コメディ・ライト小説(新)
- Re: もう一度。 ( No.7 )
- 日時: 2021/02/02 18:14
- 名前: ∴夏みかんの妖精 (ID: f.iAZwEP)
4話「転校生」
『2年1組 教室』
教室に入ると、見慣れたような、安心できるようないつかのクラスメイト達が見えた。緊張も少しほぐれ、あぁ、あの子雰囲気変わってたんだなぁ、だの、アイツは昔の方が良かったな、だの、自分にしか分からない思い出話を脳内で展開していた。いつも一緒に居たからこそ、雰囲気の違いは全然わからなくて、時間が遡ったからこそ味わえる喜びのようなもの。そんなことを噛み締めながら、私は席に着く。
いつまでも空いていた、隣の席_____。
最初は、自分だけ1人席でラッキー!とか思っていたけれど、次第に寂しくなっていって、転校生でも来てマンガみたいな恋でも出来たらなぁ!と華蓮に話していたっけ。だからこそ、転校生が来ると聞いた時は嬉しくて嬉しくて、絶対仲良くなってやろう、最高の友達だ、って笑い合おう。そう決めていたんだ。___まさか、あんなに苦しくて辛い思いをするなんて、その時の私は思っていなかったけれど。
でも、これからは絶対に大丈夫だ。そう信じていた。また、あなたともう1回恋をしたい。友達でもいい。また会いたいんだ。淡い恋心はいつだか、友愛に変わったのか変わっていないのか分からなかったけど、今の私なら大丈夫だ。心の中でそう言い聞かせていた。不安のある『私』に洗脳をかけるように。
「はぁーい、おはようございます。」
気だるげな担任が来た。ざわざわと他愛のない話を各々していたが、担任が来た瞬間水を打ったように静かになる。緊張が広がる。いつもダルそうに授業をする担任だが、ホームルームのときは皆が静かにならないと話を始めない。周知の事実だ。いつもはちょっと時間のかかるそれだが、今日は違う。転校生が来るからソワソワしていたのだろう。早く紹介して欲しい、誰だか気になる。そんな心がひとつになってこの場を作り出したのだろう。
「おぉ、みんないつもより静かだねぇ。んで、今日は待ちに待った転校生が来ましたよ…っと。入ってきていいですよ。」
中学生だからとバカにしているのだろうか、少し笑いを含ませた声で主役を呼び出す。私だけが知っている、今日の主役。ガラガラと教室のドアを開け、彼は入ってきた。
「こんにちは、南昴です。この学校は分からないことだらけですが、よろしくお願いします。」
パチパチと拍手が起こる。教室中に響くが、私は聞こえないふりをする。
___やっと、会えた。ミルクたっぷり、生クリームたっぷりのミルクココアやパフェなどを飲食したときよりも、ずっとずっと甘い。そんな感覚が私を包む。友愛に変わっているかもしれない、そんなことは全然無かった。だって、顔を見ただけで嬉しくて嬉しくて!規則的に刻んでいた心臓が、どんどん早くなる。今、私の顔はどんな顔をしているのだろうか。泣き出しそうな顔?真っ赤になって風邪を引いたみたいな顔?何にしても、誰かに見られたら心配されるだろう。1番後ろの席で良かった。拍手してなくて、歓迎してないと誤解されることもない。持ってるな、私。
いつの間にか止んでいる拍手の様子を見て、担任は話し始めた。
「みんな仲良くしてやるんだぞ。席は……えーっと、北野の隣な。北野なら大丈夫でしょ?」
「もっちろん!大丈夫ですよぉ。」
と先生に返した。ちょっとだけ気持ちが落ち着いた。ありがとう、先生。向かってくる彼にもいつも通りの対応が出来そうだ。彼が席に座った途端、先生は私に話しかける間も与えずに話を続けた。
「北野と東雲、放課後に南に学校案内お願いしますよ、ってことで、今日のホームルーム以上!諸連絡無し!」
…え?
私はビックリしてそんな声を出してしまった。