コメディ・ライト小説(新)
- Re: 推しはむやみに話さない! ( No.3 )
- 日時: 2021/03/16 10:40
- 名前: 狼煙のロコ (ID: hDVRZYXV)
『#楓の顔にはかなわない!』
「今度こそいってきまーす!」
「今度こそ気をつけてねー」
お母さんとの挨拶を交えて玄関を出る。そして右に曲がって、まっすぐ進む。
しばらくすると一本の電柱が見える。
そこには、こっそりと私を見る人影が今日も。
近づいてみると……。
「わあ!」
私の親友、綾谷 楓が壮大なお出迎えをしてくれるのであった。
綺麗な肌とつぶらな瞳、肩まで下がる透き通った髪……うん! 今日も可愛い。
そんな可愛い楓の豪華なお出迎えをないがしろにしてはいけない。
私は超絶リアクションを繰り出した。
「ウワー、コリャオドロイター、マサカマサカノ、カエデサンダッタ―」
「反応薄!」
「毎日やってるじゃん、そりゃこうなるよ」
「へーへー、大柴野花さんは手厳しいねぇ」
楓はわざとらしく唇を尖らせた。
せっかくの可愛い顔が台無し、とはいかず、結局可愛い。
世の中不平等だなあとつくづく思う。
楓はその可愛い顔を私に向けて、笑顔で言う。
「おはよう、のーちゃん!」
はぁ、可愛いよぉ~。尊いよぉ~。お嫁さんにしたいよぉ~。
ダメダメ野花、それ以上踏み込んでは。それは一度入れば抜けられない、お花畑に潜む沼。
ぐっとこらえて我慢我慢!
頬を叩いて、その挨拶に私も笑顔で返す。
「おはよう、楓」
楓はそれを聞くと腕をまっすぐ高らかに、拳を握りしめて、空を見上げた。
「それじゃ、しゅっぱーーーーつ!」
私たちは学校へと歩み始めた。
すると楓が早速話題を切り出す。
「ねえねえ、昨日の『草木の町人』もう読んだ?」
「もちろん、ありゃあ神回だね」
「だよねだよね! 時幻様がかっこよすぎる」
「うんうん、楓の推しが活躍してよかったねえ」
「もう最高だよぉ」
楓は幸せそうに手を組み、口元を緩めている。
私の推しは……。
「のーちゃんの推しはどう?」
「それ、聞いちゃう?」
「聞いちゃう聞いちゃう!」
「なんと……なななんと!」
楓はごくりと固唾を飲み、私の顔に迫る。
私は緊迫感を顔全体に作り上げ、さらなる緊張を煽る。
そしてついに結果を言い渡した。
「出ませんでしたぁ……」
「あああぁぁ~、残念。まあほぼ時幻様だけだったもんね」
「早く出てほしいなあ」
「うぅう、のーちゃんの推しが誰か気になるー」
「教えませーーん」
楓が手をくねくねさせて、私に迫る。
「教えろぉ、推し教えろぉ」
楓の柔らかい手首が私の首を覆う。
だが、楓はすぐにそれをやめ、直立姿勢をとった。
「なんてね! のーちゃんが教えたくないんだったら聞かないよお」
あぁ、やっぱり楓は可愛い~~~~。我慢……できないよぉぉおおぉ!
「もお! 可愛いなあこいつぁ」
圧倒的可愛さに耐えられなくなった私は楓の髪をくしゃくしゃとさせる。楓も白い歯をにぃーっとむき出して、私のお腹をつっつく。
私たちはいちゃいちゃしながら、今日も学校へと歩を進める。
私の朝ってほんと最高!