コメディ・ライト小説(新)

Re: 幻想エリュシアプリズン【ストーリー始動】 ( No.2 )
日時: 2021/09/06 21:44
名前: 雪見餅 (ID: 0LEStScZ)

  2話 帰らない

「私が元ランク1位なら、透は現ランク1位という事になりますが?」

「俺が悪かった。月音、その話は辞めてくれ。」

ランクの話を持ち出すと、やめてくれと頼んでくる。
透は自分が褒められる事がどうにも好きでは無い、とか。
そして、二人でダンジョンへと向かった。

「そういえば、透って彼女居ないんでしたよね。告白してくる人も多いんでしょう?彼女作ったらどうですか?もうエリュシアが現実みたいなモノですし。」

「まぁ、告白される事は良くあるが、全部断ってるな。何というか、他に好きな人いるし。そういう月音はどうなんだよ。」

「私は告白なんて一度もありませんし、恋愛感情を持った事がありませんね。彼氏作ろうとかいう考え捨てて来ましたから。」

二人で他愛ない会話を繰り返す。
エリュシアに囚われる前、一度だけ現実で会う約束をしたのだが、まぁ叶う事は無かった。

天雷撃サンダー。ていうか、何で俺達、ただのゲームに囚われたんだろう。帰れないのかな。」

「現段階では到底無理でしょうね。運営からの情報を待つしかありません。まぁでも、現実世界なんて帰りたくない場所に帰るのもどうかと思いますからね。」

現実世界には帰りたく無かった。
帰ればきっと、そこは牢獄の様な場所だと知っていたから。
周囲の者の対応は、冷たくて氷の様で、優しい人なんて何処にも居ない。

「現実世界に、何かあんのか……。そんな顔されたら、流石の俺も何か疑う。俺に言ってみろ。」

「家族は皆、私を軽蔑し地下牢へと入れました。ある程度の自由は許されていますが、地下室から出る事は出来ません。周囲の者は私を冷酷な目で見るのです。私は、あの牢獄にもう戻りたくはありません。」

透はその情報はごく一部だけの情報だと、他にも沢山隠している事が分かった。
恐らくはもっと酷い事、なのだろうか。
この情報だけでも酷いと思うのに、実の娘を牢獄に入れるなんてと思うのに、それを越える事……。
今はまだ、何も触れてはいけないとそう思った。

「そうか。かなり酷いな、じゃあその分俺達が楽しくなる様にしてやるからそれで我慢しろ。」

「本当に、外の世界は優しい人が沢山いますね。」

ニコリと笑顔を見せた。
本当に、辛そうな顔をしていた。