PR
コメディ・ライト小説(新)
- Re: ハッピーバイバイバレンタイン ( No.1 )
- 日時: 2022/02/14 23:00
- 名前: 永久 知音 (ID: hDVRZYXV)
二月十四日、それは様々な愛が交錯する日。
普段秘めている情愛を、友愛を、敬愛を一つの形に変えて贈る日。
そして、心の奥底に眠るまだ見ぬ気持ち、忘れてしまった感情を見つけるきっかけとなる日。
まさに、想いとの出会い、それが今日、バレンタインである。
しかし、そんな日に親友との長い別れを惜しむ男子高校生が二人。
朝方の比較的人通りの少ない駅のホーム。
一本の新幹線の開いた扉を境として、二人は互いに見つめ合っていた。
「これで、お前とも長い間会えないな。テル」
そう言ったのは、テルと幼い頃から苦楽を共にしてきた存在、サクだ。
「ああ」
テルは親友のサクに短く返事をする。
普段はサクと多くの言葉を交えていたが、今は別れの時だからか、はたまた朝早くから起きたせいで寝ぼけているのか。
気持ちがあまり高揚としていないのは確かだった。
そんなテルの姿を見ても、サクは笑顔を絶やさない。というかいつも以上の満面の笑みだ。
「俺と別れんのがそんなに嬉しいかよ……」
やはり不服そうなのはテルで、悲しみとわずかな憎しみを混ぜた睨みをサクに放つ。
もちろんサクはすぐに両手を細かに振り、否定をする。
「あー違う違う。そうじゃなくてほら、せっかくの最後の別れだからよ。長い別れだから……」
サクは一瞬真剣な顔で何かを伝えようと、テルの瞳にまっすぐ視線を集中させる。
が、すぐに目を逸らし、笑顔を作ってからまた向き直る。
「別れ際に親友に見せんのはとびっきりの笑顔ってそう決まってんだよっ!」
「……ありがとうな」
「いいってことよ。なんたって俺はお前の親友だからな!」
テルはひそかに感じる。この一時が、今までの人生で最も長いことを。
もしかしたら、自分自身でそう願っているからかもしれないが。
新幹線の扉は、まだ閉まらない。
PR