コメディ・ライト小説(新)

Re: ちいさないのち ( No.10 )
日時: 2022/05/13 16:45
名前: 月雲 瑠依 (ID: dzc33jqI)

「愛らしい 少女」

わたくしには親友と呼べる者がふたり、おりましたの。

1人は麗華れいかという一つ歳下の少女。
もう一つは、昔母から頂いた日傘。

きっと麗華はともかく、日傘とは?と思うでしょうね。日傘に宿る魂と、仲が良かったのです。

一般論で言う、付喪神つくもがみ…と呼ばれる者たち。大切に物を扱うと現れるとても、ちいさな神様。


___ちいさないのち


月がいつにも増して綺麗に輝きを放っていました。少し肌寒く、少し疲れていて…
それで、風邪を引いていたあの日。

日傘の付喪神と出逢いました。

…まま

と、言う声を聞いた時には驚きでいっぱいでした。まさかこの歳で「ママ」と呼ばれる日が来るとは思わなかったので。

いつしか「ママ」と呼ばれる日は無くなりました。私たちが親友と呼べるような友情を育んだからです。

…アイラ

私の名前は呼び捨てで呼ぶのです。
それに少しはしたない。男の子だから仕方ないのかな?…とは思いますが…それでは差別になってしまいますね…

もう少し上品になってくださらないと私…いいえ、それはやはり良いのです。

とても、頼りにはなりますから。



朝、私の名を呼ぶ声がしました。
アイラ、アイラと、何度も。

私は目覚めが悪いので彼にはすごく迷惑をかけておりますが、朝に大切で大好きな友人に起こされるというものは私に1日頑張る為のチカラをくれるので、私的には…嬉しい事です。

それに、目覚めた時に彼は枯れた大地に咲く一輪の花のように美しく、凛々しい笑顔を魅せるのです。

そうして、おはよ…と一言申し、私の頬へとキスをするのです。

そのちいさな身体で、そのちいさな唇で
その…ちいさくて、おおきなこころで。


そうして静かに始まる1日。

朝ご飯をいただいて、午前中は勉強。
昼食後、日傘の彼を連れて麗華の元へ行く。

麗華はかんなぎの少女。

仲良くなったのは彼女の筆の付喪神、
仲良くなったのは私の日傘の付喪神、

2人の男女の付喪神が、私たちを引き合わせました。

付喪神のもちぬしは、他の付喪神を視る事は叶いません。

麗華は巫だもの。特別なチカラで視えるのでしょう。私は…何故でしょうか。

視えてしまいました。

そして麗華が、付喪神に執着してきているのも…わかっています。


ある日、突然付喪神は悪魔だと言い出しました。
彼女の家で何かがあった事は察しがつきましたが、何があったのかは訊いても黙秘ばかりでわかりません。

ーねぇ、ねぇっ…麗華!?ー

彼女は変わる。
明るい性格は冷たく凍り、
華やかな心は悲しく叫ぶ。

付喪神は本当は悪魔などではありません。
私にはわかります。私と共にした日傘の彼は、だって、だって…

美しい心ですから!

とはいえども麗華…あの子があんな事言うなんて信じられないの…。

私は取り敢えず彼女に従う事にしました。
この子がどうしてこうなったのか、探るため。助ける為に。

私は…あなたを信じてる。
あなたは、日傘の付喪神の様に、綺麗で華やかな人だから。

付喪神の事を人と言って良いのかわからないですが…。

ねぇ、お願い…お願いです…!
麗華っ…元のあなたに、戻って!!