コメディ・ライト小説(新)

Re: 推しはむやみに話さない! ( No.21 )
日時: 2021/08/01 14:18
名前: 狼煙のロコ ◆g/lALrs7GQ (ID: hDVRZYXV)

 『#沈黙をずっと続けたくない!』

「え、え~っと。誰か叫んでるね。どうしたんだろう」

 私はその場しのぎに適当に話を振った。は、いいものの。

 やばい。すごく返事が返ってきづらそうな事言っちゃった。これじゃ沈黙が続いちゃう。

 私はただあたふたと手を動かして、あーとかうーとか言うことが出来なかった。
 そんな私を見かねてなのか、未来みくちゃんは閉ざしていた重い口をゆっくりと開き、「ええそうね」と軽い相槌を打ってくれた。

 あれ、なんだか目のあたりが温かく……。

「ちょっとなんで泣いてるの!?」
「ううぅ。てっきりこのまま無視され続けるのかと」
「そんなことしないていうかそもそも無視もしてない」
「えっ? バリバリしてた気がするような」
「……それは少し考え事をしていただけ」

 とりあえず怒ってはいない? よ、良かった。いや待てまて。さっき大きくため息をついてたよね。しかも今一瞬、間があったし。
 つまり、本当はめちゃくちゃ怒ってるけど我慢してるってことかも。うん。やっぱりちゃんと言うこと言わないとね。それに──それが私らしい。

「ねえ未来みくちゃん。今日は半ば無理やりにアニメイトに来させちゃって、本当にごめん! しかも未来みくちゃんはずっと推しがバレないか心配してたのに、こうやってバッタリ私と出くわしちゃって」

 未来みくちゃんは冷静に、前髪一つ揺らさず、ただ淡々と、いつものように低く切れ目のない口調で返した。

「別にそれは謝る事じゃないそれにここで出くわしてまずいのはあなたも同じ」

 え、未来みくちゃんってこんなに優しかったんだ。いつも素っ気ないし、キキには罵倒を繰り返しているから私てっきり……。
 でもそっか。キキが好きになるんだもん。未来みくちゃんがそんなひどい子なわけないよね。

 それはそうと、未来みくちゃんすごい勘違いしてる!

「あのね未来みくちゃん。ちょっと言いづらいんだけど……私の推しはここにいないんだ」
「は?」

 って、うわー! なんてこと言ってんだ私。
 未来みくちゃんは私の推しもここにいると思って、お互い様って言ってくれたのに。これじゃ今度こそガチで怒っちゃうよ。いや既に「は?」って言っちゃってる! バカ! 私!

 って、また深いため息ついちゃってるー。も、もしかして……。

「み、未来みくちゃん?」
「……」

 ……。

 …………。

 ………………。


 
 オ、オワターーーーーーーー!

「モモちゃーーーん! シシちゃーーーん! 隠れても無駄ですわよーーーーーー!!」

 なんかきたーーーー。さっきの声の子じゃん。しかもなんかなんかなんか。

 こっちに走ってきてるーーーーー!!
 待って待ってまてまて、これ、ぶつか……

「うわ!」
「ですわ!?」

 猛スピードで走り来る女の子を私はよける暇もなく、そのままタックルされてしまった。

「なにどうしたの」
「あ……っ。良かった未来みくちゃん喋ってくれた……がく」
「なんでこの一瞬で情報量過多になってるの」

 え? 情報量過多? どゆこと?

「痛いですわ! しつ!」
「お嬢様。だからあれほど店内では走るなと。お二方、大丈夫ですかですぞ? 特に下の方」
「え、あっ、はい。っん?」

 私の目の前には、ピンク色の派手なドレスを着た小柄な女の子に、超高身長イケメン執事(?)、そして周りには黒いサングラスに黒い服を身に着けた人たちが大勢並んでいた。

 本当に……一体全体どういうことだってばよ。