コメディ・ライト小説(新)

Re: もう一度。 ( No.8 )
日時: 2021/05/23 18:18
名前: ∴夏みかんの妖精 (ID: f.iAZwEP)

5話「親友」


……え?


素っ頓狂な声が出た。先生が勝手に決めて話を終わらせたせいで、誰も聞いていなかったみたいだけど。
華蓮だけのはずだったのに。どうして私が…?

________


ホームルーム後の教室は、大抵がやがやとしていた。でも今日は空気が違う。遂に来た、転校生。彼に目線が行くと、人の塊がこっちまで駆け寄ってきた。


「南くんよろしくね!」
「好きな食べ物とかある?どんな事が好きなの?」
「前の学校でのあだ名とかある?それか呼んで欲しいあだ名とか…」


南くんに対して、質問が飛び交っていた。そんなに質問しても、南くんはすぐに答えられないんじゃない?___そう思ったけれど、こんなにうるさい中じゃ、私の声なんて揉み消されてしまいそうだ。隣に広がる人の壁が落ち着かなくて、私は親友の元へ向かった。

「あー…これは凄いね。まさに人の壁。」
「そうだよね?あれだけ居ると落ち着かなくて…。」

華蓮が窓際の私の隣の席を見て言った。声色からは嫌な感じはしなかったし、口角が上がっているような気がしたから、多分楽しんでいる。あれを見て。

思えば華蓮はいつもそうだった。皆より茶色強めのショートボブを触りながら、笑みを含ませて話している時は、何かに対して喜んでいる_のだと思う。存在感を放つツリ目のせいで、キツい性格だと思われがちだが、快活な少女だ。ズバッと意見を言えるし、それでいて嫌味ったらしくない。テレビの特集とかの『サバサバ系女子』って、こういうことを言うんだろうな、と思う。

そんな彼女だから私は好きになれたし、憧れた。___ずっと私が弱虫だったから、本音は言えないままだったけど。今度こそ、本当の親友になろう。本音を伝える。

彼女の楽しそうな顔を見て、そんなことを決意し直した。

「そういえばさ、なんで私なんだろうね、学校紹介。学級委員ならもう1人いたのに。」

話題を変えたかったという気持ちと純粋な疑問が6:4くらいの感じを含ませて言った。学級委員なら、華蓮の他にもう1人男子がいたはずだ。なのに、指名されたのは私。女子2人と男子1人。何も知らない人がいたら噂されそうだ。なんにもないだろ、って思う人もいると思う。というか過半数がそうだと思う(私も過半数側だ)。__生憎、ここは恋愛関係とかにはすぐに噂が立って、授業が終わらない間にはもうみんな知っているような学校だ。だからこそあの2人は卒業式まで隠していた訳だし、少しだけ気を付けて行動しなければならない。

先生達はそんなことを知っているのだろうか?と思いながら華蓮の返答を待つ。

「私と香澄が仲良いからとか?それとも…転校生と隣だから、とか?」

ちらりとあの席を見る。さっきよりは少なくなった人だかりは、私に彼の姿を少しだけ見せてくれる。カーテンに包まれて、囚われの王子様みたい。少し笑顔がこぼれた私を見つけた南くんは目を細めて笑い返してくれる。まだ自己紹介してないはずの、分からないことだらけの私に対して。

「まあ、そうだよね。隣の席だし、仲良くしないとね。」

かなり適当な返事をして、私は授業中にこっそり自己紹介をする練習、学校をどこから案内するか、脳内で練習を始めた。きっと今日の授業の内容は入らないんだろうなと諦めて席に戻った。