コメディ・ライト小説(新)
- Re: 閻魔の娘が人間界を観察するそうです。 ( No.1 )
- 日時: 2021/09/18 18:41
- 名前: 柊 (ID: r306tAcU)
第1話 『地獄はトラブルでいっぱいです!』
ここは地獄。生前に罪を犯した者が死ぬと送られる所である。
しかし、何か様子がおかしい。
そう。人が溢れ、今にも地獄から溢れ出しそうなのだった。
それを見た現、閻魔大王の骸は苦虫を噛み潰したような顔で呟く。
「……最近、地獄送りにした者が増えている。人間界は一体どうなっているんだ?」
そして、骸はふと後ろを見る。
そこには美しい女性が布団に横たわっていたのだ。
その女性は魅琴女王。骸の奥さんである。
魅琴は、病に脅かされていた。
そんな彼女を見つめ、骸は悲しそうに項垂れ、こう大きな声で言う。
「羅鬼!羅鬼はおるか?」
建物に声が反響し、何度も声が重なって聞こえる。
刹那、鈴のチリン。という音と共に、少女が現れた。
その少女は怪しげに口角を上げるとこう呟いた。
「お父様、一体………どうされたのじゃ?」
鈴を転がしたような可愛らしい声と古風な喋り方。
彼女そこが骸と魅琴の子供。羅鬼であり、次代の閻魔女王である。
羅鬼が近くに来たのを確認すると、骸は静かに呟いた。
「羅鬼……少し人間界を偵察してくれないか?」
骸は椅子から立ち上がり、魅琴の元へと歩く。
「地獄に溢れる人間……魅琴の病。そして鬼達の消息……何か人間界であったのかもしれない」
眉間に皺を寄せ、怒りの籠った声で言う。
骸の言うとおり、地獄では問題が多数発生していた。
そこで、人間界で何かあった。そう思った上での決断だ。
「と、言うと……人間界の学校という物に潜入すれば良いのじゃな?」
羅鬼は全てを理解したように言うと何度も頷く。
そして、悲しげな顔をして魅琴に近付いて、頬を撫でた。
「……お母様も早く良くなって欲しい。地獄の姫として、腹を括ろう」
「頼んだぞ……我が娘…羅鬼よ」
羅鬼は安心させる様に微笑むと人間の姿に変化した。
そして、鞄を生成して必要な物を出していく。
「こんなものかの………名前は……閻羅慎にしよう」
羅鬼………いや、慎は人間界に移動しようとする。
そして、体が消えかかる中、骸にこう言った。
「いって参ります。お父様」