コメディ・ライト小説(新)

Re: 色褪せた僕は、 ( No.23 )
日時: 2022/08/21 16:41
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

5話 旧友との再会

11月下旬、ちょっとした長期休みになった。5日間の休みで、やることがないと言えばまぁ無い。
「明日から休みかぁ...。」
「やることないよねぇ...。地元戻る?」
実のところ、中学を卒業してから一回も地元に戻っていない。
「そうだなぁ、じゃあ明日行くか。父さんたちやおばさんとこにも顔出さなきゃ」

ーー
「そういうことなので、3日ぐらい居ないですけど」
「ん、行ってきなよ。私はサークルのみんなとキャンプ行ってくるよ」
「えーいいなー。のぞみん、やっぱキャンプ行こ!」
ダメです。
「残念だったね、定員オーバーなんだ」
「ちきしょぉぉぉおお!!」
あ ほ く さ 。
「ねぇ、のぞみん」
「ん?」
「私地元から帰ったら、課題やるんだ。」
「何その生きて帰ってもメリット無い死亡フラグ」

ーー当日
「鍵閉めた?」
「2000回確認した」
「模擬戦仕様やめろ」

Re: 色褪せた僕は、 ( No.24 )
日時: 2022/08/21 19:35
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

「うーん、久々の新幹線さいこー!」
「うるさいぞー」
俺たちは今、新幹線に乗っている。一時間あれば地元についてしまうので、実に素晴らしい乗り物だ。
「にしても紅葉終わっちゃったね。もっと見ていたかったな」
当然だろう。流石に11月下旬まで紅葉しているところなどほとんど無いだろう。
「俺は寝るよ。着いたら起こしてくれ」
「らじゃ!」
でもこいつまで寝たら意味無いんだよなぁ。心配だ。
そう思いつつも、深い眠りに落ちていった。

Re: 色褪せた僕は、 ( No.25 )
日時: 2022/08/21 21:34
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

「ーーきて、おきて」
「むにゃ...」
「起ーきろー!」
「ぐえぇぇぇぇええ!?」
声が聞こえると思って、意識が覚醒しかけてるところで夕姫にダイブされてしまった。
お陰で目は覚めたよこんちきしょー。
「お前、許すまじ」
「起きてと言った!」
「全く面倒見きれないよ」
俺たちは駅から出て、実家へと向かった。
いくらダウンを着ているからとは言え、寒いものは寒い。
歩くこと10分、ようやくというほど歩いてはないが、この寒さでは言いたくなる。
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
「お帰り、叶望。それに夕姫ちゃんも。さぁ入って」

Re: 色褪せた僕は、 ( No.26 )
日時: 2022/08/22 06:43
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

やはり、実家というだけあって落ち着く。
「お昼食べた?」
「新幹線の中で食べた」
「そう。お母さんたちもう食べたから」
実は、花山家にはもう一人居るのだが、見当たらない。
「にぃに、帰ってきたんだ。あ、ゆーちゃん!」
一つ下の義妹、晴夏はるかだ。
晴夏の両親は、生まれて間もないころに事故で亡くなったそうだ。訳あって、本人には義理の妹とは言っていない。今日までな。

Re: 色褪せた僕は、 ( No.27 )
日時: 2022/08/22 19:40
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

「じゃ、俺たち英治の墓参り行ってくるから。あ、そうだ。晴夏も行くか?」
「別にいい。にぃにの用事に付き合うなんて私はやだね」
本当にこの反抗期と来たら。俺にも反抗期なんて無かったぞ。年頃の女の子は難しいね。
行ってきます、とだけ言い、俺たちは近所の霊園へと向かった。
外は晴れているとは言え、流石に寒いのは変わらない。
「...よっ、英治久しぶりだな。お前を殺した犯人捕まったってよ」
話しかけるが、返事は帰ってこない。
「ほんと、何でだろうな...」
気づけばこの寒さの中、頬を伝う生暖かい液体が出てきた。
何で俺、泣いてるんだろうな。泣いたって何にもならないのに。
「...叶望」
後ろから、華奢な腕が回ってきた。その手は俺の頭を、優しく撫でる。
「叶望、死んだ人には悲しむんじゃなくて感謝するって、君が言ったんだよ?」
確かに、いつかの俺はそんなことを言った気がする。
「...そうだな。きっと、英治にも笑われちまうな、こんな情けない俺は。」
寒空の下、俺たちは旧友との再会を果たした。彼はどんな表情で、俺たちを見てくれたのだろう。
「...そんなの、分かるわけねーよな」

