「それは頼もしいな」
「へへっ、あっ、着きましたよ。さあ」
ダイニングルーム前のドアがベルによって開けられる。
「「「「「お嬢様、お誕生日おめでとうございます!!」」」」」
「リリア、誕生日おめでとう」
「リリアちゃん、お誕生日おめでとう」
びっくりした、皆いる。
今日休みの人までもが。
大きいと思ってたけど、ここまでとは思わなかった。
「どうですかお嬢様、今日は私が声をかけて皆に集まってもらいました。」
「あ、ありがとう…」
「さてさて、今日は名一杯楽しみましょう!お嬢様の誕生日なんですから!」
「うんっ」
ああ、そうだ。そうだった。
前の人生の時、私が5歳の誕生日の時かな。
まだ、お母さんは再婚もしてなかったし、
妹も生まれてなかった。
お母さんは、ちょっと無理をして、
私のためにケーキ屋さんの高いケーキを一切れ買ってくれた。
お母さん自身はお腹が空いてないから、私が食べなさいって言ってくれた。
子供心にそれは嘘だって分かったけど、
私を思ってくれるのが嬉しくて全部食べた。
それから、お母さんは再婚して、妹が生まれて、
家庭は妹が第一優先になった。
そこに私の居場所はないように思えて虚しかった。
でも、私は確かに前の人生で私を見てくれる人がいた。
それだけで、私は何故だか救われたような気がした。
他の人から見るれば、何だそれは。となるかも知れないが私にとっては中々重要なのだ。
「皆、本当にありがとうっ!」
この日、私はこの世界に生まれて初めて
心から笑えた気がした。