コメディ・ライト小説(新)
- Re: 幻想エリュシアプリズン【ストーリー始動】 ( No.6 )
- 日時: 2021/09/09 23:08
- 名前: 雪見餅 (ID: 0LEStScZ)
4話 溢れた雫
ああ、どうして私はこうも簡単に弱音を吐いてしまうのでしょうか。
エターナルホワイトの皆の前では、絶対に弱音を吐いたり、泣かないと決めたのに。
自分が身の危険に犯されていると知った途端に、直ぐに弱くなってしまう。
「っ……!」
「ちっ……早く死ねよ!」
「痛い……やめて……もうやめて」
敵に許しを乞うなんて、愚かな事をしたものです。
早く、この痛みと恐怖から解放されて、自由な世界に飛び立ちたい。
____
「総員、旧魔王領へと転移する。我等の姫を、取り返すのだ。」
おー!と熱意の込められた気合いが入れられた。
転移を行うと、そこには両手を鎖で繋がれ鉄の籠に入れられた月音がいた。
鎖を鑑定するが、魔力を吸い上げる鎖の様で、その魔力が男の方にいっている事と、月音の魔力が切れ生命力を削っている事が分かった。
「随分遅かったな。貴様等が姫と呼んでいる者は俺の現実の関係者だ。こいつは俺が引き取る。」
「嘘を付くのが苦手な様ですね。お前は月音を現実で虐待していた……月音の親が雇ったそういう奴だ。」
「ふっ……バレているのなら仕方無い。隠す必要性が無いなら直ぐに冥界へ送ってやる。」
容赦なく魔法を撃ってくる。
あの速度と威力で何故撃てるのかと考えれば、月音の魔力を使用する事でそれが出来るのかと結論に至った。
「天雷撃!……月音!」
「ぐっ……あっ……とお…る」
確実に影響が出ている。
早くやらないとヤバい。
「貴様等は俺の魔法を避けるので精一杯。エターナルホワイトってのはそんなに弱いのか…?w」
煽りながら、月音に虐待をしていくその姿に、流石に俺もガチで怒ってしまった。
俺は普段余り怒らない。
だからこそ、俺が怒るのは特別な時だけだった。
「暴食の杖、顕現せよ。今かの者に裁きの鉄槌を、天裁雷撃」
普段使う事の無い暴食の杖。
周囲のエネルギーを吸う杖で使い道は無いが、今は自分の怒りのエネルギーで魔法に補正が掛かっている。
『憤怒』の称号を唯一持つ俺なら、憤怒の杖が良いのだろうが、そんな杖は見つからなかった。
「貴様……何の真似をっ!……俺はまだこいつを回収するまで死ねないってのに……!」
「俺達の姫を奪ったんだから、死刑は確実だよ。」
とどめの一撃を喰らわせる。
多分、死んだはずだ。
そして月音の方を助ける。
普段心強い月音が、涙を浮かべながら気絶していた。
「どうしてこんな時ばっかり……。」