コメディ・ライト小説(新)
- Re: 閻魔の娘が人間界を観察するそうです。 ( No.3 )
- 日時: 2021/09/19 12:07
- 名前: 柊 (ID: r306tAcU)
第3話 『地獄の姫、悪い輩を成敗します!』
やり取りを遠目から見つめる一人の女子生徒。
その少女は頬を紅潮させ、手足を震わせていた。
「地獄は………本当にあるんだ……」
そう呟くと慎をじっ、と見つめて更に顔を赤くした。
するとその少女はおもむろに懐の本をペラペラと捲る。
「……この本は嘘をついてない!」
この本、とはその少女が愛読している地獄についての本だ。
その時、男子生徒がその少女の本を取り上げる。
「まぁたこんな本を読んでるの?気持ち悪りぃ!」
男子生徒はそのままその本を床に打ち付けて破っていく。
「……あ、やめ……てよ」
少女は泣きそうになりながらそう訴えるも、男子生徒はそれを愉快そうに見ながらニヤニヤと笑った。
何を描くそう少女はオカルトが大好き。そのせいで色んな人に気味悪がれているのだ。
騒ぎは大きくなり、話が盛り上がっている慎達にも届く。
「……む、あれはなんだ」
慎は少し眉を寄せて言う。
どうやら、面白くないと思っているらしい。
「あぁ、あれは……行かない方が…って慎さん!?」
生徒の忠告を無視し、慎は席を立ち上がると男子生徒と少女の元へと歩いていった。
◆
男子生徒は少女の本をボロボロにすると、満足して立ち上がる。
少女は涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっていた。
そこへ、慎が近付く。
「……お前、そこの少女を苛めて楽しいか?」
「あ?なんだてめぇ?転校生は引っ込んでろ」
と、男子生徒が慎の事を押そうとする。
しかし、力を加えても慎が倒れることは無かった。
「……なっ、なんだコイツ…化け物っ…」
「化け物とは失礼な。お前の力が弱いだけじゃ」
慎はクスクスと笑うと、怒っている男子生徒を無視し、ハンカチを取り出して少女の顔を拭いた。
「大丈夫か?もう安心しろ」
少女はコクコク頷く。
慎は安心すると立ち上がり、男子生徒を見つめた。
「……人を苛めるなら地獄に落ちる覚悟がある…その認識でいいかの?」
男子生徒はただならぬ物腰に少し怖じ気づく。
「……だからなんだよ」
「苛めるなら送ってやってもいいなぁ、あん?」
「……ひっ、すっ、すいませんでしたっ!!」
慎の覇気に負けたのか、男子生徒は尻尾を巻いて逃げていった。
その瞬間、黄色い歓声が辺りを包んだ。
「慎さんカッコいいっ!」
「閻羅さん、友達に……!」
男女問わず生徒に囲まれ、慎は少し嬉しそうに笑った。
「妾に掛かれば……こんなものじゃよ」