コメディ・ライト小説(新)

Re: 始発線は終点をしらない ( No.32 )
日時: 2022/09/07 16:28
名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)

第32話「平和で、濃厚」

俺は千歳だ。
あの事件のあと、これといったことは起こらなくなった。

「千歳くん、一緒に帰ろ?」
「ああ、帰ろう」

それに、こんなに尽くしてくれる彼女だって居るのだから。平和に過ごせることのありがたみに気付くことができた。
今日は、湊たち二人は勉強会らしい。俺もかなりヤバいが、勉強よりも凪咲との時間を大切にしたいという、自分なりの考えだ。

「...そうだ千歳くん。今日、私の家に泊まっていかない?明日は休日だし」
「...は?」

何が起こったのか、理解が及ぶまで少しだけ時間がかかった。
とまる?とまるって、止まるなのか泊まるなのか。恐らく後者の泊まると認識した。

「良いのか?俺は今日、両親が出張でいないが」
「おお、奇遇だね。実は家も出張で居ないんだ」
「そ、そうか。じゃあ、お言葉に甘えて」

10分後、着替えなどを持って凪咲の家に突撃した。
インターホンを押すと、10秒と経たずにドアが開いた。

「千歳くん!さ、入って」
「お、おお。お邪魔します...」

あまりジロジロ見るのも良くないと思うが、かなり整理されていて綺麗な家だと思った。
凪咲の部屋に入れられ、流されるがまま床に座った。
凪咲の匂いが充満していて、正直かなりキツい。

「疲れたでしょ?膝枕あいてあげるよ」
「確かに疲れているが...」
「じゃあ決まりね。さ、どうぞ」

太ももを叩いて、頭を置くように誘導される。
頭を乗せると、ほどよい柔らかさと体温が伝わる。高さもちょうどよく、心地が良かった。

「どう?千歳くん」
「どうって...良いけど」
「もっと他にないの?どういう感じとかさ」
「ええ...柔らかい」
「お、おう」

自分で聞いておいて何だよ。
凪咲は、一呼吸置いてから俺の頭を撫で始める。

「千歳くん、髪質いいね。もふもふしてる」
「そうか?気にしたことは無かったが」
「さわり心地最高だよ!」

そんなことをしている間にも、睡魔に襲われウトウトしていた。

「千歳くん、眠いの?」
「ああ...」
「じゃあ寝なよ。私は大丈夫だから」
「そうか...」

俺はゆっくりと目を閉じた。

「寝ちゃった、よね?」
「...」
「私、千歳くんには感謝してるの。千歳くんが守ってくれたり、優しくしてくれたり、大切にしてくれたり。だから、恩返しがしたい。...こんなこと、寝てるときしかできないけど」

本当は起きているが。
俺と凪咲は、静かに接吻を交わした。