コメディ・ライト小説(新)

Re: カラフル!! ( No.3 )
日時: 2021/09/15 21:52
名前: 花桜咲 ◆WBRXcNtpf. (ID: 7VvLld12)


 誰かが寝るまで終わらない謎のゲーム。
できるだけ大人数でできる遊びをたくさん用意してください。トランプなど。好きなものを何回でもやって、最後まで起きていた人が勝ちです。トランプなどのゲームの勝敗は関係ありません。


 「ねむたいのー。もう寝ない?」
 若葉わかばがババ抜きをするために配ったトランプを持ったまま、隣りに座っていた琥珀こはくの膝にコテンと倒れる。
琥珀は若葉の頭をよしよしと撫でる。
「わかば姉ちゃん、誰が1番起きていられるかのゲームだよ。だから起きとかないと行けないの」
「そーだったねぇー。忘れてたー」
 その間に紫苑しおんがササッとセットになっているカードを捨てていく。

 ここは小さな家……ではないのだが、私達の家。この町一番の大豪邸。今となってはお金持ちでもなんでもないし学校も奨学金で行かせてもらっている。借金をしたわけでもないきなり貧乏になったわけでもないけど。今の私達には両親がいない。銀行にかなりのお金だけが残されて両親はどこかに行ってしまった。

 「ふふふーきゃらさまにはジョーカーの位置なんてお見通しなのだー!」
 今度は伽羅きゃら瑠璃るりカードを引く番。
伽羅はそう言ってるけど、深夜テンションで盛り上がるまで普段の無表情かつ無反応の瑠璃に勝つすべはないと思うなー。
「ぎゃあ!!」
 思ったとおり伽羅がジョーカーを引いたみたい。
瑠璃に比べて……というよりこの6人の中で1番思ったことを顔に出してしまうタイプだから分かりやすい。
でもその割に運が良くてババ抜きに勝てないというわけではない。
でも次は私が伽羅のカードを引く番だよね……。
ああっ……。
伽羅が瑠璃のジョーカーを引いたということは間違ってなかったみたいだけど……。
私に回ってきたじゃん!! 今、私顔に出てなかったよね……?
琥珀が私のカードを知っているかのようにスッと1枚取り、
自分の手持ちのカードとセットにしてポイッと捨てた。
その間、琥珀は表情を変えることなく平然とゲームを進める。
今まで私達のババ抜きで一番負けていないのは琥珀。
普段は表情をあまり変えない。ときに騙すような笑み。
「わかば姉さんの番だよー」
「うひょ!?」
 ボーッとしていた若葉に琥珀が声をかける。
「うんとねー……どれにしようかなっと」
 若葉は1枚のカードを引き揃うわけでもなく次の人にターンを回す。
紫苑は若葉を試すように1枚1枚カードを触りカードを選ぶ。
ババ抜きは私が一番弱いのか?
うむむむ………。
「あーー負けた……。」
 やはり負けたのは私。このゲームの勝敗は関係ないんだけど……。1番に抜けた若葉はすでに寝てしまっている。
「もう一回やるー?」
「次、人生ゲームしない?」
 人生ゲーム……。1ゲームに時間がかかるからゲーム中に寝る人がいそう。
うーん…眠い……。

・・・・・
 
 「あーあ。紫苑姉ちゃんと朽葉くちば、寝ちゃったねー」
 いつも明るい伽羅と深夜テンションで盛り上がってる瑠璃とこはくが起きていた。でも伽羅はいつもより疲れているように見えるし、瑠璃はそろそろ深夜テンションがオーバーヒートする頃だろう。
って、コテンと瑠璃はもう寝ていた。
「じゃあオセロする?」
「伽羅姉ちゃんがいいならこはくもいいよ」
 数分間パチッパチッとオセロを置く音だけが響く。伽羅がうとうととし始めたとき決着がついた。伽羅はこういうボードゲーム系が得意のはずだけど、頭があまり回っていないらしくこはくの圧勝だった。
「今日も、こはくの勝ちですね」
「むにゃ」
 その伽羅の返事が合図のようにこはくの真のゲームに勝利となった。
「ふう。みんな寝ちゃったなぁ…。こはくが勝ったねー」
 時計を見ると深夜2時を超えていた。
明日は始業式なのになぁ……。
みんな遅刻しないかな……?
紫苑姉ちゃんがいるから弁当は大丈夫だとして、まあ大丈夫かな。遅刻してもそれはそれで中学最初の思い出として。
だめか。どうにかなるでしょ。
 広いリビングに6人がぎりぎり囲めるような小さな丸机。リビングのすぐ横の部屋に引いていた布団はこうなってしまったら運ぶすべもないから使わない。ふぅ。

