コメディ・ライト小説(新)

Re: 転生令嬢は平穏に過ごしたい ( No.8 )
日時: 2021/07/11 18:25
名前: 鹿蜜柑 (ID: OVfZIdxh)

部屋に戻るとベルが居た。
すでに帰ってきていた様だ。

「ベル、帰って来たんだ。おかえり」

すると、ベルが飛び付いてきた。

「お嬢様ぁぁ、どこに行っていたのですかぁぁ。
いつも、部屋でぐうたらしているじゃ無いですか。
動けと言われてもちょっとや、そっとでは動かないお嬢様が、
私がちょっと仕事から抜け出した間に居ないじゃないですかぁぁ。
今日に限ってなんでなんですかぁぁぁ」

なんか、軽くディスられている気がする。事実だけど。
しかも、仕事放棄してるし。大丈夫なのだろうか?
バレて、クビにならなければ良いけど。

「まぁまぁ、落ち着いてベル」

それにしても謎なのは、私が自分から部屋を動く事は食事以外は、
ほぼと言っても良いほど無いけど、人に言われて少しの間なら動く事は珍しく無い。
帰ってきて部屋に私が居なかった所で、ベルがここまで慌てる必要は無いはずだ。
そもそも、大体の私のスケジュールは把握しているはず。
しかも、私がふらっとどこかへ行っても、意識して隠れない限り
全員とは言わないが何人かの使用人さん達は分かるはず。
聞き込んでいけば、簡単に私の居場所なんて分かるのだ。

ここまで考えると、更に謎が深まる。
いや、単に仕事を放棄して帰ってきたら私が居なかったから慌てて、
そんな事も忘れた可能性もなくは無いが。いや、大いにある。
この場合そんなとこだろう。

「ベル、何でそんなに慌ててるの?私が部屋に居ないことなんて
そこまで珍しい事では無いし、
私の居場所なんて他の人に聞けば良いんじゃ?」
「確かに。ちょっと慌ててたみたいです」

やっぱり、ただ単に私の考えすぎみたいだ。
でも、それを考慮してもベルがここまで慌てるのは珍しい。

「ここまで慌てるなんてベルにしては珍しいね」
「いやぁ、それが帰って来たんですよ」
「誰が?まさか…」

いや、そんな筈が無い。
ここ暫く居なかった筈だ。
だからこそ、私は母様に聞きに行ったのに。
いや、居ても母様に聞いているか?
まあ、そんな事は置いておいて、

「父様が帰って来たの?」
「はい、この家も賑やかになりそうですね。ハハハ」

父様は少し一風変わった人だからな。
良い人には違いないが。
しかし、ベルは父様が帰って来たから慌ててたのか?
余り話が繋がらないが。

「それにしてもベル。父様と会って慌てたの?」
「それがですね、旦那様が帰って来た時バッタリと会いまして、
私はその時丁度仕事を抜け出し私用に出かけて、帰って来た所だったので
中々緊張してたんですよ」
「ベル。クビにだけはならないでね」
「縁起でもない事言わないでくださいよぉぉ。
ああ、本当にクビになったらどうしよう」

ベルは悲痛な顔をしながら天を仰いだ。
そんなに嫌ならサボらなければ良いのに。
まあ、事情があったのかもしれないけれど。

「ま、まあ、話は戻しますけれど、旦那様とバッタリ会った時言われたんですよ。
そして、何も知らないはずの旦那様が、」

ベルが父様の真似をしながら口を開く。
ちょっと面白い。

「やあ、久しぶりベル。ちゃんと仕事してるかい?
もしかして、サボってたとか?
はははっ、冗談だよ。そんなに慌てないでも良いじゃないか。
それとも本当にサボってたとか?
おっと怖いなあ、そんなに睨まないでくれよ」

ベルやっぱり図星言われて焦ったのか。
あと、何かをされた訳でもなく雇い主を睨まない。
ベルは本当はクビになりたいのだろうか。
そうとしか思えなくなってきた。

「まあ、それよりも、リリアはどうしている?
リリアの事だ。僕が家から離れていた1ヶ月と13日の間に
美しく、聡明に成長している事だろう。
リリアは天から舞い降りた天使に違いない。きっとそうだ」

父様の目はフィルターがかかっているらしい。
本当に医者に行く事をおすすめする。

「あんなに、美と聡明さに満ち溢れた人間は、ソフィアとリリア位だ。
僕はソフィアとリリアが妻と子供で居てくれるとは、
なんて幸せな人間なのだろうか。
ああ、すまないね。ちょっと喋りすぎた様だ。
いやあ、リリアとソフィアの話をし始めると止まらなくてね」

私の事については反論したいが、母様が天使なのは父様に同意する。
父様、母様と結婚できて良かったな。

「さて、最後にサボった疑惑のあるベル君に
ちょっとした問題を出す事にしようかな。
内容はリリアは自分の部屋にいるか否か
先程ベルに睨まれた事で僕のナイーブな心はズタボロなんだよね。
ん?僕に心はナイーブなんてものじゃないって?
まあ、僕の心がナイーブかどうかは置いておいて
この問題が解けなかったペナルティーは、どうしようかな…
この前休憩場にあったお菓子を全部食べた事を
皆んなにチクろうかな」

これは完全にサボったことバレてるな。
しかも面倒な話に付き合った挙句冷や汗をかく事になるとはベルも災難だな。

「ちょっと困っているベル君にヒントを差し上げよう。
今日はリリアの部屋の窓が開いている。
ん?いつもの事ながら部屋に居るって?
まあ、答えは部屋に行ってみて自分で見てきてね。
あもういい加減中に入るとするよ。面倒な話に付き合わせて悪かったね。
ご苦労様」

ああ、これで部屋に戻ってみたら私が居なくて慌ててたのか。
謎が解けた。いや、謎というほどでもないけど。
スッキリした。

「と、こんな感じに旦那様が言ってきて、あ、ちなみに私は無理でしたが
お嬢様と奥様への愛のスピーチ的な所は一回も止まることなく言っていましたよ。
いつものことながら、心を無にして聞いていました。
この地に生まれて16年彼氏いない私には、ちょっときつかったです」

ベル、今まで彼氏がいた事なかったんだ。
なんか、更に親近感が増した。
しかし父様、母様と両思いでなかったらただの怖い人じゃないか。
いや本当に、母様と父様が結婚できていて良かった。

「それで、最後に出された問題が、絶対に合っていると思ったら
お嬢様が居なくて焦ったと言うのが事の文末です」
「ベル災難だったね」
「まあ、自業自得なんですけどね」

しかし父様、窓を見ただけで私が居ないか居るかを瞬時に判断出来るのは凄いな。
後、良い人には間違いないが中々面倒な雇い主だ。
けれど、私や母様といる時はもう少し落ち着いている人の筈なんだけどな。

「それにしてもお嬢様はどこへ行っていらしたんですか?」
「ちょっと母様の所に質問したい事があって」
「そうなんですか。どんな事を?」
「色々と。一般常識とか。結局余り聞けなかったけど」
「それなら私が答えましょうか?
一応、今日は抜け出すためにお嬢様関連以外は
仕事を終わらしてきましたから」

思ってもみない好機だ。とてもありがたい。
後、私関連以外仕事を終わらしている辺り、有能さがうかがえる。

「ありがとう。ぜひお願いしても良いかな?」
「はい。この世界の一般常識ならお嬢様が何を求めているか
何となく分かりますから。
まずは、魔石の話をしましょう。」