コメディ・ライト小説(新)

Re: 始発線は終点をしらない ( No.4 )
日時: 2022/08/24 20:12
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

第二話「再会と出会いの感傷」


「千歳、よかったら一緒に帰らないか?」
「そうだな。久しぶりだしな、帰ろう」
湊の提案に、千歳は嫌な顔一つせず呑み込んだ。

玄関は下校する生徒たちでにぎわっていた。
そのなかに二人、記憶に新しい組み合わせが居た。
「おーい!星奈、凪咲!」
「あっ、湊くんに千歳くん!」
一番最初に反応したのは、凪咲だった。

「良かったら、一緒に帰らないか?」
「良いですね。喜んで!」
「千歳も良いだろ?」
「ああ...」
心なしか、千歳の顔が一瞬だけ面倒そうな表情になった気がした。

「へぇ、みんな結構家近いんだね」
「そうだね、みんなあそこの住宅街に住んでるからね」
夕暮れどきの帰路で、四人は会話に花を咲かせていた。
「にしても、千歳とこうやってまた一緒に帰れるなんてな」
「ああ...。俺も湊とこうやって帰れるなんてな思っても見なかったよ」

二人で感傷に浸っていると、凪咲が不満そうな声でこちらに話しかけてきた。
「ちょっと、私たちを抜きでなーに感傷に浸ってんの?」
「ああ、悪い悪い。あまりに久しぶりすぎてぇぇぇえ!?」

刹那、とんでもなく鈍い音が閑静な住宅街に響いた。
「いってぇぇぇ...」
「全く...湊、しっかりしてくれ...」
「大丈夫ですか...?って、鼻血出てますよ!」
「えっ!?...本当だ...」
「そんなこと言ってないで、ほらティッシュ!」
湊はありがとうとだけ言い、凪咲からティッシュを受け取った。

そんなことを言っているうちに、家に着いてしまった。
「じゃあ、俺たちはこれで」
「うん!バイバーイ!」
「さようなら」
凪咲と星奈の性格は、やはり正反対と言うべきだろうか。
落ち着きと品のある星奈に対して、凪咲は子供らしいというか、とっつきやすいとでも言うのだろうか。

「ただいまー」
湊の声に返事はない。両親は仕事で夜の8時にならないと帰ってこない。
湊は、ベッドに身を投げた。
「...今日は友達がたくさんできたな」

下校で親睦が深められた。
これから四人の恋の始発線が出発するなど、誰も知るよしもない。