5話終了です。
ちょっと短めですが、いかがでしたでしょうか?
つい最近までお盆だったので、こういうのもありですよね。

Re: 色褪せた僕は、 ( No.28 )
日時: 2023/01/06 19:22
名前: たまはる (ID: 5R9KQYNH)

「ただいまー...ってあれ?母さんたちは?」
「買い物行った」
「そっか」
帰宅すると、両親は買い物に行ったようで、晴夏だけが室内に居た。
俺はテレビを点け、ニュースをぼんやりと見ていた。
「...ねぇ、にぃに」
「んー?」
珍しい。晴夏から口を開くなんて、今日は酸性雨でもふるんじゃないか。
「私って、ほんとはにぃにの妹じゃないの?」
「なんのこt」
「とぼけないで!私、聞いたの。ほんとは、私の両親が死んじゃってここに来たって」
いずれ、こんなことになるのは分かっていた。
俺は少しの沈黙のあと、全てを話した。
「...そうだ。お前の本名は柴崎しばさき晴夏、花山じゃない。」
「何で言わなかったの」
「お前を傷つけたくなかった。そうなればお前も、俺のようになると確信していた」
「でも私h」
「お前が!お前が実の妹のように大切だったんだ。だから、俺みたいな人間にお前の人生を左右させたくなかったから」
こんなこと、晴夏にも言いたくなかった。彼女が俺のせいで、壊れていくのが、目の前で人が苦しむのは見たくない。
「それでもいい!にぃにの称号が偽物でも、私がここの家族じゃなくてもいい!私は!」
晴夏の言葉を遮り、彼女の華奢な体を抱きしめた。
やっぱり、去年よりも成長している。身も心も、成長した。
彼女の頭を撫でた。夕姫がやってくれたように、優しく。
「よく、言えたな。お前は俺の自慢の"妹"だよ。だから、今ぐらいは出しちゃえよ。俺が受け止めてやる」
「...うっぐ...うぅ...」
俺がやらなきゃ。妹の全てを受け止めるのは、兄貴である俺の仕事なのだから。

Re: 色褪せた僕は、 ( No.29 )
日時: 2022/08/22 21:46
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

「あんたたち、そんな仲良かったっけ?」
「まぁねー」
言えるはずがない、さっきまで互いに抱きしめ合っていたとか言えるはずがない。
「あ、そうだ。父さんたち、ちょっと明後日の昼まで帰れなくなったんだ。叶望、頼んだぞ」
「うい。つーか今言うかよ」
「じょうがないだろ、さっき夕姫ちゃんのご両親に温泉旅館に誘われたんだからな」
いいなー。
俺も行きたかったが、まぁいいや。
「それと、後で夕姫ちゃんがくるわよ」
「ふーん。...は?」
「じゃ、行ってくるよ」
「ちょっ...」
全く、無責任な両親だ。
それからしばらくすると、インターホンすら押さずに窓から入ってきた。
「お邪魔しまーす!」
「お前バカだろ」
「天才だが?」
「頭が良いのは認めるが、自称するやつは天才ではない」

Re: 色褪せた僕は、 ( No.30 )
日時: 2022/08/23 00:11
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

