コメディ・ライト小説(新)
- Re: ハッピーバイバイバレンタイン ( No.2 )
- 日時: 2022/02/14 23:03
- 名前: 永久 知音 (ID: hDVRZYXV)
「それにしても、テル、すごい『荷物』だなあ」
そう言って、サクはテルが持つ一つの大きな紙袋を指差す。
テルはその中身を見ながら、若干嬉しそうに呟く。
「まさか、こんなにもらえるなんてな。俺ってけっこーモテてた?」
そう、紙袋の中にはチョコレートなどのお菓子や手紙がぎっしりと詰まっていた。
「やっと気づいたなこの鈍感系主人公野郎め。よりにもよってバレンタインの時期に転校って。そのせいで女子のチョコ、お前に集中してんだぞ! たぶん今日何ももらえない男子続出だ。俺とか俺とか俺とか。この恋泥棒め!」
「いやぁ。ごめんなぁ」
口ではそう言うものの、その表情に申し訳ないなどという心持ちは全く感じられない。
テルはとてもニヤついていた。ニヤニヤニヤついていた。
しかし、テルはすぐにある事実に気づく。
「その割には、今ここにいんのはサクだけなんだな。やっぱりみんな俺に気を遣ってチョコを……」
テルは悲しげながらもどこか納得している様子だった。
だが突然、サクに肩を強めに叩かれ、サクの後ろ、つまりホーム側に視線を促される。そこには……。
「女子の……死体の山……っ!?」
なんということか、自分の高校の女子達がみな、ホームで気絶し、寝そべっているではないか。
駅員さんが、他の人に迷惑にならないよう、女子達を引いて、一ヶ所に積み上げている。
その衝撃的な光景に二度三度、目を擦っては見るを繰り返す。
「お、お前、一体何を!?」
「俺はじゃんけんに勝っただけだぞ」
「じゃん……けん……?」
脈絡のない急展開にテルは疑問を抱かざるをえない。
サクは自慢げにことの経緯を話し始めた。
「実は昨日、お前に内緒で全校生徒でじゃんけん大会を開いたんだ。優勝者には、テルとこの場で最後に話す権利を与えられたんだ。んで、俺が優勝したってわけ。後ろの女子達は優勝できなかったショックで倒れてんだ」
「おいおいまじかよ」
さすがに話の規模がでかすぎる。なにより自分がそんなにモテてたのが驚きだ。
「てかサクが勝ったのかよ」
「当たり前だろ。なんたって俺はお前の親友だからな!」
それは親友だからどうこうのレベルを超えていると思うが。
そう言おうとしたが、やっぱやめる。
新幹線の扉は、まだ閉まらない。