・・・・・

 普段通り紫苑は5時に起きる。
パカッと卵を4つ割り混ぜて出汁を入れる。それをフライパンにいれる
ジュゥワァッ
と、いい音がなり少しづつ卵が焼けていく。
出汁巻きを作っているのだ。
 2番目に起きていくるのは琥珀だろう。昨日のゲームで最終的に勝ったのは多分、琥珀だと思うけど。
 考え事をしていながらも紫苑の手はなれたように手際よく弁当のおかずを作っていく。
「おはよ~。紫苑姉ちゃんいつもありがとね」
 やはり琥珀が起きてきた。
「おはよ琥珀。朝起きてすぐにゴメンだけどお米洗ってくれる?」
「了解です」
ジャーーー
水が流れる音がして琥珀がお米を洗う。
次に起きてきたのは瑠璃。
その頃にはおかずを作り終えご飯も炊き上がっていた。
おかずは冷ましてから弁当に入れ蓋をする。
6人分の弁当を作るのってやっぱり大変だな。
先に私達3人は朝ご飯を食べて学校に行く準備をする。
「ねえ……流石に起こさないとやばくない?」
 いつの間にか7時半で家から学校まで20分ほどかかるから、いくら速くて10分で準備ができるとしても起こしてあげないと、たしかにやばいかもしれない。
「わかばーきゃらーくちばー!! おきろー!」
 紫苑の大声で伽羅と朽葉は起きたものの、若葉は
「むにゃむにゃもう……おにゃかいっぱい……」
 寝言を言っている。
「若葉、わーかーばー!」
「わかばー」
 声をかけても起きる様子がない。
「どうしよう?」
 安心しなさい。大丈夫だから。
「若葉は食い意地張ってるから………」
 そう言って紫苑は若葉の耳元で言う。
「起きないんだったら、若葉のぶんの朝ご飯私が食べるけどいいよね?」
「ふぎゃ!! だめだめだめ。だめだよー!」
「ほんとに起きた」
 琥珀が驚いたように呟いた。流石、若葉の食い意地。若葉は飛び起きて猛スピードで朝の準備を始める。若葉が朝ご飯を食べ終わるとすぐに瑠璃と私がお皿を洗い始める。
そして、琥珀と準備が終わった朽葉と伽羅が結局使われなかった布団を片付けて行く。
「じゃあ出発しよっか」
 順に靴を履いて家から出ていく。
「うはー。みーんなおんなじクラスだったらいいなー」
 若葉はフワフワーっとつぶやく。
「いやーそれはないんじゃない?」
「だねー六つ子にピッタリの6クラスだもんね」
 きれいに分かれるだろうなー。
顔が同じの私達のこと。同じクラスだった場合誰が誰だかわかんないでしょ?
「ふーふふーん」
 若葉が楽しそうにスキップをする。
「そんなに楽しみ?」
「あったりまえじゃん」
「きゃらさまの人気は六つ子で一番だもんね!」
 家から学校までは上り坂に下り坂が続く。距離的には20分ほどだと思っていたけど……もっと時間がかかるかもしれない。多分40分ぐらい。さっき家を出たのが7時45分だったからここまで来るのに約5分…………?
「このままじゃ遅刻寸前!! 走れ!!」
「えっ!!!」
 一番最初に走り出した私。
「待ってよ、紫苑!」
 その後に続くようにみんなが走り出す。
時間的には危険だよ……。
「ひゃっほーーーーー!!!」
 こんな状況でもハイテンションの伽羅。こういう思い出を作るのも楽しい!!

・・・・・

 はぁ……はぁ…… 
遅刻にはならなかった!!
良かったよおおおお………。
「あー楽しかった!」
 伽羅はあれだけ走ったのにそれほど息が切れていなくて楽しそう。
「クラス確認しよ!!」
 若葉が笑顔で言う。
普段は表情に思ったことを出さない瑠璃も笑っていた。