時計を見ればすでに夕飯時、母さんが準備しているとも思えない。
仕方がない、俺が作るか。
「お腹減ったろ?夕飯作るから待ってろ」
「にぃに、作れんの?」
すると夕姫が目を輝かせた。
「作れるもなにも、のぞみんの料理は家庭科の授業で、先生を負かすほどの腕なんだよ!」
何か言ってるわ。
俺は冷蔵庫を確認した。中には、豚バラ、ナス、ネギが入っていた。
「マジか...いやでも奇跡的に唐辛子ペーストがある。行ける、まだ俺は戦える...!」
さて、俺が今から作るのは麻婆豚バラ茄子だ。
まずはフライパンに油をしき、熱する。温まったら豚バラとナス投下。火が通ったら、唐辛子ペーストを投下し、炒める。もちろん目分量だ。これでネギを散らせば完成だ。

Re: 色褪せた僕は、 ( No.31 )
日時: 2022/08/23 06:41
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

「できたぞー」
「おお!」
夕姫がめっちゃ目をキラキラさせてる。
「「「いただきまーす」」」
「あむっ、美味しい...。にぃに、これ美味しいよ!」
すると夕姫が自分のことのように言った。
「でしょ!?ほんと、これを毎日食べてるのが幸せだよ」
そんなことに幸せを感じていいのだろうか。でも、俺の手料理を美味しいと言ってくれるなら、嬉しい限りだ。
ものの10分で、結構な量の夕飯を平らげた。
「ふぅー、美味しかったー」
「気にいってもって良かったよ」

Re: 色褪せた僕は、 ( No.32 )
日時: 2022/08/23 20:56
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

それから洗い物をしていると、「お風呂行ってくるー」と聞こえた。
俺は「はーい」とだけ返事をした。
洗い物が終わり、俺は放置していた俺の部屋を見に行った。
意外にも、部屋は綺麗で埃が見当たらない。
「そりゃそっか、母さんがやってくれたんだよな」
不意に机に目をやると、1枚の写真が飾ってあった。そこには、俺と夕姫と晴夏に英治が写っていた。
「こんなの、まだあったのか。」
この写真の存在自体、ほぼ忘れかけていた。
感傷に浸っていると、ドアが開く音がした。
「お風呂開いたよー」
「ひゃい!?なんだ、夕姫か...」
「そんな驚かないでよ。...あれ、この写真...」
夕姫は写真を指差した。
「これ、晴夏の中学の入学式の写真」
「懐かしい...!」
夕姫は写真を見るなり、俺の顔を見た。
「のぞみん、ずっと童顔だよね。可愛い」
「お前こそ、顔どころか身長すら変わらないじゃないか」
「うるさいなー、のぞみんなんかずっと可愛いくせに!」

Re: 色褪せた僕は、 ( No.33 )
日時: 2022/08/23 22:11
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

夜。
あまり俺は夜は得意ではない。なぜなら、理由は単純。眠い!
「うぅ...寒ぃ...」
あいにく、俺の部屋は花山家のなかでは一番奥にあるため、バカみたいに寒い。
「にぃに、まだ起きてる?」
ビックリした。
ベッドに晴夏が入ってきた。
「どうした?」
「寒いから一緒にねようかと思って」
「夕姫でも良かったじゃないか」
すると、晴夏は渋りながら話した。
「だって、にぃにが...良かったんだもん」
「...そっか」
全く、晴夏も可愛いところあるじゃん。
晴夏はさらに体を近づけてきた。
「にぃに、あんまり温かくないね。手も冷たいし」
「お前は熱いぐらいだよ。」
「...でも、にぃにはいい匂いするね。花の匂いがする」
そんなものだろうか。男の匂いなんか、別に嗅いだっていいものではないと思うのだが。
「...私なんかゆーちゃんよりも胸はないし、素直になれないけど、にぃにはさ、私のこと好き?」
「...妹としてな」
「そっか。...にぃに」
「ん?」
ーーちゅっ。
頬に柔らかい感触が伝わる。甘い香りが思考をさらに蝕んでいく。
「...ぷはぁ、頬っぺただけど、ファーストキスだよ。」
「な、なななななな何を!?」
顔が熱くなっていくのが一瞬で分かった。
「おやすみ」

5話終了です。
僕なんかモテないし、変なマッチョの友達いるし、そいつイケメンだし。
なんなんですか!