コメディ・ライト小説(新)
- Re: SBB(Star Baseball Boys) ( No.1 )
- 日時: 2022/08/09 22:12
- 名前: ジュール (ID: SkZASf/Y)
プロローグ
僕の名前は犬井柴助(いぬいしばすけ)。東京都立光ヶ丘(ひかりがおか)高校野球部の部員です。といっても、先日入部したばかりの一年生ですけどね。
実は僕はシニアで野球をしたことがあって、そこそこできる方だと思っていたけれど、やっぱり強い所はレベルが違っていて、強い所には入れませんでした。
かといって、入学した光ヶ丘高校は部員もろくにそろわない学校で、三年生は一人しかいなくて、二年生も三人しかいない。その上、今年は野球部の顧問が辞めて、代わりになる人も女の人だって言うから、弱小以前の高校だ。
まあ、愚痴たってしょうが無いけれど……せめて試合ができるようにはなりたいなあ。と、そんなことをつぶやいていた所だった。
「お、ここが野球部のグラウンドかな?」
「調べ通り、全然人いねえな!」
「言っただろ、この高校なら一年から出られるって」
「でも、少し少なすぎじゃね?」
「別に、年功序列が無い所ならかまわない」
急に、ぞろぞろと五人の男達がグラウンドに入ってきた。
「おーい、そこの人! 野球部の入部届って、誰に出せば良いんだ?」
「あ、はい。キャプテンの三年生に言えば良いと思いますよ」
「おう、サンキュ! というわけで、俺たちはここに宣言する! 俺たちは……」
「このチームで、甲子園に行くぜ!」
そう大声で宣言したこの男に対して、僕は「何言ってんだコイツ」って顔をしただろう。だって、人数も彼ら合わせて十人、まともな指導者もいないこのチームで、甲子園に行くなんて無理だと思ったから。
「あのー、甲子園は少し難しいんじゃないかと思うんですけれども……」
「もちろん、一年目から行けるなんて思ってないが、俺たちの力があれば、きっと勝てるぜ!」
「そうだね。いくら僕たちでも一年目からは行けないよ」
「俺がかっ飛ばす! それで良いだろ?」
「そういう頭の悪い点の取り方じゃあ、いつまで経っても勝てないよ」
「俺が塁に出ればモーマンタイだよな」
自信満々にそう語る五人を見て、僕はこの五人を見たことがあるのを思い出した。
「えっ、き、君たちは……!」
「シニア全国ベスト4投手! 投打にハイレベルな男尾上博之(おがみひろゆき)!」
「その眼は相手を蜘蛛の糸のように絡め取る! 頭脳派捕手雲井俊樹(くもいとしき)!」
「甘い球に気をつけて、シャークが大口開けて待っている! 驚異の4番打者鮫島鱶(さめじまふか)!」
「その粘り強さ、まさに蛇! その粘りが毒のように効いてくる、技巧派二塁手蛇島悠木(へびしまゆうき)!」
「50m5秒台! そのスピードは誰にも止められない! 俊足外野手佐宗理助(さそうりすけ)!」
「全員シニアで優秀な成績を残した選手達じゃないですか! な、なんでこんな学校に!?」
「ま、ちょっとワケありでな。こうして集まったからには、甲子園目指そうとか思ってよ」
「それに、小学生の頃みんなで甲子園行こうって約束したしな。約束を果たすために、俺たちは集まったって訳さ」
「は、はえー……こんな学校に、こんなすごい人たちが集まってくれるなんて……」
「ところでお前、俺と同じ一年? 名前は?」
「あ、はい。僕の名前は犬井柴助って言います。一応、ポジションは三塁手です」
「へー、柴助ねえ。お前のことシバッチョって呼んで良い?」
「はい。僕のことは、どうぞ自由に……」
「んじゃま、俺たちはキャプテンに挨拶してくるわ。これからよろしくな!」
「はい……」
この、優秀な五人。この五人との出会いが、僕の人生を大きく変えることになるなんて、この時の僕は思いもしなかった……。