コメディ・ライト小説(新)

Re: 推しはむやみに話さない! ( No.17 )
日時: 2021/06/20 13:07
名前: 狼煙のロコ ◆g/lALrs7GQ (ID: hDVRZYXV)

 『#アニメイトの人だかりがハンパない!』

「着いたー! やっぱ人いっぱいいるねーー!」

 楓がアニメイトの入り口で大きく手を広げた。私を含めた他のみんなも、興奮が抑えきれていない。
 
 夕星アニメイト。夕星駅の真ん前に位置する日本、いや世界最大級のアニメイトだ。とにかくでかくて広く、建物の中でも五つのエリアで分かれている。
 人気アニメからマイナー漫画まで、幅広いグッズ展開が魅力であり、欲しいグッズは大体ここに行けば売っている。それ故に世界各国のオタク達から支持されている。いわば、オタクの聖地。そして、この街の象徴である。

 しかし、そんな夕星アニメイトがなんと今日に限り、ただ一つの作品のグッズのみを販売するらしい。
 建物の壁にも、その作品の特大ポスターがいくつも貼られている。

 そう、『草木の町人』だ。

 さすが、超人気作品。こんな異例のイベントを巻き起こすなんて。おかげでアニメイト内外、大勢の人だかり。コスプレイヤー、外国人、テレビ取材陣……。多種多様な人達が押し寄せている。

「ほらみんな、早くしないと目当てのもの売り切れちゃうよ! 急ごー!!」

 おっと、いけない。この状況に圧倒されていた。
 アニメイトに入る前からこんなんじゃだめだめ。
 
 楓の言葉に従い、みんなアニメイトの入り口を通った。

「ほ、ほんとにすごいですね。はぅぁあ」
「ちょっと暑苦しい」

 小麦こむぎちゃんも、未来みくちゃんもなんだか既に疲れてしまっているようだ。
 そんなんじゃだめだ二人とも! 私が鼓舞したる!

「二人とも! 勝負はこれからだよ! 今そんなんじゃ推しの梅雨コスの尊さに萌え死んじゃうよ! 頑張れ!」
「は、はい。そうですね。私、頑張ります! 勝負じゃない気はしますが……」
「その暑苦しさに燃え死ぬ」

 ありゃ、良いリアクションが貰えなかった。その冷たい反応で、少し涼しくなりました。ありがとうございます!

 まあ、とりあえず早く買わないといけないし、さっさと別行動に移りますか!

「それじゃ、今から別行動で。一時間後またここに集合ね」

 私の言葉にみんなすぐに相槌を打って、早速買い物を始めようとする。
 同時に、キキはまた未来みくちゃんに飛びついた。

未来みくーーー!!! 一緒に行こーー! アニメイトデートしよーよー!」

 キキのデートのお誘いに、未来みくちゃんはいつも通り丁重にお断りする。

「無理ダメ嫌だ私は一人で買う推しもバレたくない」

 その言葉にキキも分かりやすくガッカリして、推しである阿連武あれむのコーナーに向かっていった。それに続き、かえで時幻じげん様、小麦こむぎちゃんは永音えいねのコーナーへと移動する。
 そして、私と未来みくちゃんが残るのだった。

「それじゃ私も行く」
「うん、それじゃまたね」

 私は、エレベーターに向かう未来みくちゃんの背中に手を振った。
 そのまますぐに、反対側にあるエスカレーターで三階まで上る。

 『草木の町人』の女性人気投票二位である、美知留みちるちゃんの梅雨コスを買いに行くために。