コメディ・ライト小説(新)
- Re: 推しはむやみに話さない! ( No.8 )
- 日時: 2021/04/02 13:09
- 名前: 狼煙のロコ ◆g/lALrs7GQ (ID: hDVRZYXV)
『#時間と楓は止められない!』
キーンコーンカーンコーン
終礼を告げるベルがなった。
今日の授業ももうお終いだ。なんだか時間の流れが早かったな。
最後に篠崎先生が簡単な報告をして終了。
「みなさんこの学校に来て約2ヶ月経ちましたね。もう慣れましたか?」
何人かの子が小さく頷く。
篠崎先生はそれを見て、柔らかい笑みを作る。眼鏡の奥に見えるその細めた瞳からは、先生の優しい性格が溢れている。
本当にこの先生が担任でよかったな。
「そろそろ友だちも出来てきたでしょうか。高校の友だちは一生の友だち。みなさん、友だちは大切にしましょうね」
そうだ。たくさん友だちが作りたかったからこの高校に入ったんだ。
友だち作り、頑張るぞ!
「それでは今日もお疲れ様でした。週番さん、号令お願いします」
「起立、気をつけ、礼」
「さようなら」
途端にクラスにざわざわと会話が飛び交う。一緒に帰ろうと声をかける子や遊びに誘う子、急いで部活に向かう子など、それぞれが次のことに向けて動き始めた。
「部活だーーーー!」
楓が嬉しそうに両手をあげる。
「相変わらず元気だね~楓」
「だって楽しいじゃん!!」
鼻息を荒くしながら息込んだ。子供っぽいけどそれが楓の魅力でもある。
小麦ちゃんも私たちのところにやってきた。
「た、楽しそうですね」
「うん! 楽しいよ。小麦ちゃんの文芸部は楽しい?」
「え、楓まさか……」
「うむ、そうだ! 一年生みんなの入ってる部活も覚えてるのだー」
「ええ!? す、すごいです!」
「ふふふ、もっと褒めて~」
忘れてた。楓は化け物だった。私なんかとは次元が違うんだ。
しかし6月現在、このクラスの子たちの名前すら覚えられてない私は……。うん、今日暗記しよう!
それが友だち作りの第一歩だな。
興奮しているのか、小麦ちゃんはリボンをいつもよりも大きく揺らしている。楓は自慢げに腕を組み、小麦ちゃんから連発される誉め言葉を聞いて、優越感に浸っていた。
やっぱ子供だ。まあ事実すごいけどさ。
「はい二人ともそこまで! 楓は小麦ちゃんに部活はどうか聞きたかったんでしょ」
「あはは! そうだったね。それでどう? 小麦ちゃん」
すると、小麦ちゃんが途端に目をキラキラさせた。
「はい! 楽しいです! 本当に楽しいです! 今は『草木の町人』の二次創作書いたり、あ、オリジナルの小説も書いてますけど。あと部のみなさんとお互いに小説見せ合ったり、俳句や短歌を書いたり。あとっ、あとっ……」
小麦ちゃんは本当に文芸部が楽しいんだな。思わずにっこりしちゃう。
楓も頬を綻ばせて、小麦ちゃんの話にうんうんと頷いていた。
「部のみなさんは優しいし、それにそれに……あ、あれ? お二人ともどうしたんですか」
「いやぁ、小麦ちゃん可愛いなあって」
「そうそう、いつもその笑顔でいたほうが絶対いいって!」
「そ、そんな……」
小麦ちゃんは顔を真っ赤にして、小さく笑った。
「そ、そうだ! 二人とも何部なんですか?」
「私は女子バレー! のーちゃんは」
「美術部だよ」
「はあぁ、あややさんも大柴さんも素敵です」
まあ美術部っていっても描くのはイラストばっかなんだけどね。小麦ちゃんの感嘆のまなざしを目の前にそんなこと言えないなあ。
一方、楓は本当にバレーが上手くて、中学校のときは、エース。そして県大会出場まで決めていた。
あのときは二人で何度も泣いていたっけ。
きっと高校でも大活躍するだろう。
と、そろそろ……。
「早く行かないと部活遅れちゃうね」
「そうじゃん! 待ってろ私のバレーボール! 二人ともまたね!」
そういって楓は教室から駆け出していった。
「そ、それじゃあ私も……ま、またね……大柴さん! えへへ」
「結構積極的だねえ小麦ちゃん。私そういうの大好きだよ。それじゃ、またね」
「はい!」
こうして私と小麦ちゃんもそれぞれの部活へと向かった。
よし、今日もいい絵描くぞ! 目指すは六間くんを超上手く描くこと! 頑張れ私!