コメディ・ライト小説(新)
- Re: 推しはむやみに話さない! アニメイト編開幕! ( No.12 )
- 日時: 2021/05/12 19:42
- 名前: 狼煙のロコ ◆g/lALrs7GQ (ID: hDVRZYXV)
『#推し会議だからしょうがない!』
キーンコーンカーンコーン
水曜日。今日も終礼のベルが鳴った。いつもと同じ……と言いたいところだけど、ちょっと違う。
クラスのみんながソワソワし始めている。もちろん私も。
教卓に立つ篠崎先生が、コホンと一息ついた。
「えー、みなさん今日は水曜日ですね~」
焦らすような口振りだ。教室内のソワソワが増していっている。
先生はニヤリと笑い、両手で黒縁の眼鏡を正す。
また一息。すると、手の平を教卓に押し付けて、前に体重をかけた。
「そうです。待ちに待った『推し会議』の日です!」
「うおおおおおおおおぉおお!!!!」
「きゃあああああああぁああ!!!!」
その言葉と同時に教室中に大歓声が沸き起こった。みんな拳を掲げたり、抱き合って泣いたりし始めた。
「ついにこの時が来てしまったか。ふっ……」
「やっと、やっとなのね!! みんな、私たちに恵みがもたらされたわ!」
「おぉ、神よ」
大げさ? そんなことはない。至って普通だ。だって推し会議だからね。しょうがないね。
まあ私にはこんな大胆なことはできない。両手を組んで、瞳から少量の涙を流すくらいだ。短い一言を添えて。
「あぁ、感謝申し上げます。ブラジルの人聞こえますか」
まあさっきまで私も雄叫び上げてたんだけどね。だって推し会議よ? それくらい許してもらわないと。
先生が教卓をトントンと指で叩く。
「はーい静かに静かに~。さっさと話終わらせて、すぐ推し会議行きましょうね~」
「先生! それは無理なお願いだぜ! だって推し会議だぜ? しょうがないだぜ」
前の席の蛇瀬くんが机の上でブレイクダンスをしながら、申し立てていた。
あまりにも強く手を押し付けたせいで、教卓ごと倒れそうだが、絶妙なバランスで保っている先生もそれを聞いて大きく頷く。女の先生だからね。バランス感覚がいいんだきっと。
「蛇瀬くんの言い分も分かりますが、これが終わらないと推し会議行けませんから。10秒で終わらせるので我慢して下さいね」
「分かったぜ。先生」
蛇瀬くんは素直に席に着いた。
先生もニッコリ笑顔で、バランスボールならぬバランス教卓をしながら話を続ける。
「一つ。今日の推し会議楽しも。二つ。中間テストまで一カ月切ったよ。べんきょしよ。三つ。朝の曲がり角暴走族に注意だよ。以上、解散!! 気をつけ礼、さよ!」
「さよ!!」
本当にジャスト10秒で終わらせ、挨拶も雑に終わらせた。
推し会議だからね。しょうがない。
みんな一目散にそれぞれの会議室へと向かっていった。先生もだ。
私と、もう一人残して……。
私も早く行かないと。
教室から出ようとしたその瞬間だった。
「あ! 待ってよ。野花ちゃん」
……声をかけられてしまった。なるべく近づきたくなかった子。名前は……。
「どうしたの? 前萌ちゃん」
「え~。たまたま二人きりになったんだもん。少し話したいなあって思ったの~」
たまたまなんて嘘だ。あえてだ。あぁ、私もさっさと教室から出ればよかった。
前萌 寧音。
おそらく、私の推しを暴こうとしてる子……。